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七日後②
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【門ガ、開ク。第二ノ扉ガ開ク】
それと同時に俺は民衆の歓声を鼓膜に拾う。馬に乗ったジモンが現れる。皆に手なんか振って余裕じゃないか。俺は携帯灰皿に煙草をしまう、ジモンが馬から降りる。その後ろにロルが控えている、意味ありげな笑顔で俺を見る、いやらしい顔だ。俺の元へと向かうジモンに背を向けて俺は右手を上げる。すると門は連動して開く。俺と聖杯を抱えたジモンは連れだって門の中に入る、その背後では大歓声が聞こえているんだ。
「王様、万歳」
「神様、万歳」
「我が国に富を!」
そんな声が聞こえて、ジモンは扉が開くまで民衆に愛想を振りまいていた。
扉が閉まると、静寂だ。
目の前には応接室、の奥に扉がある。
そこが、少し開いていた。
俺は我関せず、とばかりにいつものお気に入りのソファーに座る。ジモンは俺を睨みつけた。
「お前は行かないのか」
「残念ながらアタシはその扉の中には入れないんですよ」
「しかし……」
「アタシはどちらだって構いませんぜ。今から帰るって言っても、王様は尻尾まいて逃げた、なんて誰にも言いませんのさ」
「誰が逃げるか!いいか、待っていろクドウ!俺は神に会って誰よりも強くなって帰ってきてやる!」
そう言ってジモンは強く声を荒げてずかずかと二の扉に入って、バタン、と扉が閉まった。
俺はふと、いつも背中のベルトに挿しこんでいる拳銃を手に取り、後何発残っているか調べた。
全部で、五発だ。
なんとも心もとないが、事務所で仲間を殺すために派手に撃ちまくったし、後は自分を撃つだけだと思っていたので弾を持って行かなかったのだ。
「自分で死ぬのはいいが……、化け物に殺されるのはたまらんなあ……」
そうぼやきながら再び銃をしまう頃、ガタン、と応接室の扉の向こう側で物音がした。
俺は咄嗟に身構える。だが、誰も出てこない。どうした、と思った時、また、大きい音がする。ドン、ドン、と今度は誰かが扉を体当たりしているような音だ。そんな音を立てるのは、一人しか思い浮かばない。もしも化け物の類であればドアを開けるだろう。
俺は足早に応接室の扉に向かうとドアノブに手をかけて引っ張った。だが、開かない。
「おい、旦那……いるのかい、大丈夫か」
返事はない。だが、ドン。ドン。と音だけは続いていた。
銃を使うか。そんなことをしてもこの不可解でなんでもありな門の中で通用するのか。それに弾は五発しかない。俺の忠告を聞かずに飛び込んだ馬鹿者の為に残り少ない弾を使うのも気が引けた。じゃあどうするか、そう考えたところで応接室の一人用ソファが目に入る。こいつを振り回せばなんとかなるか。そう思って近くのソファーの背もたれをぐっ、と握った時だった。
バン、と扉が開いた。
そこにはジモンが立っていた。
立ってはいたが、なんと言えばいいのか。俺は上手く頭が回らずにその姿をただ見つめるしかなかった。
「う……ああ、あ……」
ジモンの体は濡れていた。薄い色水、とろみのある少し赤みがかった色水を全身にかぶって、よろよろ、とこちらに歩いてくる。胸にはしっかりと聖杯が抱えられている、だが歩いてくるにつれて異常な事に気が付く。ジモンは服を身に着けていたが、僧侶の衣のような下からあの、白いチューブのような物が繋がっていた。ジモンは口からも色水を吐き出し、泣いている、目は粘り気のある色水で上手く開けられないのか、瞼が閉じていた。
「出してくれ……、出してくれ……、ああ、取って、取ってくれえええ!俺の中に、化け物が、化け物が、ひい……動いて、動いている……!やめろ、もう入らない、入らないから、」
そう言ってジモンは目を閉じたまま恐怖の顔で片手で自分の尻辺りを触っては、なにかを外そうとしている。おそらく以前見たように化け物が中に入り込んでいるのだろう。足が震えて歩けないジモンを支えるかのようにその白い管は俺の方へジモンを歩ませてくる。よく見ればジモンの足はつま先がかろうじて床についているようなもので、浮いている、と言っても過言ではない。
一歩ずつ、歩く度に体が揺れている。それでも、執念なのか、前回の時に化け物が脅したからなのか。
聖杯だけはしっかりと抱えている。
