69 / 69
68
しおりを挟む「アメリア、君はスカーレットが引退したら、どうするつもりだ?」
エスト様は先程とはうって変わり、真剣な面差しで私を見つめる。
その瞳に全てを見透かされているようで少しだけ恐怖を感じる。
だからこそ、私は微笑んだ。
「どうするつもりもありません。
お母様が引退したとしても、私がやるべきことは変わりませんわ。
私はただ、誰かのためにこの力を振るう。
それだけで十分であると思っていますもの。
ただ、お母様が引退したその時は、私ももっと力を付けなければならないとは思いますが」
確かに、私の目標はお母様の隣にたち、戦うことだ。
だが、それでも根本的なものは変わらない。
誰かを守るために力をつけたい。
その分かりやすい目標がお母様だっただけ。
だから、お母様が引退したとしても結局のところは変わらないのだ。
「そうか……。
ならば良かった」
エスト様が優しく微笑んだ。
自然とその手が私の頭に伸び、我が子の成長を喜ぶかのように頭を撫でてくる。
「さて、ここからはある意味では戦場と言えるだろうな。
君ならば大丈夫だろうが……。
もし、何かあれば私の名を使うといい。
スカーレットの子だ。
私の子も同然だからな」
エスト様はそう言うが、ここで頼ってしまうのはダメだと思った。
これは、私の試験だ。
エスト様が純粋に私のことを認めているのならば良いだろう。
だが、違う。
これは、お母様の、スカーレットの子という前提があり成り立つものなのだから。
だとするのなら、ここで力を借りるのはいけない。
「ありがとうございます。
ですが、大丈夫ですわ。
見事乗り切ってみせます。
私は、あのスカーレットの娘ですもの」
笑ってみせると、エスト様は驚いたように目を見開き、笑みを浮かべながらその奥の扉を開いた。
*
私は、今、陛下と謁見中だった。
「アメリア嬢。
スタンピードでの助力、感謝する」
「勿体なきお言葉、ありがとうございます。
ですが、あれは私だけのものではありませんわ。
この国の冒険者たちと騎士の力があってこそのことですもの。
私はただ、少々お手伝いをしただけですので、感謝は不要ですわ」
あれは、決して私一人の力ではない。
冒険者たちの力も借りたし、騎士たちの力があってこそのもの。
それを、私一人だけの功績になど、出来るはずがない。
「アメリア嬢、謙遜しすぎるのも良くはない。
皆、口を揃え言っておった。
一番の功績者はアメリア嬢である、とな。
騎士だけではなく、冒険者たちも同じだ。
自分たちはただ見ていただけだと言うのだから、素直に受け取ると良い」
「……はっ。
ありがとうございます」
私が礼を口にすると、陛下は満足そうに笑みを浮かべた。
納得は出来ないが。
「それで、褒美の話だが……。
何がいい?」
「何も。
強いて挙げるとするのであれば、この国の民を守る外壁の一部が壊れたと伺っております。
その修繕を」
「うむ。
だが、それは当然のこと。
貴殿への褒美とはならぬ」
困ったように言われても、私に欲しいものなど何も無い。
金銭的に困っている訳でもないうえ、剣だって銀で作るのだから問題ない。
かといって、銀をもらったところでどうしようも無い。
これ以上、何を望めと言うのだろうか。
「陛下、ではアメリアの後見となるのはどうでしょう?」
エスト様が口を挟んだ。
陛下はその提案に少し考えるような素振りを見せたかと思えば、頷いた。
「だが、それだけでは足りぬだろう」
「い、いえ!
充分すぎる程ですわ。
ですが、それでも足りぬと思われるのでしたら急ぎ、外壁の修復をお願い致します」
でなければ、外壁から王都の街に好き放題に魔物が入ってくることになるのだ。
それを分かっていて、他の褒美など望めない。
……欲しいものもないのだが。
「承知した。
だが、欲がないな……」
陛下の言葉に、私はただ苦笑をもらした。
11
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(14件)
あなたにおすすめの小説
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。
佐藤 美奈
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。
そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。
バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。
逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。
姉の婚約者と結婚しました。
黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。
式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。
今さら式を中止にするとは言えない。
そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか!
姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。
これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。
それどころか指一本触れてこない。
「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」
ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。
2022/4/8
番外編完結
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白いですが、誤字が多くて残念です
ウルフのウルは?連れていないのですか?
モフモフ好きなのでウル絡み楽しみなのですが。
更新頑張って下さい。
楽しみにしています。