空が青ければそれでいい

Jekyll

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篠田さんの”まさか…”みたいな、信じられへんみたいな顔。
そりゃまさかやろうけど、やっぱり知ってるんか!?
暴力団関係の刑事やなくても、やっぱり風間組くらいになると誰でも知ってるんや。
一気に重たなった空気に、かなり居心地の悪さ覚える。
「行こう…風間」
睨み合う二人の間に割り入り風間の腕を掴むが、反対から俺の腕を篠田さんが掴んだ。
デカイの二人に挟まれるみたいになって、ここが店の裏で良かったと思う。表通りやったら注目の的やで。
「何で風間組の倅が、秋山とおんねん」
「え…あの」
聞かれた風間やなく俺が狼狽えてまう。
風間はやっぱりいつものポーカーフェイスで、篠田さんのデカ独特の眼孔にも微動だにせんかった。
「威乃…誰や、コイツ」
「アホっ!刑事や!コイツ言うなっ!」
溜め息と共に発せられた、暴言に慌ててまう。
風間組の組長の息子やから目ぇつけられてんのに、更に睨みきかされそうな事言うなよ!
「ふーん、料理の上手い連れって、風間組の跡取りかいな」
「ちょっ!風間組は関係ないやん!あんたは俺のおかんの事件追ってんねんやろ!?」
篠田さんの含んだ言い方に、ムッとなる。
何でこないにつっかかんねん!と掴まれた腕を解こうにも、思いのほかしっかり掴まれてて解けんくて、一人ジタバタした。
「離してんか、それ、俺のや」
風間がそれを見て、あの、人殺せそうな目を見せた。篠田さんは一瞬ビクってしたけど、すぐに喉を鳴らして笑い出した。
「なるほどなぁ…。美人やもんなぁ、威乃ちゃん。お前が毒されんのも、しゃーないか。俺かてやられとる」
「ちょ!いい加減にせぇや!」
威乃ちゃんって何や!毒されるて何や!
俺が真ん中で暴れてんのに、この二人は俺をシカトや。シカトして、今にも殴り合うかもっていう臨戦態勢で睨み合う。もう…いい加減にせぇよ…。
「離せ言うてるん、聞こえんのか」
風間の声が、明らかに変わった。やばいと俺は咄嗟に篠田さんの俺の腕を掴む手に噛みついた。
殴ったら公務執行妨害でパクられる思って噛んだものの、ガキみたいで悲しなる。
篠田さんは“いてっ!”と小さく呻いて、手を離した。俺はその隙に風間を篠田さんから離して、拳を握りしめる風間の手を握った。
「あほぅ!熱んな!」
「威乃…」
風間がどこか、ホッとしたように俺を見た。
マジで飢えた猛獣や。さしずめ俺は猛獣使いか…。笑えん。
「よぉ調教してんなぁ」
感心した様に、篠田さんが言うた。ほんまに、これを調教と言わんでなんて言うねんなぁ…。
「あんた冗談すぎるし。マジで風間組は関係ないやろ。それにコイツは俺の後輩であって風間組の組員でも何でもない。ただ、風間組組長の息子いうだけや。ケチつけんなよ」
ヤクザの息子は所詮ヤクザみたいな、見た目とか、家庭環境とか、何でそんなんで判断すんねんな。
銀バッチつけとるわけでもない。どこにでもおる、イケメンのただの男やんけ。
所詮、篠田さんも俺等みたいなんを偏見で見て来た大人と一緒かと、少し悲しなった。
「確かにせやな。せや…俺が悪かった。堪忍してくれ。まぁ、お母さんがヤクザ絡んだ事件やったら、威乃ちゃんにも危険及ぶと思ってんけど、それは大丈夫やな。でも…あんたの事はマジで好みやわ。本気で口説くな。あ、でも事件の話の時はそないな無粋な真似せんから、何かあったら言うて。また電話してな」
一人でペラペラしゃべり倒して、向田さんに早よ戻らな殺されるわと、その場を立ち去った。
ってかなんて?好みって何やねん!口説くって何や!何これ、俺、モテ期!?
いや、男限定のモテ期ってどうなん!しかも、あろうことか威乃ちゃんって!
こっちがモヤモヤしてんのも吹っ飛ばす様な、訳の分からん発言に俺は一人固まった。
しかも、風間の前で言うって…。チラッと風間の顔を盗み見れば、篠田さんがおらんようになった道を食い入るように睨みつけてた。それはもう、おっそろしい眼で。
「電話したんか」
「はい?」
「アイツに電話したんか」
怒気を含むそれに、背筋が寒なった。
いくら喧嘩慣れしとっても、やっぱり風間はホンマもんやから今まで拳交えた奴らとは一味も二味もちゃう。
「店に来たって聞いて…おかんの事わかったんか思って」
あかん、声震える。情けない。
何でこないな言い訳せなあかんねん。今まで、女にもこんな言い訳したことないし。
「だけか」
確認みたいな風間の問いかけに、首を捻る。何を疑ってんねん。
「何が言いたいん」
「何もない」
何かある訳ないやろと、後ろからケツを蹴り飛ばしたなる。そんくらい顔に何か気になるって書いとる。こんなんが一番イヤ。
言いたい事あれば言えばええのに何で言わんねん。
「お前、アホやろ」
呆れて思わず呟いた。
男相手に欲情して襲ってくるんは、お前くらいしかおらん。誰も彼も同じにすんな。
篠田さんかて質悪い冗談やで。口説くやなんや笑われへん。ブラックジョークや。
やのに風間は振り返ることなく前を歩く。
「風間…?」
「お前は自覚なさすぎんねん」
自覚ってなんのやねん。
さっぱり分かりませんって顔して風間見たら、もうええ…って言うて、ふてこい態度。
どないせえ言うねんと、大袈裟なくらいため息ついた。