それに、心なしか聖杯に入っている赤紫の液体は七日前よりも少し、減っている気がした。
それと同時に俺は民衆の歓声を鼓膜に拾う。馬に乗ったジモンが現れる。皆に手なんか振って余裕じゃないか。俺は携帯灰皿に煙草をしまう、ジモンが馬から降りる。その後ろにロルが控えている、意味ありげな笑顔で俺を見る、いやらしい顔だ。俺の元へと向かうジモンに背を向けて俺は右手を上げる。すると門は連動して開く。俺と聖杯を抱えたジモンは連れだって門の中に入る、その背後では大歓声が聞こえているんだ。
「王様、万歳」
「神様、万歳」
「我が国に富を!」
そんな声が聞こえて、ジモンは扉が開くまで民衆に愛想を振りまいていた。
扉が閉まると、静寂だ。
目の前には応接室、の奥に扉がある。
そこが、少し開いていた。
俺は我関せず、とばかりにいつものお気に入りのソファーに座る。ジモンは俺を睨みつけた。
「お前は行かないのか」
「残念ながらアタシはその扉の中には入れないんですよ」
「しかし……」
「アタシはどちらだって構いませんぜ。今から帰るって言っても、王様は尻尾まいて逃げた、なんて誰にも言いませんのさ」
「誰が逃げるか!いいか、待っていろクドウ!俺は神に会って誰よりも強くなって帰ってきてやる!」
そう言ってジモンは強く声を荒げてずかずかと二の扉に入って、バタン、と扉が閉まった。
俺はふと、いつも背中のベルトに挿しこんでいる拳銃を手に取り、後何発残っているか調べた。
全部で、五発だ。
なんとも心もとないが、事務所で仲間を殺すために派手に撃ちまくったし、後は自分を撃つだけだと思っていたので弾を持って行かなかったのだ。
「自分で死ぬのはいいが……、化け物に殺されるのはたまらんなあ……」
そうぼやきながら再び銃をしまう頃、ガタン、と応接室の扉の向こう側で物音がした。
俺は咄嗟に身構える。だが、誰も出てこない。どうした、と思った時、また、大きい音がする。ドン、ドン、と今度は誰かが扉を体当たりしているような音だ。そんな音を立てるのは、一人しか思い浮かばない。もしも化け物の類であればドアを開けるだろう。
俺は足早に応接室の扉に向かうとドアノブに手をかけて引っ張った。だが、開かない。
「おい、旦那……いるのかい、大丈夫か」
返事はない。だが、ドン。ドン。と音だけは続いていた。
銃を使うか。そんなことをしてもこの不可解でなんでもありな門の中で通用するのか。それに弾は五発しかない。俺の忠告を聞かずに飛び込んだ馬鹿者の為に残り少ない弾を使うのも気が引けた。じゃあどうするか、そう考えたところで応接室の一人用ソファが目に入る。こいつを振り回せばなんとかなるか。そう思って近くのソファーの背もたれをぐっ、と握った時だった。
バン、と扉が開いた。
そこにはジモンが立っていた。
立ってはいたが、なんと言えばいいのか。俺は上手く頭が回らずにその姿をただ見つめるしかなかった。
「う……ああ、あ……」
ジモンの体は濡れていた。薄い色水、とろみのある少し赤みがかった色水を全身にかぶって、よろよろ、とこちらに歩いてくる。胸にはしっかりと聖杯が抱えられている、だが歩いてくるにつれて異常な事に気が付く。ジモンは服を身に着けていたが、僧侶の衣のような下からあの、白いチューブのような物が繋がっていた。ジモンは口からも色水を吐き出し、泣いている、目は粘り気のある色水で上手く開けられないのか、瞼が閉じていた。
「出してくれ……、出してくれ……、ああ、取って、取ってくれえええ!俺の中に、化け物が、化け物が、ひい……動いて、動いている……!やめろ、もう入らない、入らないから、」
そう言ってジモンは目を閉じたまま恐怖の顔で片手で自分の尻辺りを触っては、なにかを外そうとしている。おそらく以前見たように化け物が中に入り込んでいるのだろう。足が震えて歩けないジモンを支えるかのようにその白い管は俺の方へジモンを歩ませてくる。よく見ればジモンの足はつま先がかろうじて床についているようなもので、浮いている、と言っても過言ではない。
一歩ずつ、歩く度に体が揺れている。それでも、執念なのか、前回の時に化け物が脅したからなのか。
聖杯だけはしっかりと抱えている。
それに、心なしか聖杯に入っている赤紫の液体は七日前よりも少し、減っている気がした。
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