竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

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私が目を覚ますとそこは屋敷の自室だった。
私が意識を失った時の事を思い出し、確認を取らなければ…といつになく重い体を起こしたところで…。


「失礼します……っ……え……ア、アメリアお嬢様……?
お目、覚めに……?
だ、旦那様!!
奥様!!」


侍女が部屋を出ていってからすぐに私はベットから降りて部屋で出来る訓練をしようとしたのだ。
だが、体が思うように動かなかった。
まるで、全身に重りがのっている様だ。


「アメリア!!」

「アメリア!!
本当に目覚めたのだな!」


前者はお父様、後者はお母様だ。
お母様もお父様もかなり慌てている。


「問題ありませんわ。
そんなに慌てるような事ではないと思うのですが……」

「アメリア…何を言っているのだ……。
もう、目覚めぬかと…思うと……。
頼むからもうこんな無理をしないでくれ……」

「アメリア…済まなかった。
私の力が足りないばかりに……。
戻ってきてくれて本当に良かった…」


そんな2人に抱きしめられている私は戸惑うばかりだった。
2人のこんな大げさとも思える反応をする理由が分からなかったのだ。

そして、何故こんなにも体が重いのかも。
いや、それは疲労感からかもしれない。
あれだけ動いたのだからそれくらいはあって当然だろう。
だが、それにしては筋肉痛などという痛みはどこにも無かった。


「あの、魔物達と戦ってから1年だ。」

「……え……?
1、年……?」


1年……。
それだけあればどこまで剣が上達するだろうか。
いや、そうではない。
1年、剣を振っていないという事は…技術も衰えているというわけで……。


「……アメリア…」

「……が……ければ……」

「……うん?」

「急いで体を動かさなければなりませんわ。
そんなにも剣を握っていなかっただなんて……有り得ませんわ…」


と、ベットから立ち上がろうとしたところで気付く。


「お母様!
腕は……」

「問題ない。
アメリアがギルドに転移させてくれただろう?
その後、マスターが持っていたエリクサーでな」


その声はとても不本意そうだった。


「…済まない、アメリア。
アメリアにもエリクサーを使ったのだが……」

「気にしないでください!
私はやるべき事をやっただけですから」


それでもお母様とお父様は申し訳なさそうにしていた。
それに私は困ったように笑うしかないのだが….。


「アメリア…お前には1年のハンデがある。
だから学園には行かなくてい…」

「え……」


地味に楽しみだった分、結構ショックだ。
……だが、確かに分かる。
1年……私が眠っていたというのであれば学園の入学試験までは残り1ヶ月程度だろう。
と、すれば……だ。
勉強も、剣も、魔法も全て間に合わない。
いや…魔法は何とかなるだろう。
勉強も1ヶ月あれば頑張れる。
だが、剣は……。


「アメリア…学園に行きたいか?」

「っ…行きたい……です。
ですが、勉強や魔法、剣も…全て挑戦してみてそれでも間に合わないと判断した場合には潔く諦めます」

「…そうか。
分かった。
剣は私が何とかしよう。
勉強は…1年前の時点で終わっていたからな…。
確認するだけにして出来なかったところだけ補足してやればいいだろう。
魔法に関しては…問題ないな」


お母様は応援してくれるらしい。
お父様はお母様の決断には逆らえないため渋々ながらも了承してくれた。


「ありがとうございます、お母様、お父様。
頑張って上達します!」

「そうか…。
アメリア、分かっていると思うが……。
やるならば…」

「最後まで諦めるな…ですよね、お父様?」

「…あぁ。
分かっているならばいい。
頑張りなさい」


お父様は優しく微笑んで私の頭を撫でると仕事に戻ってしまった。
部屋に残ったお母様は私のベットに腰掛ける。


「アメリア、明日…動けるようならば1度ギルドに顔を出しに行くか。
そして剣を持って行って何か依頼を受けよう」

「はい!」

「…私もそろそろ行くとしよう。
アメリア、今日だけは安静にしていろ」

「分かりました…」


お母様は少しだけ悲しげな表情をしてから部屋を出て行った。
……安静にしていろ、そう言われたため私はベットからゆっくりとおり、腕立てを始めた。
お母様の言う通り、安静に(この部屋で訓練を)することにしたのだ。

最初は両手でやり始め、200程度を終えたところで今度は右手と左手を100回ずつ交互に3セットやったところで休憩を入れることにした。

さすがに1年間寝ていたためか体力も落ちているようで依然よりも訓練をこなしていないのにも関わらず息切れを起こしてしまった。


「…これではお母様に追いつけませんわ」


私はあまりの悔しさに唇を噛み締める。
少しだけ血の味がした。
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