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第五部
第4章〜都市に伝わるあるウワサについて〜⑥
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その日の朝が明けると、すぐに上級生に連絡を取ったオレは、
「わかったわ。私に出来ることなら、協力させてもらうわ」
と、こちらが依頼したことについて承諾を彼女から取り付けて、『夏の心霊スポット・ツアー』の企画会議に参加した。
時刻は、午前11時――――――。
今回は、近況報告とともに伝えなければいけない重要な提案があるため、広報部のメンバーに加えて、ほぼ皆勤賞で企画に付き合ってくれている緑川とシロ、さらに、協力者でもある文芸部の部員たちにも集まってもらったので、夏休み中である我が校の小会議室を借りることにした。
夏休み中にもかかわらず集まってくれた部外者の面々にあらためてお礼の言葉を述べつつ、オレは、これまでの企画の経緯と昨夜に起きた出来事などを簡潔に説明する。
二日に渡って立て続けに発生した、牛女の目撃談は、前夜の出来事を初めて聞く宮野や文芸部の面々には、それなりにショックを与えたようだ。
「あの……このまま、企画を続けても大丈夫だか……?」
恐る恐ると言った感じで、広報部の一年生部員である宮野雪乃が発言する。
彼女の言葉に、同調するように、文芸部のメンバーも心配気な表情でうなずいた。
ここまでは、オレの狙いどおりの展開だ。
こうして、世論を形成しておけば、このあと語るべきことを話しやすくなる。
「そうだな、宮野。オレも、その点が気になっているんだ」
後輩部員に同意しながら、オレは慎重に自分の考えを伝えることにした。
「ライブ配信の最終日に続いて、昨日も、オレたちは不可解な目に遭っている。牛女と思われる存在に、二度も遭遇したオレとしては、このまま、いまの企画を続けることに不安を感じている。目の前にあらわれたあの牛の顔をした存在が、本当にモンスターの類かどうかはわからんが……アレは、『これ以上、近寄るな』という、オレたちの活動に対する警告なんじゃないかと思うんだ。だから――――――」
なるべく、ゆっくりとした口調で注意深く発言すると、オレが自分の想いを語り終わらないうちに、親友が声を上げた。
「だから……いまさら、企画をやめるって言うのか!? なんで、いまになって、そんなこと言うんだよ! ファウンド・フッテージの映像も、踏み切りから墓地の配信分まで、もう編集済みなのに……! 夫婦岩の動画だって……!!」
予想どおり、壮馬は、オレの言葉に反論してくる。
「それに、今回の企画は、白草さんにも協力してもらっているんだ! 大々的な告知もしているし、もう、あとには引けないよ! そうだよね、白草さん?」
自分たちの事情に加えて、コラボ相手のシロにも同調を求める壮馬に対し、当の本人である同世代のカリスマ女子は、やや困った表情で、
「う~ん、告知した内容については、もう配信済みだし、わたしとしては、もう視聴者のみんなに対する責任は、果たしているかな~? それに、わたしとしても、みんなが危険な目に遭うのは避けた方が良いと思うな」
と答えた。
特に打ち合わせをしていなかったが、これまでの反応から、シロも積極的に企画を継続しようとは考えていないだろう、と推察していたが、思ったとおりだったようだ。
「でも……今日は、緑川が発見したファウンド・フッテージの映像を配信する日で……」
白草四葉という共同企画者からも賛同を得られなかったことで、気持ちが揺らいだのか、語気が弱くなりながらも、壮馬は、なんとか反論しようとする。
「あの牛女の映像さえあれば、10万PVどころか、その何倍もの再生数が見込めるのに……」
そう言って、うなだれながらも、企画の継続をあきらめようとしない親友に対して、オレは、最後の切り札を使うことにした。
すぐに、スマホからメッセージアプリで、鳳華先輩に連絡を取る。
オレが送信したメッセージには、即座に返答があったので、
「壮馬、これから、ここに部長が来てくれるそうだ」
と、親友に伝える。
「えっ、どうして、鳳華部長が!?」
動揺を見せる壮馬に、今朝、ここ数日の出来事を部長に報告したことを説明した。
今日も、図書室に来ていたのだろうか、数分と経たずに会議室にあらわれた上級生は、
「黄瀬くん、話しは聞かせてもらっているわ」
と、切り出したあと、
「今回の企画については、私もこれ以上の継続は推奨できないわね。特に前夜の貴方と黒田くん、緑川くんの行動は、未成年の深夜徘徊にあたるわ。私達の県の『青少年愛護条例』では、深夜(午後11時~午前5時)外出の制限という項目があるし、その行動を取った以上、活動に制限が掛かることは理解してちょうだい」
と、県の条例を持ち出して、企画の継続に難色を示す見解を述べた。
桃華の見立てどおり、上級生は、ぐうの音も出ない正論で壮馬を説き伏せにかかった。
「残念だけど、今回は、ここまでにしよう。これ以上、周りの人たちに心配や迷惑を掛ける訳にはいかない」
オレは、友人を説得するべく、その肩に手を置く。
