竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

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あの、婚約から1年たち私は冒険者になっていた。
お母様のランクはSS。
それに対して私のランクはA。
同年代では強い方らしいがお母様には全く叶わない。

いつもは1人で行くギルドへの道を私はお母様と共に2人で、いつになく緊張感のある表情で向かっていた。
Bランク以上からある強制任務。
それは滅多な事では出ないが今回、その強制任務が発令された。
そのため、私もお母様も緊張した面持ちで武装をし、向かっていたのだ。


「…女?
今は強制依頼があるんだ。
Bランク未満の奴の立ち入りは…」

「…おい!
馬鹿!
お前、知らないのか!?
その方はSSランクの戦火の天獄だぞ!?
それに、そっちの嬢ちゃんはAランクの白銀の騎士シルバーナイトだ!」

「なっ……あの戦火の天獄と白銀の騎士か!?」


お母様は気にした様子もなく、壁に寄りかかる。
私もお母様と同じように最後列でマスターの話を聞くことにした。


「皆に集まってもらったのは魔物大混乱が起こったからだ。
その数は約1万。
これをスカーレットの指示で討伐して欲しい!」


魔物1万……厳しいか?
ランクによって…か。
いや、お母様がいるから大丈夫だろう。
お母様が負けるところは想像出来ないし。


「押し付けるのは辞めてもらいたいものだがな……」


お母様は苦笑しつつも皆の前へと出た。
それに伴い所々からお母様を尊敬する声が上がっていた。


「さて、改めて私がスカーレットだ。
一応、ランクはSSになっている。
今回の魔物大混乱では指揮を勤めろと言われたが……そのつもりは無い。
私とアメリアだけで充分だからな」

「おい、スカーレット…流石にそれは……」

「過信しているわけじゃない。
アメリアはAランクだが……私に一撃を与えられる位には成長しているからな。
どこぞのSランクとは違ってな」


そんなお母様の言葉にアメリアって誰だ?
という声があがった。
……シルバーナイトなんて言われてるのに名前は知られてないらしい。
少し悲しくなってくる。


「そういう訳だ。
アメリア、行くぞ」

「はい、お母様」

「…お、親子ぉぉぉぉおお!?」

「しかも、あれってシルバーナイトじゃねぇか!」

「親子揃ってバケモンかよ!」


そんな声を聞きながらも私とお母様はギルドをあとにしその場所へと向かった。


「…お母様、よろしいのですか?
あの様なことを言ってしまって…」


ギルドの事を心配して問いかけるもののお母様は全く気にしていないどころか少し不満そうだった。


「あの程度の言葉で動かない奴らがいても邪魔なだけだ」


それも一理ある…。
そう思った私は頷き、先程よりもスピードを上げて走るのだった。


「アメリア!
分かっているな!?」

「はい!」


町の門を出たところで私とお母様は離れる。
そしてそのままお母様は魔物の軍隊の中へと1人で突っ込み私は町の近くでお母様が逃した魔物を片付ける。

魔物1万となると災害級として国が潰れかねないと言われているのだが……。
そんな事すら忘れてしまう程、お母様と私は2人で魔物を倒し続ける。


「ぐっ……!」


お母様の苦しそうな、痛みをこらえるような声が聞こえてきた。
普段ならば問題ないのだが…時期が悪かった。
この頃何故かお母様は体調を崩しがちだったのだ。

反射的にお母様を見ると腕が1本、舞っていた。


「え…お母様!-」


私は一直線でお母様のもとへと走り腕を奪っただろう魔物に対し切りかかる。


「よくも…よくもよくもよくも!!
お母様の腕を!!」


と怒りをぶつけるものの頭は冷静に動いていた。
私はチラリとお母様を見ると毒があったのか顔からどんどん色が無くなっていく。

幸い、残りの魔物は1000程度。
10分の1まで減っている。
これならば私1人でも……厳しいかもしれないがお母様をこれ以上戦わせる事は出来ない。
そう、私は判断した。


『時空魔法-転移-発動』


そして母だけをギルドに転移したところで私は魔物の軍を見る。
1対1000
こんな馬鹿みたいな数、本当ならば諦めて楽になってしまいたかった。
だが私の後ろには門がある。
街へと続く、大きな門が。
そこを通られたら街が壊される。
お父様が治める街が…住民が…暮らしが……。
全てが壊されてしまう。
何より…お母様の頑張りが無かった事にされてしまう。

それが分かっているのにここで引けるわけがない。
私は再び剣を構え直す。
切っ先に魔物に向けて。
無謀な戦いを終わらせるために。

最後に、私の逃げ道を塞ぐかのように


『防御魔法-範囲指定-結界型-同時発動』


と、結界型防御魔法を発動させた。
街を覆い尽くす、守りの壁を作りあげた。
準備が整ったところで私はお母様の様に笑みを浮かべた。
少しでも余裕を持つために。
私ならば勝てると、暗示をかけるために。


「アメリア・ヴェノム二つ名を白銀騎士! 
行きます!」


名乗りを上げて私は走る。
走って剣を振るう。
魔物が飛び散りその残骸が…血が私にかかる。
辺り一面に広がる真紅のカーペット。
その中心で私は一心不乱に魔物を殺す。
命を刈り取っていく。
その姿を目にした者は彼女をこう呼ぶだろう。

『鮮血の死神』

と。




どれくらいたっただろうか?
それでも終わることなく私はただ魔物の命を刈り取っている。
……まるで、死神のように。


「白銀騎士!
我等も参戦す……」


そんな声が聞こえた気がした。
だが、それでも私は件を振る。
私がこの街の最後の砦だから。
お母様の腕が無くなった原因を許せなかったから。
全てを無かった事にしたくないから。
そんな思いで私はただ、剣を振る。
白銀騎士…騎士ナイトというのであればそれは…持たざる者を守るための剣であり、皆を守るための盾であるのだから。



全てを倒し終わったと同時に、私はその場に倒れ込んだ。

理由は魔力の使いすぎと疲労。
そして何より…身の程に合わぬ力を使用した故の代償だった。


「白銀騎士!
良くやった!
お前が、お前……の街…守…た…だ…」


そして私は意識を手放した。
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