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第1幕・Aim(エイム)の章〜⑪〜
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4月30日(日)
ゴールデン・ウィークの前半(といっても、カレンダー通りの勤務である僕にとっては普段の土日と変わらないのだが)は、上場企業の社員らしく、十日間の大型連休があるのをいいことに、
「新装の京都競馬場で、春の天皇賞を観戦するぞ!」
と意気込み、約一年ぶりに関西に戻ってきたヒサシと寝食をともにすることになった。
金曜日の夜に、新幹線でコチラに戻ってきたヒサシは、その夜から、僕のアパートに泊まり込み、土曜日は、大阪日本橋オタロードでの爆買い(!)、日曜日は、京都競馬場での天皇賞観戦と、ゴールデン・ウィーク序盤から、これ以上ないと言っていいくらい長期休暇を満喫していた。
休暇の初日から、湯水の如く軍資金を投入し、大量消費にいそしむ友人に、
「さすが、大手企業の正社員は、お金の使い方が豪快だな」
と、あきれながら言うと、
「な~に、明日の春天で、今日買い物した分は取り戻すから、これくらい余裕だ」
豪快に笑いながら、そう言っていたのだが……。
翌日の午後四時前、彼は、
「なぜ、おれは、ルメールと和田を信じずに、横山和生に賭けちまったんだ……」
と、この世の終わりのような表情で絶望に打ちひしがれていた。
ヒサシの奢りによる焼肉パーティが、夢と消えたあと、僕のアパートで、慎ましやかなディナー(コンビニ弁当とも言う)でサンテレビのヤクルト対阪神戦を観戦し、スワローズの新人投手・吉村に沈黙させられた打線にため息をつき、休日が終わる。
翌日の月曜日、僕の出勤時間である朝の8時過ぎに、一緒にアパートを出たヒサシは、
「コタロー、今回は、世話になった! 神宮球場とか東京ドームに来るときは、いつでもオレのマンションに泊まりに来てくれて良いからな!」
と、爆買いのあとと同じような屈託のない笑顔で告げて、東京の自宅に戻って行く。
社会人として働き始めてから、一日中、友人と過ごす機会はなかったので、久々に学生時代に戻ったような気持ちにさせてくれたヒサシに感謝しながら、僕は彼を見送った。
【本日の試合結果】
ヤクルト 対 阪神 6回戦 ヤクルト 4ー2 阪神
神宮球場での3タテを狙った試合は、打線が振るわず、スワローズの連敗を止める結果に。
開幕からの一ヶ月は、貯金3というまずまずの成績だった。
◎4月30日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:13勝10敗 1引き分け 貯金3
順位:2位(首位と3ゲーム差)
※
5月3日(水)
奈緒美さんとの二度目の会合が叶わなかったため、ゴールデン・ウィークの後半は、一人で過ごすことになった。
この日は、以前のオンライン通話でユタカが太鼓判を面白い、と太鼓判を押していた映画『サーチ2』を観に行くことにした。
自宅のある西宮市から、電車で片道30分以上かけて、高槻市の映画館まで遠征した甲斐があり、ユタカの言っていたとおり、ストーリー全編がスマホやPCの画面上で展開する、情報学部を卒業した僕たちの好みにピッタリの作品で、続編の今作も満足の行くデキだった。
そうして、気分良く映画館を出たんだけど――――――。
午後2時開始の甲子園でのドラゴンズ戦をテレビ観戦するため、映画館周辺で昼食も食べずに自宅に戻ってきたにも関わらず、試合は、先発の西勇輝が2回に相手打線につかまり、一挙に6点を奪われる苦しい展開となっていた。
投手力に定評のあるドラゴンズが相手なので、非常に厳しい状況だ。
しかし、
(こんなことなら、高槻でランチグルメでも堪能してくれば良かった……)
と、後悔し始めると――――――。
2回に近本、5回に佐藤輝明、6回に大山のタイムリーが飛び出し、序盤で奪われた6点差を追いついてしまった。
そして、その試合展開から、
(ヨシッ! このまま流れに乗って、逆転勝ちや!)
