愚者の門番、賢者の聖杯

春森夢花

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飲めるか飲めないかは他人に飲ませて様子を見よう

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そう言ってロルは大きく腰を引き、ズン、とジモンに勢いよく自分の巨根をねじこみ、引き出す。その度にジモンは低い唸り声を上げながら、耐える。

小さな子供に犯されているのに、なにも出来ない自分が悔しいのか。それとも自分の子供に犯されて悲しいのか。

泣いていた。

とはいえ俺は何もしてやることができない。

俺は非力だ。

ロルに負けるジモンより、俺の方がよほど弱い。

「終わったら声をかけてくださいよ」

そう言って俺はベッドの下の床に座り込み、奴らに背を向けた。蝋燭は半分ほど残っている。恐らくは一時間というところだろう。それまでに終わらなければとっとと帰ろう。そう思いながら煙草を取り出す。まだ十本ほど残っていた煙草のケースを胡坐をかいた俺の前に放り出し、俺はしこたま煙草を吸う事にする。

背後はうるさいが、俺は静かに煙草を吸う。

「ああ……出る、出る。お父様、なにかきます、僕、気持ちよくて……子種が出ちゃう」
「よせ、ロル、出すな、抜け」
「厭だ、お父様、孕んで、僕らの子を、孕んで」
「なにを愚かな……!ロル!目を覚ませ!」
「だって、だって、僕らは神の子だもの!神は来た。僕はその恩恵にあずかったんです、だから」
「ちがう、よせ、俺は子供なんて」
「お父様、あなたは弱いから。あなたは選ばれなかったから。だから僕、あんたを女にする、僕の妃にする、してやる、孕むんだ、ジモン」
「ロル、貴様!なんて口の聞き方を……」
「おまえこそ」

と、ロルの声が聞こえた。

「おまえこそ、誰に向かって口を聞いているんだ、この出来損ない。僕にも勝てない癖に!」
「ロル」
「もう、あんたの言う事なんか、聞かない。僕はこの国の王様になるんだ。そうだろ?お前は、弱い」
「俺はお前の父親」
「もう違うよ、僕の女だ」

唐突に言葉が止んで、パン、パン、と耳慣れた音が聞こえてくる。誰かが自分の腰を誰かの穴に打ち付けている音だ。それが激しくなってきて、ロルの可愛いうめき声が聞こえた時、音は止まった。

「ああ……」

ジモンの呆けた声が聞こえる。

もう一度、と言うロルの声。抜いてくれ、抜いてくれ、とジモンが懇願してもその願いは結局聞き入れられなかった。

それから俺は八本程煙草を吸った。

極力、ゆっくりとだ。


蝋燭も尽きそうではあるし、そろそろ帰るか。とどう言えば穏便に帰ることができるかを考えていると、どさり、となにかが落ちる音がしてロルが俺を呼んだ。

「クドウ、終わったよ」
「ああ、終わりましたか」
「片づけを頼むね」
「……アタシがですかい?」
「こんなお父様を誰に見せられるっていうの?誰かがお父様を抱くかもしれないでしょう」
「それは……アタシだってそうかもしれませんぜ」
「君は大丈夫だよ」
「どうして?」
「だって、君もどちらかといえば女みたいだもの。ねえ、クドウ。なんなら君も僕の側室にしてやってもいいよ」

そう言うあどけない声が段々俺に近づいてくる。なんと言ってご辞退申し上げるかな、と考えていると俺の視界に細い腕が左右から現れた。そいつは俺の肩から首に巻き付いた。すると耳に、誰かの吐息がかかる。かかるばかりか、誰かの舌が俺の耳を舐め、誰かの歯が俺の耳を齧る。止せ、とも言いにくい。王子様、と声をかけながら振り向こうとした時、俺の唇に柔らかい物が当たった。目の前にはロルがいる。ロルと俺は間近で向かい合っていた。そればかりか、俺はロルと唇を合わせていた。この国ではキスをするときに目を閉じる習慣がないのか、ロルは俺をまっすぐ見つめて、妖しく笑った。

俺の口に舌を入れて。

思ったよりもやけに長い舌だ。

俺は男と、ましてや幼い少年と楽しめるほど性に貪欲ではない。が、なぜだか拒めなかった。

それは、ロルの瞳が赤く輝いていたからだ。

人間の目は輝かない、光らない。

だが、薄暗いこの部屋で少年の目は確かに、紅く灯っていた。

ロルからの口づけはなにか、甘い味がした。俺も目は閉じずにただ、俺の口の中を好き放題に味見する、長い舌の暴力に耐えていた。

しばらくしてからロルは俺の口から出て行き、「後片付け、お願いね」と言って部屋を出て行ってしまった。

後に残されたのは、無様に尻から精液を出して伸びている王様と、少年にキスを奪われた哀れな中年二人だけだ。

「まったく……この前だってそうだったが……どいつもこいつも俺が掃除夫だと勘違いしているんじゃないか?ああ、気分が悪いぜ」

そうぼやきながら俺は勝手に王様の部屋を物色しはじめた。俺は酒があまり好きではないが、どうも口の中が気持ちが悪い。酒でも飲まんとやっていられるかと勝手に戸棚をさぐり、小さなガラス瓶をみつけた。

栓を開けて匂いを嗅いでみると、ブランデーのような匂いがした。とはいえ、知らない場所で知らない液体を簡単に飲むほど俺は不用心ではない。とりあえず、王様に飲んでもらおうじゃないか、と栓を抜き取り乱暴にジモンを仰向けにすると、上半身を抱えて少し持ち上げてから、ガラス瓶の中の液体を少し流し込む。するとコク、と素直に飲んだジモンがいきなりむせ、それから薄く目を開けた。

「……なにを」
「いや……気を失っていたんでね。気付け薬ですよ」
「ただの酒だ、薬ではない」
「そりゃあ良かった……いえね、アタシの世界では酒だって薬だって言ってるんですよ。だから……ねえ、大丈夫ですか」
「大丈夫に見えるか」
「そりゃあ……見方によりますがねえ」
「クドウ」
「はい」
「お前は嫌な奴だ」
「そりゃどうも」



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