すると、壮馬は、
「そんな……せっかく、ここまで準備してきたのに……」
と、つぶやいたかと思うと、手足を痙攣させ、膝から崩れるようにその場に倒れ込んでしまった。
「わかったわ。私に出来ることなら、協力させてもらうわ」
と、こちらが依頼したことについて承諾を彼女から取り付けて、『夏の心霊スポット・ツアー』の企画会議に参加した。
時刻は、午前11時――――――。
今回は、近況報告とともに伝えなければいけない重要な提案があるため、広報部のメンバーに加えて、ほぼ皆勤賞で企画に付き合ってくれている緑川とシロ、さらに、協力者でもある文芸部の部員たちにも集まってもらったので、夏休み中である我が校の小会議室を借りることにした。
夏休み中にもかかわらず集まってくれた部外者の面々にあらためてお礼の言葉を述べつつ、オレは、これまでの企画の経緯と昨夜に起きた出来事などを簡潔に説明する。
二日に渡って立て続けに発生した、牛女の目撃談は、前夜の出来事を初めて聞く宮野や文芸部の面々には、それなりにショックを与えたようだ。
「あの……このまま、企画を続けても大丈夫だか……?」
恐る恐ると言った感じで、広報部の一年生部員である宮野雪乃が発言する。
彼女の言葉に、同調するように、文芸部のメンバーも心配気な表情でうなずいた。
ここまでは、オレの狙いどおりの展開だ。
こうして、世論を形成しておけば、このあと語るべきことを話しやすくなる。
「そうだな、宮野。オレも、その点が気になっているんだ」
後輩部員に同意しながら、オレは慎重に自分の考えを伝えることにした。
「ライブ配信の最終日に続いて、昨日も、オレたちは不可解な目に遭っている。牛女と思われる存在に、二度も遭遇したオレとしては、このまま、いまの企画を続けることに不安を感じている。目の前にあらわれたあの牛の顔をした存在が、本当にモンスターの類かどうかはわからんが……アレは、『これ以上、近寄るな』という、オレたちの活動に対する警告なんじゃないかと思うんだ。だから――――――」
なるべく、ゆっくりとした口調で注意深く発言すると、オレが自分の想いを語り終わらないうちに、親友が声を上げた。
「だから……いまさら、企画をやめるって言うのか!? なんで、いまになって、そんなこと言うんだよ! ファウンド・フッテージの映像も、踏み切りから墓地の配信分まで、もう編集済みなのに……! 夫婦岩の動画だって……!!」
予想どおり、壮馬は、オレの言葉に反論してくる。
「それに、今回の企画は、白草さんにも協力してもらっているんだ! 大々的な告知もしているし、もう、あとには引けないよ! そうだよね、白草さん?」
自分たちの事情に加えて、コラボ相手のシロにも同調を求める壮馬に対し、当の本人である同世代のカリスマ女子は、やや困った表情で、
「う~ん、告知した内容については、もう配信済みだし、わたしとしては、もう視聴者のみんなに対する責任は、果たしているかな~? それに、わたしとしても、みんなが危険な目に遭うのは避けた方が良いと思うな」
と答えた。
特に打ち合わせをしていなかったが、これまでの反応から、シロも積極的に企画を継続しようとは考えていないだろう、と推察していたが、思ったとおりだったようだ。
「でも……今日は、緑川が発見したファウンド・フッテージの映像を配信する日で……」
白草四葉という共同企画者からも賛同を得られなかったことで、気持ちが揺らいだのか、語気が弱くなりながらも、壮馬は、なんとか反論しようとする。
「あの牛女の映像さえあれば、10万PVどころか、その何倍もの再生数が見込めるのに……」
そう言って、うなだれながらも、企画の継続をあきらめようとしない親友に対して、オレは、最後の切り札を使うことにした。
すぐに、スマホからメッセージアプリで、鳳華先輩に連絡を取る。
オレが送信したメッセージには、即座に返答があったので、
「壮馬、これから、ここに部長が来てくれるそうだ」
と、親友に伝える。
「えっ、どうして、鳳華部長が!?」
動揺を見せる壮馬に、今朝、ここ数日の出来事を部長に報告したことを説明した。
今日も、図書室に来ていたのだろうか、数分と経たずに会議室にあらわれた上級生は、
「黄瀬くん、話しは聞かせてもらっているわ」
と、切り出したあと、
「今回の企画については、私もこれ以上の継続は推奨できないわね。特に前夜の貴方と黒田くん、緑川くんの行動は、未成年の深夜徘徊にあたるわ。私達の県の『青少年愛護条例』では、深夜(午後11時~午前5時)外出の制限という項目があるし、その行動を取った以上、活動に制限が掛かることは理解してちょうだい」
と、県の条例を持ち出して、企画の継続に難色を示す見解を述べた。
桃華の見立てどおり、上級生は、ぐうの音も出ない正論で壮馬を説き伏せにかかった。
「残念だけど、今回は、ここまでにしよう。これ以上、周りの人たちに心配や迷惑を掛ける訳にはいかない」
オレは、友人を説得するべく、その肩に手を置く。
すると、壮馬は、
「そんな……せっかく、ここまで準備してきたのに……」
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