僕のペナントライフ

遊馬友仁

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第2幕・Respect(リスペクト)の章〜②〜

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 5月13日(土)

 ハンガーに掛けた法被はっぴとレプリカ・ユニフォーム、壁紙に両面テープで貼り付けたトラのマークのフラッグの横には、HとTのアルファベットを組み合わせたロゴが入ったメガホンとカンフーバットを吊り下げている。
 他にも、マグカップやハンドタオルなど様々なグッズに囲まれたワンルームの一室は、先月末、泊まりに来た友人のヒサシが室内を見渡し、

「オレの部屋も他人のことを言えた義理じゃないが……コタロー、実家にいた時より、さらにヒドくなってないか?」

と、苦笑いを浮かべる程度には、黄色と黒の二色にカスタマイズされている。

 オタク系グッズに囲まれた部屋で生活をしているというヒサシだから、この程度の反応で済んだけど、(と言っても、もちろん前のシーズンまで阪神に在籍していた外国人選手とは関係ない)なライフスタイルを好むユタカなら、僕の部屋に寝泊まりするのを拒否したであろうことは間違いない(そう考えると、ユタカは、よくこれまで、僕やヒサシに付き合ってくれているな、と思う)。
 
 そんな有様ありさまの自室で、僕は、翌日の奈緒美なおみさんとのについて、頭を悩ませていた。

 二日前、同意を得られる望みは薄いと感じながらも、送信したメッセージに、
 
 ==============

 お誘いありがとう。

 GWが終わって余裕があるので
 中野くんの行きたい所があれば
 ご一緒させてください。

 ==============

という返信をもらってガッツポーズしたあと、すぐに、球場近くのショッピングモールでのランチと午後二時開始のベイスターズ戦の観戦を提案したまでは、良かったのだが……。

 もともと、日曜日の甲子園での試合観戦は、母親と出掛ける予定だったので、、現役選手のレプリカ・ユニフォームを着て行こう、と考えていて、

(今回は、大山にするか? サトテルにするか? それが問題だ……)

そんな風に頭を悩ませていた。

 しかし、当日のランチをショッピングモールのららぽーと甲子園で食べようと彼女に提案したところ、

 ==============

 そうですね!

 ららぽーとで行ってみたいお店
 があるんです!

 ==============

という返信メッセージとともに、お店のホームページのリンクが届いた。
 リンクをタップしてページを表示させると、彼女のリクエストしたお店は、関東を中心に店舗を展開しているパンケーキの有名店だった(しかも、西日本では、このららぽーとの店舗が唯一の出店らしい)。

 ホームページには、店舗の内装の写真も掲載されている。
 白を基調とした洒落たインテリアの店内の雰囲気からすると、どう考えても、タテじま法被はっぴはモチロンのこと、レプリカのユニフォーム姿で入店するのは避けるべきだろう。

「明日は、どんな服装で行ったらエエんや……?」
 
 近所のスーパーで買ってきた焼き魚弁当を食べながら、頭をひねっていると、デイ・ゲームのテレビ中継が始まった。
 甲子園球場の上空は、いつものような青空ではなく、どんよりとした雲に覆われている。
 予報によると、この土曜日だけなく、翌日の日曜日も曇りがちで、天気は良くないようだ。

(先発は大竹か……今日も安定してるな~)

 などと、先発投手の調子を見ながらも、僕は、内野席の客席に座る観客の服装に、ヒントになることはないか、と客席にも注目する。

 テレビカメラ越しに客席を観察していると、ユニフォームや法被を着ていないファンは、薄手のテーラードジャケットのような上着を羽織っていることが多いのに気付いた。
 曇りがちの天候になった場合、日中は蒸し暑さを感じさせる季節にはなっているが、朝晩は、まだヒンヤリとした涼しさを感じることもある。
 
 そんなことから、僕は明日のコーデを、アウターは、七分袖のテーラードジャケット、インナーのシャツは、背中に「SATO 8」の文字があしらわれた背番号Tシャツにすることに決めた。
 
 お昼過ぎまで頭を悩ませていた問題に決着が付き、スッキリした気持ちでいると、(ひとり暮らしには大きすぎると言われる)43∨型のテレビ画面では、相手守備の乱れにタイガース打線がつけ込み、ベイスターズを逆転。
 その後は、阪神投手陣が安定した内容を見せ、前日に続いて3連勝となり、ベイスターズと並んで首位に立った。

 やはり、木曜日の緊迫した試合展開で勝ちきったことは、良い流れを生んでいるようだ。
 
 奈緒美なおみさんとの試合観戦が、なお一層、楽しみになったことで、僕は、はやる気持ちが抑えれなくなっているのに気付いた。

 【本日の試合結果】
 
 阪神 対 横浜 7回戦  阪神 7ー2 横浜
 
 3回にベイスターズに先制を許したものの、その直後、相手投手の制球や守備の乱れに乗じて4点を取り逆転。
 先発の大竹が6回1失点と好投し、リリーフ陣も1失点と踏ん張ったあと、8回裏に近本とノイジーのタイムリー・ヒットでダメ押しして完勝。
 この結果、タイガースは、ベイスターズと並んで首位に立ち、翌日の試合は、単独首位の座を賭けた一戦になった。
 
 ◎5月13日終了時点の阪神タイガースの成績

 勝敗:19勝13敗 1引き分け 貯金6
 順位:首位タイ
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