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第5章
お金って人を変える
しおりを挟む「では、ケースを貸して頂けますか?」
家について一息つくとなんだか急にどっと疲れた。
リビングへ入るとアイルさんはあのでかい杖をどこにしまっていたのか、急に出現させケースをテーブルへ並べた。
杖をケースの前で一周させる。
ケースの中のお金が一瞬で見慣れた諭吉に.....そう、諭吉に変わる。
その諭吉がケースからはみだし床に落ちる。ボトッていった。諭吉がボトッていった。
諭吉多すぎんだろ
目の前には大きめのアタッシュケースのようなケース2つから溢れて床へ束となって落ちる諭吉。思考回路ってマジでショートするもんなんだ。
「少々ケースが小さかったようですね。では私は戻ります。」
「いやいやいやいや!!はぁあ!?待ってください待ってください!諭吉!諭吉が!!所狭しと!!なんで冷静なんすか!?」
「...秋月さんは急に元気になりましたね」
「こんな金額もらえるわけないじゃないですか!!数えてないからわかんないけど!!なにこれ怖い!!」
「ですから何度もいうように...」
「そういうことじゃないです!!金銭感覚おバカすぎません!?ボンボンすぎるでしょ!」
「...持ってきた金額は官職の一月分の給料くらいですよ?そこまで騒ぐことですか?」
「インフレ異世界コンチクショウ!」
諭吉を一枚テーブルに思わず叩きつけた。
官職ってこっちでいう国会議員とか官僚とか?こっちの世界でいくらもらってるかは知らないけどどう考えても一ヶ月にこの金額多すぎるだろ。異世界まじワンダーランド....
「とにかくこんなトンデモ金額受け取れませんよ!てっきり五万円とか!そんくらいかと思ってたのに!!」
「世界が違えば金銭の考え方も違うんです。もういいですか?」
「めんどくさがってもダメですからね!私は屈しませんよ!」
「じゃあどうしたら納得するんですか?」
アイルさんが冷静すぎて腹が立ったが、どうしたらいいのかと言われて一瞬戸惑った。
お金の魔力まじ怖い。持って帰ってもらうしか選択肢はないのに一瞬迷った自分が憎い。
「とにかく持ってか「ただいまー、あれ、唯いんのー?」
お札を指差してお持ち帰りいただこうとしたらとんでもねぇタイミングで美佳姉がご帰宅しなさった。何も、何もこんなときに...!!
正直びっくりして悲鳴をあげそうになったがとっさにケースの諭吉、こぼれ落ちた諭吉を隠さなければならないと判断してすぐにケースをキッチンの横にある掃除用具とか入れてあるところへ押し込む。だいぶ狭いけどついでにアイルさんも押し込む。許せ諭吉。
「ごめんなさいアイルさん!一瞬!美佳姉が二階にいくまで隠れててもらってもいいですか!」
「...構いませんが....はみでてますよ。」
「なぜだ諭吉!!!」
押し込んだつもりの諭吉がケースから顔を出している。
荒々しくケースを締めなおして再び押し込む。ゴン、と嫌な音がしてモップがアイルさんへと落ちていく。
それをつい急いでて思いっきり横に退かしたら掃除用品の雪崩が起きた。色々痛そうなものが私に向かって落ちてくる。
「っ秋月さ「え!?唯!?」
騒いでいたからか、美佳姉はキッチンに顔を出した。
掃除用品の雪崩から守ってくれたアイルさんは私の手を引いて頭を掴んで引き寄せたのでまるで抱き合っているかのようにみえただろう。
諭吉が溢れなかったことだけが幸いだ。
なんだかもうどうでもよくなってきた。
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