マンション着いたらテーブルには飯が用意されとった。毎度ながら涎もん。
この顔でヤクザの倅のくせに、こんな一面持ってんのが笑える。
でも相変わらずご機嫌斜めの風間。お前の仏頂面見ながら飯食うたら、旨いもんも不味いで。
「風間ぁ~」
あまりに居心地悪くて、キッチンに消える風間を追いかける。何で俺がこないな事せなあかんねん。
「なぁ、言いたいことあるなら言えよ。俺、エスパーちゃうねん。分からんやん」
シンクにもたれ掛かって、無言で支度する風間の顔を覗き込む。
俺、やっぱりオマエの考えてる事、分からんわ。何でそないに鉄仮面みたいに無表情なん。
「お前は結局、俺の言うことも冗談にとってそうやな」
「はぁ?」
チラリとも視線よこさんと、風間が言った。更に訳が分からへん。
「お前を抱きたい言うてる俺の言葉も、冗談にとっとる言うてんねん」
射抜くような瞳を向けられて、思わずたじろぐ。
抱きたいなんて、ストレートに言われたことある?こんな丹精な面した風間にサラリと言われたら、頬染めて身体差し出すやろうな、女は。
てか、女ならなっ!でも俺は生憎男で、ドン引きやわ。
こんな面構えやのに男のケツ追い回すなんて、可哀想になんて不憫にすら思う。
「風間、あんな…」
至って真剣な風間に、何も言えん。茶化したり出来んし、それに残念な事に俺は風間といたしてしまってる。前戯みたいな事。
喘いでイキまくったんは他の誰でもない。正真正銘、この俺。素質とかより若気の至りって思いたい。
「風間、お前のこと嫌いやない。でもな…」
言いかけた言葉は、風間の唇に塞がれた。軽く音立てて唇吸われて、離れてく。フレンチキッスみたいな…。
「答え聞くん、まだ早い」
そう言う風間の瞳が寂しそうで、悪いことした気分なった。かと言って風間の気持ちに応える事は出来ん。
やっぱり俺も男で、オマエも男なんやで。それを好きやから飛び越えれるみたいな感情は、お前にあっても俺にはない…。

風間の飯はやっぱり絶品。
鶏のささみを、特性マヨネーズで和えて半熟卵と食べる。辛さと甘さのハーモニーが病みつきもん。
それとインゲンのゴマ和えと、サンマの塩焼き。で、今日は豚汁。
俺自身はそうやのうても、俺の胃袋は間違えなく風間を愛しとる。
「お前、すごない?よぉこんなん出来んなぁ」
ガツガツ腹を満たすためにがっつきながら、風間に聞く。
だってスゴいやん。確かにハルも料理旨いで。たまに煙草の灰入るけど。
でもこんなんやない。風間のはプロみたい。
いや、おかんの作った飯すらちゃんと食うたことないから何とも言えんけど、三浦さんが風間の腕知ったら絶対雇うな。風間なら三浦さんに付いていけるし。
「俺が中学の時に、親父に実家から放り出された」
「は?」
急に言われた言葉にキョトンとなる。何が関係あんねんな。
そんで料理の修業でもしたんか。ってかオマエんとこの家業はヤクザやろ。
「ここやのうて、組の下っ端が住んでる寮みたいなとこに放り込まれてん」
「はぁ…?」
話の意図が掴めずに、ただ黙って聞く。風間ってたまに話出すけど、話の意図が見えんわ。話下手よな、絶対。
「任侠道を叩き込まれんねん、そこで」
「はぁ!?」
マジかよ!ヤクザの養成学校!?思わずデカイ声上げて、飯食う手も止まる。
「風間の息子って知ったら、みんな遠慮してまうから、下手こいた堅気の息子って設定」
「まぁ、組長やしなぁ…オヤジ」
笑えん設定やけど。でも実際オマエの素性を学校の奴らが知ったらオマエを崇拝する奴、明日から列なしておるやろうなぁ。
何と言っても天下の風間組や。一般人には距離置きたい相手でも、うちの学校の将来本業にしたい奴らからしたら、是非、お近づきになりたい相手やろうしな。
「取り立てとか抗争とかついて行って、色々と吸収すんねん。風間に隠れて薬流す組潰したり、手打ちしたり…そんなんしてたら、色んな組の奴の顔覚えれるやろ」
「お前に何かあったらどないすんねん」
そりゃ組と敵対してる人間の顔とか、情報屋とかの顔覚えるには一番手っ取り早いかもしらんけど、風間組の跡取りって分かったら、それこそいつどこで命狙われるか分からんやん。
そんなんなったら、元も子もないんやない?
「そうなったら、俺がそれまでの男なだけや」
百獣の王ライオンも我が子を崖から落とす言うもんな。それとよう似てるんかな。
任侠の世界のトップに君臨してる奴も、我が子に強なって欲しいって鬼畜になるってやつなんか?いや、待って、中学の時やんな?
ってかお前、他人事みたいに言うなよなぁ…自分の人生やん。やっぱりデンジャラス。
それにそないな世界を中学ん時に経験したら、そりゃあ俺らみたいなガキ一発やな。人殺す眼も持っとるわ。生きてる世界がちゃう。
俺らみたいに、何となく~、働きたくないし~、みたいな半端もんの集まりが束んなっても敵わんわ。
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