【書籍化】転生した元女騎士ですが、護衛対象の美形皇子に迫られています

前澤のーん

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第五章 ずっとお守りします

恥ずかしいのですが

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「はぁ、なんだか疲れましたね」

 ソファに腰かけるとクレイセント様が紅茶をカップに淹れて手渡してくれる。ありがたく軽く頭を下げて受け取って口をつけた。

「そういえばラルディーニ卿……あぁ、アメルのお父上が俺の授与式に参加するために帝都に向かってるらしいよ」
「んぐ!?」
「うん。吐くの我慢したね。偉い偉い」
「ごほっ、っはぁ……な、なんで……」
「さぁ? アルフェントが何やら手紙を送ってたけど。どんな内容かまでは聞いてないや」

(あんのくそゴリラ~!!)

 絶対にいらぬことを書いたに決まっている。あのあと、生まれ変わりであること、アメリアの記憶があることを軽く説明した。このことは他の人には黙っておいてほしいと伝えたはずなのに。

「ふふ、あと三日くらいは安全かもね? そのあとはリゼも忙しくなりそう」
「っ、ただでさえクレイセント様の手伝いでもう忙しいのに」
「ん。それは助かってるよ」

 あの一件のあと、私たちはなかなかに忙しい日々を送っていた。バズバンドとレイモンドの悪行は国民に知れ渡り、二人、また関わった貴族や兵士たちは近々刑に処されることとなった。
 テーブルに置かれた新聞にもでかでかとそのことが報じられている。それと……。

「クレイセント様はとっても人気ですしね」

 同じくらいにクレイセント様の功績が称えられている。

(顔写真付きなのは、絶対に女性人気をつかむためでは?)

 今回は陛下がそう仕向けたのだろう。クレイセント様は顔を出すのが好きでないからだ。そのせい……おかげで国民、おもに女性たちからの熱い注目を受けている。

「あれ? もう皇太子になるのに嬉しくないの?」
「それは嬉しい、ですけど」

 来週、聖堂で行われる皇位継承の正式な授与式。女性国民、貴族令嬢たちが沸き立って絶対に近くで見られる場所を死守せねばと息巻いているという(ロザリー様より聞いた話)

(嬉しいのは間違いない。間違いないんだが)

 むむっと眉に皺がよって口が尖ってしまう。その理由も分かっているから尚のこと腹が立つ。
 そうやっていると、クレイセント様がゆっくりと屈んで私の唇にキスをした。ふわりと笑っていて、なんだか嬉しそうだ。

「……クレイセント様。いまはそんな気分ではないのですけど」
「そう? 俺はとっても嬉しいから、そんな気分なんだけど」
「むっ、むむむ……」
「俺の口がよく尖る理由が分かったでしょう?」
「それは……分かりました」
「ん。それだけで嬉しい」

 にっこりと満足そうに笑う彼の頬を柔らかくつねってやるが、緩んだ表情は変わらない。つねっていた私の手に彼の手を重ねられて、指先に唇が触れた。

「だから、からかうのはやめ……」

 唇が離れると輝く光が目に入る。よく見れば左指に嵌められていたのは指輪。美しい瑠璃色の宝石がついていた。

(これ……)

 ――――『璃宝石が欲しいです』

 アメリアのときに彼の気持ちを諦めさせるために伝えた璃宝石だ。ぱっと顔を上げるとクレイセント様が優しく微笑んでいる。

「あのとき、本当はこれを見つけられていたんだ」
「え……」
「あの森の湖の水をすべて消してみたら、簡単に見つけられたよ。地底で結晶化してできるみたいだね」
「そ、それはクレイセント様にしかできないかと思いますけど」

 あの大きな湖の水をすべて消していたとは、やはりあのときから彼の力は強かったのだ。

(私が太刀打ちできないのも無理はないな)

「もしかして、ずっと持っていたんですか?」

 私の問いかけに頷く。彼の手の中にある指輪が入れられていたらしい木箱は年季が入っていて古びている。けれどしっかりと手入れがされていて、長い間大切に保管していたことが伝わってくる。
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