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第三章 捻くれ皇子の疑問と熱視線
お外へ出ましょう2
しおりを挟む「やっぱり君って……リゼ?」
私の震えに殿下の言葉が止まった。心配そうに私の肩にそっと触れる。
「大丈夫? 震えて……」
「が、頑張ります!」
「は?」
「今度は絶対に本当に守りますから!!」
「えっ、ちょ……」
殿下の手から離れて、そのまま逃げるように部屋から出た。
(ううっ!! 嫌われていても構わない、次に生かせばいいのだから!)
絶対に今度はお守りする。そのために生まれ変わっても、殿下をお守りしたくていまがあるのだ。
前の私は忘れようと自分に言い聞かせながら、誓いを立てて廊下を駆け抜けた。
◇◇◇
「ひっく……っく……」
聖職者が使う長い杖を持ちながら、しくしくと涙を流す見慣れたお兄様。もちろんこれは新しい美しい兄の方だ。
悲壮感漂う彼とは対照的に、周りの使用人仲間達が目の保養だと言わんばかりに熱い眼差しを送っている。
「あのー……シエルお兄様。そろそろ泣き止んでくれると助かるのだけれど」
「どうして……」
「どうしてと言われても……」
「リゼが建国パーティに参加する必要はないでしょう!!」
――――きーん。
耳をつんざくような声に身体が傾く。涙が弾け飛んで、さらにシエルお兄様の周りがキラキラと輝いているのが眩しい。なるほど、美形は泣くとキラキラを増すのか。
「あんな、魔の巣窟みたいなっ、ところに! こんな可愛らしく着飾ったリゼがっ!! でもとても可愛い、すっごい可愛い。お兄ちゃん、可愛すぎて失神しそうなくらい可愛い!!」
「あ、あははー……語彙力……」
泣いたり感動したりで忙しそうだ。私の周りを四方八方うろちょろしている。
今日は例の建国パーティ当日。ロザリー夫人が用意してくれたのは髪色に合わせた華やかな水色のドレス、それに長い髪も綺麗に編み込みされて花の形の宝石が散りばめられている。
「まさかリゼが殿下のパートナーだなんて……」
「殿下を永久に見られるようにしてくれるなら、もはやなんでもいいわ」
「『黒』だからと邪険にされる存在ではないレベルのお顔だものね」
なんて嬉しそうに使用人仲間たちが今後の自分たちの目の保養のために丁寧に仕上げてくれたのだ。こんなに豪華なドレスはアメルのときに着た以来だった。
『服に着せられているなぁ!』なんてアルフェント兄様にゲラゲラと笑われた苦い記憶しかなかった。だがリゼとして生まれ変わったいまは、自分でも目を丸くしてしまうほど着こなせている。さすがカディス家の唯一の良さ。
「シエルうるさい」
唯一はかわいそうか?なんて自問自答していると後ろから気だるげな声が聞こえた。
(おおーーーー!!)
現れたのは皇族の正装をきっちりと着こなした殿下のお姿。
あまりの美しさに周りの使用人たちが顔を真っ赤にして倒れていく。『最高でした』なんて自らの鼻血で床に遺書を書いている。今後の目の保養のために私を着飾ったんじゃないのか。
(私はそういう目線というよりも……)
「ご立派になられて……」
成長した姿を見られて感動しかない。手を合わせて拝んでしまう。そうやってありがたいものを見たと思っていると殿下の眉に皺が寄っていく。
「殿下?」
「求めたことと違う」
――――ぷいっ。
頬を膨らませてそっぽを向いたので、何やら機嫌を損ねてしまったようだ。
「えーっと……」
どうすれば機嫌が治るのだろうか。困っていると、ちらりとこっちを向く。
「……格好いい?」
「え?」
「だから、格好いいか聞いてるの。リゼと一緒に参加するから着飾ったのに」
「ふぁっ!? な、何を言ってるんですか! これは陛下の願いで、私は関係なく……あっ」
――――ぷいっ。
またもや回答を間違えたようだ。またそっぽを向いてしまった。
(うぅ……なんでこんな……)
頭を抱えてからため息をつく。そんな私に頬を膨らませて拗ねてしまう。ここは私が折れるしかないようだ。観念して頭を抱えていた手を伸ばした。
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