と、勝利を期待したのだが――――――。
同点のまま進んだ9回表に、ドラゴンズ木下にタイムリー・ヒットを打たれ、再びリードを奪われてしまう。
9回裏には、満を持して、セ・リーグNo.1の絶対的守護神、今シーズンいまだ無失点のライデル・マルティネスが登板してくる。
その絶望的な状況を前に、
(せっかく、同点に追いついたのに、ナニをしてるねん……)
と、勝利をあきらめてしまったのだが――――――。
この回、先頭の大山が右中間への二塁打を放つと、続く佐藤輝明の強い当たりのゴロをドラゴンズの二塁手・福永が後逸し、あっという間に同点に追いついてしまった。
さらに、代打・原口文仁のレフト前ヒットをドラゴンズの左翼手・大島がファンブルして無死一・三塁となり、次の打者の梅野は、四球を選んで無死満塁!
そして、恐怖の8番打者として活躍が目立ち始めた木浪のライト前ヒットでサヨナラ勝ち!
あまりにも劇的な展開に、僕は祖父と初めて甲子園で観戦した15年前のカープ戦を思い出していた。
それにしても――――――。
序盤の大量失点でドン底に落とされ……。
中盤から怒涛の追い上げで盛り上げ……。
終盤に、再び絶望の淵に追い詰めて……。
最後に、歓喜の逆転勝利を勝ち取る……。
まるで、人間の感情の機微を知り尽くした上で、ジェットコースターに乗ったときの乱高下を体験させるようにストーリーを練り上げる、ハリウッド映画を思わせる試合展開だ。
よく、「野球は筋書きのないドラマだ」などと言われるが、ゴールデン・ウィークのエンターテイメント興行としても、デキ過ぎではないだろうか?
4時間16分(!)という試合時間を考慮すれば、決して、コスト・パフォーマンスも、タイム・パフォーマンスも良いとは言えないけれど、ベースボールを愛したアメリカ大統領が記しているように、
「一番おもしろい野球のスコアは、8対7だ」
という言葉を実感できる、そんな濃密な試合だった(この展開で勝てなかったドラゴンズのファンからすると、たまったモノじゃないだろうけど……)。
【本日の試合結果】
阪神 対 中日 5回戦 阪神 8xー7 中日
序盤で奪われた6点差を追いついての勝利!
しかも、9回は、1点を勝ち越されたあと、ドラゴンズの絶対的守護神ライデル・マルティネスから2点を奪っての逆転サヨナラ勝ち。
◎5月3日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:14勝11敗 1引き分け 貯金3
順位:2位(首位と3ゲーム差)
ゴールデン・ウィークの前半(といっても、カレンダー通りの勤務である僕にとっては普段の土日と変わらないのだが)は、上場企業の社員らしく、十日間の大型連休があるのをいいことに、
「新装の京都競馬場で、春の天皇賞を観戦するぞ!」
と意気込み、約一年ぶりに関西に戻ってきたヒサシと寝食をともにすることになった。
金曜日の夜に、新幹線でコチラに戻ってきたヒサシは、その夜から、僕のアパートに泊まり込み、土曜日は、大阪日本橋オタロードでの爆買い(!)、日曜日は、京都競馬場での天皇賞観戦と、ゴールデン・ウィーク序盤から、これ以上ないと言っていいくらい長期休暇を満喫していた。
休暇の初日から、湯水の如く軍資金を投入し、大量消費にいそしむ友人に、
「さすが、大手企業の正社員は、お金の使い方が豪快だな」
と、あきれながら言うと、
「な~に、明日の春天で、今日買い物した分は取り戻すから、これくらい余裕だ」
豪快に笑いながら、そう言っていたのだが……。
翌日の午後四時前、彼は、
「なぜ、おれは、ルメールと和田を信じずに、横山和生に賭けちまったんだ……」
と、この世の終わりのような表情で絶望に打ちひしがれていた。
ヒサシの奢りによる焼肉パーティが、夢と消えたあと、僕のアパートで、慎ましやかなディナー(コンビニ弁当とも言う)でサンテレビのヤクルト対阪神戦を観戦し、スワローズの新人投手・吉村に沈黙させられた打線にため息をつき、休日が終わる。
翌日の月曜日、僕の出勤時間である朝の8時過ぎに、一緒にアパートを出たヒサシは、
「コタロー、今回は、世話になった! 神宮球場とか東京ドームに来るときは、いつでもオレのマンションに泊まりに来てくれて良いからな!」
と、爆買いのあとと同じような屈託のない笑顔で告げて、東京の自宅に戻って行く。
社会人として働き始めてから、一日中、友人と過ごす機会はなかったので、久々に学生時代に戻ったような気持ちにさせてくれたヒサシに感謝しながら、僕は彼を見送った。
