初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
338 / 454
第五部

第1章〜広報部のある企画について〜⑥

しおりを挟む
「今回の企画では、三~四か所のスポットを巡りたいと考えているんだけど、他に候補地は無いかな?」

 大型ディスプレイを黒板モードに切り替えて、ホラースポットの候補地を書き加えている壮馬が、続けて、メンバーに問いかける。
 文芸部のメンバーは、学校で支給されているタブレット端末にログインして、何かを調査しているようだ。

「いま、自分たちの地元のホラースポットについて、検索してみたんだけど……この辺りって、結構そういうが多いんだね」

 苦笑しながら語るのは、その文芸部の部員の石沢はるか。彼女は、そう言いながら、無線通信で大型ディスプレイにタブレットの画面を投影させる。

 放送室のモニターには、自分たちが住む県のホラースポットが表示された。
 ご丁寧に、Googleマップの地図上に、心霊スポットの場所にピンが立てられているのだが……。

 県内のホラースポットの半数以上が、オレたちの住む市内に集中しているのだ。
 そして、さっきからオレが気にしていたのも、まさに、このことだった。

 冒頭に自分が話した『日之池公園のテッちゃん』と、続けて桃華が語った『満地谷墓地《まんちだにぼち》の火垂ほたるの墓の少女像』は偶然が重なっただけかもしれないが……。

 モニターのマップ上にピンが立てられた市内の場所を列挙すると――――――。

 ・五ガ池の二川ピクニックセンター
 ・兜山かぶとやまの兜山橋のバス停
 ・幽霊マンションのパル一番街
 ・墓地が整備されたあとに建設された市内中央の地蔵公園
 ・空襲の犠牲者が流れ着いた香炉園こうろえん
 ・交通事故が頻発する兜山かぶとやま太師道の地蔵坂
 ・駐車場で怪現象が起こる上呪寺かんのうじ
 ・石工職人に不幸が相次いだ越来岩こしきいわ神社の「甑岩こしきいわ
 ・県道82号線のカーブに立ちふさがる祟りを呼ぶ「夫婦めおと岩」
 ・の伝説が残る柔琳寺じゅうりんじ

 ここに挙げた場所以外でも、隣の市との市境には、『武甲むこ川の三途の踏切』『お化け屋敷・印南いんなみさん家』『六匣ろっこう山のヨネスコ会館』などが点在している。

 自分たちが住む街の人口規模を考えれば、小学生の子どもを震え上がらせるスポットが、一つか二つあれば十分だ。
 しかし、オレや桃華が子どもの頃から聞き慣れているウワサ話し以外にも、市内にこれだけの心霊スポットが密集しているのは、ちょっと異様ではないかと感じる。

 山の手から海辺まで、市の面積は比較的広いとは言え、人口五十万人程度の地域に、こんなにも多くのホラースポットが存在しているということは、あまり例が無いのではないかと思う。

 その証拠に、国の政令指定都市でもある、我が県の県庁所在地は、市域の面積も人口もオレたちが住む街の倍以上あるにもかかわらず、心霊スポットとして挙げられている場所は、これほど多くない。

「へ、へぇ~。市内の心霊スポットって、こんなに多いんだ……」

 オレと同じく、その事実に、不気味なモノを感じ取ったのだろうか、今度は、嬌声をあげてオレに抱きついてくることもなく、シロが少し引きつったような表情でつぶやいた。

「ちょっと聞いただけでも、竜司や佐倉さんから勢いよく怪談が飛び出すから期待していたけど……これは、たしかに想定以上の結果だね」

 モニターに目を向けながら、壮馬も苦笑しつつ語る。
 そんな風に、地元民のオレたちや引っ越してきて数ヶ月のシロが、乾いた笑いを浮かべる中、ポツリと感想をつぶやく生徒がいた。

「わたすの田舎には、ウマと人の関係にまつわる言い伝えが多かったんですが……この辺りには、っていう妖怪がいるんだすな」

 その言葉に、またも、文芸部の部長である天竹が反応する。

「宮野さんの地元は、東北地方でしたね? あちらには、柳田國男の『遠野物語』に描かれているように、ウマと人にまつわるエピソードが多いですよね」

 文芸部の代表者の言葉に、宮野雪乃は、嬉しそうに「そうだす!」と、うなずいた。
 彼女の返事を笑顔で受けながら、天竹葵は、さらに解説を続ける。

の伝承は、都市伝説だけでなく、ホラー小説としても有名ですね。小松左京が『くだんのはは』という有名なホラー短編を書いています。もっとも、は西洋のファンタジーに出てくるミノタウロスのような牛面の姿である一方、日本に昔から伝わる『くだん』という妖怪は、人の顔を持った牛の姿でいわゆる人面牛のような容貌のようなんですが……」

 のウワサ話しは、昔から良く耳にしていた。そして、『くだん』と言えば、牛の姿をした妖怪だということも聞いたことがある。彼女の話を興味深く感じたオレは、たずねた。

「オレも、のウワサ話しは良く聞くんだけど……は、別のモノなのか?」

「正確に言うと、別物と考えるべきでしょうね。ただ、は、昔から地域に起きる災厄や吉兆を偽りなく予言した後すぐに亡くなり、は、戦災や天災が起きたときに目撃談が発生するという、少しだけ印象イメージが重なる言い伝えも残っています」

 そんな文化系女子の返答に、オレ以上に興味を示すメンバーがいた。
 
「そうなんだ! って、たしか、三十年前の大震災のときにも目撃談があるんだよね? 今回の企画は、なにか、わかりやすいアイコンになるキャラクターが欲しいと思ってたんだけど……は、うってつけの存在かも知れない!」

 そう言い切った壮馬の目は、絶好の取材対象を見つけたときのように、輝いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

処理中です...