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しおりを挟むツーツェイは城下を走った。けれどテオドールがどこにいるのか分からない。
「っ!!」
地面にあった石につまづいて転んでしまう。衝撃で手から離れて落ちる手紙。地面に擦りむいた手を伸ばしてその手紙を掴む。
(……あの女性のところにいるのに違いないわ)
テオドールのあの恐怖に満ちた表情。いつだってそれを引き起こしていたのはあの貴族の女性、エリオットと会ったときだった。それにテオドールを悩ませて苦しませているのもあのエリオットだと思う。
だとしたらこの手紙を書いたのもなにかしらの理由でそう書かざるを得なかったのではないかとも思う。手に握られた手紙を強く掴めばぐしゃりと皺が寄る。
(許さない……絶対にあの女を許さない)
深い憎しみの憎悪がツーツェイを包み込む。そっと手を合わせて目を瞑った。力を込めるように。
「居場所を教えて」
そう囁けば手の先から伸びる光の線。こんなことまで出来てしまうのかとツーツェイは自身の力に恐ろしくなったけれど、恐ろしさを感じている暇はないと立ち上がる。
周りの人々の雰囲気は変わらないので、どうやらその光の線はツーツェイにしか見えないようだった。
その線をたどっていけば大きな屋敷に辿り着く。その屋敷の門の前には門番が立っていて警戒していたけれど『止まれ』とツーツェイが願えば、セオドア侯爵邸の使用人たちと同様に固まった。
屋敷に入っても使用人たちを同じように止める。そうしてある部屋の扉の前で途切れる光の線。その扉を開こうとしたとき中から話し声が聞こえる。
「これで手を出さないと約束してもらえるんですよね」
テオドールの声。その声に扉を開けずに耳を当てて会話を聞く。ツーツェイはなにが行われているかを知りたかった。それにテオドールがあんな手紙を書いた理由も。
「あぁ、もちろんよ。あの王女殿下には手を出さないわ」
(王女殿下?)
「ツーツェイ・リンドワール、ふふ、我が国に連れて帰りたいけれどあなたの願いなら仕方ないわね」
「……あなたのような人に利用されるだけですから」
「ふふ、言うようになったじゃない」
(ツーツェイ・リンドワール……)
自身の名前のあとにつく国名。それが意味することはツーツェイにはわかった。
それになんとなく気づいてはいた。
夢の中の女性、それに書斎にあった歴史書の写真の女性。髪色と瞳の色が自分と一緒だったこと。耳につく金木犀の髪飾り。それを掬うのを一瞬悩むようにテオドールが指を止めたこと。
(やっぱり……私はリンドワール国の王女だったのね)
『愛してるわ、ツェイ』とそう何度も夢の中で涙を流していた美しい女性。あの女性は母親だったのかと胸が苦しくなる。
「脱ぎなさい。その帝国の犬の格好は虫唾が走るわ」
はっとツーツェイの意識が戻る。その言葉にテオドールが自身のために身を差し出しているのだとわかる。
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