【本日の試合結果】
ヤクルト 対 阪神 6回戦 ヤクルト 4ー2 阪神
神宮球場での3タテを狙った試合は、打線が振るわず、スワローズの連敗を止める結果に。
開幕からの一ヶ月は、貯金3というまずまずの成績だった。
◎4月30日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:13勝10敗 1引き分け 貯金3
順位:2位(首位と3ゲーム差)
※
5月3日(水)
奈緒美さんとの二度目の会合が叶わなかったため、ゴールデン・ウィークの後半は、一人で過ごすことになった。
この日は、以前のオンライン通話でユタカが太鼓判を面白い、と太鼓判を押していた映画『サーチ2』を観に行くことにした。
自宅のある西宮市から、電車で片道30分以上かけて、高槻市の映画館まで遠征した甲斐があり、ユタカの言っていたとおり、ストーリー全編がスマホやPCの画面上で展開する、情報学部を卒業した僕たちの好みにピッタリの作品で、続編の今作も満足の行くデキだった。
そうして、気分良く映画館を出たんだけど――――――。
午後2時開始の甲子園でのドラゴンズ戦をテレビ観戦するため、映画館周辺で昼食も食べずに自宅に戻ってきたにも関わらず、試合は、先発の西勇輝が2回に相手打線につかまり、一挙に6点を奪われる苦しい展開となっていた。
投手力に定評のあるドラゴンズが相手なので、非常に厳しい状況だ。
しかし、
(こんなことなら、高槻でランチグルメでも堪能してくれば良かった……)
と、後悔し始めると――――――。
2回に近本、5回に佐藤輝明、6回に大山のタイムリーが飛び出し、序盤で奪われた6点差を追いついてしまった。
そして、その試合展開から、
(ヨシッ! このまま流れに乗って、逆転勝ちや!)
と、勝利を期待したのだが――――――。
同点のまま進んだ9回表に、ドラゴンズ木下にタイムリー・ヒットを打たれ、再びリードを奪われてしまう。
9回裏には、満を持して、セ・リーグNo.1の絶対的守護神、今シーズンいまだ無失点のライデル・マルティネスが登板してくる。
その絶望的な状況を前に、
(せっかく、同点に追いついたのに、ナニをしてるねん……)
と、勝利をあきらめてしまったのだが――――――。
この回、先頭の大山が右中間への二塁打を放つと、続く佐藤輝明の強い当たりのゴロをドラゴンズの二塁手・福永が後逸し、あっという間に同点に追いついてしまった。
さらに、代打・原口文仁のレフト前ヒットをドラゴンズの左翼手・大島がファンブルして無死一・三塁となり、次の打者の梅野は、四球を選んで無死満塁!
そして、恐怖の8番打者として活躍が目立ち始めた木浪のライト前ヒットでサヨナラ勝ち!
あまりにも劇的な展開に、僕は祖父と初めて甲子園で観戦した15年前のカープ戦を思い出していた。
それにしても――――――。
序盤の大量失点でドン底に落とされ……。
中盤から怒涛の追い上げで盛り上げ……。
終盤に、再び絶望の淵に追い詰めて……。
最後に、歓喜の逆転勝利を勝ち取る……。
まるで、人間の感情の機微を知り尽くした上で、ジェットコースターに乗ったときの乱高下を体験させるようにストーリーを練り上げる、ハリウッド映画を思わせる試合展開だ。
よく、「野球は筋書きのないドラマだ」などと言われるが、ゴールデン・ウィークのエンターテイメント興行としても、デキ過ぎではないだろうか?
4時間16分(!)という試合時間を考慮すれば、決して、コスト・パフォーマンスも、タイム・パフォーマンスも良いとは言えないけれど、ベースボールを愛したアメリカ大統領が記しているように、
「一番おもしろい野球のスコアは、8対7だ」
という言葉を実感できる、そんな濃密な試合だった(この展開で勝てなかったドラゴンズのファンからすると、たまったモノじゃないだろうけど……)。
【本日の試合結果】
阪神 対 中日 5回戦 阪神 8xー7 中日
序盤で奪われた6点差を追いついての勝利!
しかも、9回は、1点を勝ち越されたあと、ドラゴンズの絶対的守護神ライデル・マルティネスから2点を奪っての逆転サヨナラ勝ち。
◎5月3日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:14勝11敗 1引き分け 貯金3
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