竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

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試験官の合図と共に横へと跳んだ私はカインと呼ばれた者の剣を受け流しつつ 隙を探す。


「ふははっ!
面白い!」


カインは戦闘狂とも捉えられる言葉を口にしつつもその剣は段々と早く、そして重くなっていった。


『強化魔法-全身強化』


カインがそう唱えた瞬間、剣の威力が倍以上に跳ね上がる。
それに思わず顔を顰めたもののすぐに対応し魔法を使用した。


『銀魔法-補強-纏い-発動』


私は素早く銀魔法を発動させ全身に鎧のように纏っていく。
だがそれは相手には分からないだろう。
何故なら纏ったと言っても薄く、しかも服の下なのだから。


「ぬっ!?」

「これで、終わりです」


私は跳躍するとそのままカインの背後をとり足を払うと首元にピタリと剣を当てた。


「なっ……カイン様はAランクだぞ!?」

「あの『暁の旅立ち』のメンバーが!?」

「なんだよあの子……」


そんな声が聞こえる中でカインは笑って立ち上がった。
そして私達は握手をすると自己紹介をしたのだった。


「俺はカインだ。
『暁の旅立ち』の前衛をやっている。
ランクはAだ」

「アメリア・ヴェノムです。
師は母、『戦火の天獄』スカーレットです」


私は貴族として軽く頭を下げる。


「アメリア…あぁ、何処かで聞いた事があると思っていたが……『白銀の騎士』か…」

「そう呼ばれる事もありますが……」


カインがボソッと呟いた私の二つ名に苦笑して答える。
白銀の騎士というのは私には合っていないように感じるのだからそれも仕方ないと思う。


「お前さん程の実力者なら『暁の旅立ち』に歓迎するぜ?」

「パーティー…ですか…。
学業に専念している間は考えませんが…。
卒業後、1年の間にお母様に追いつけなければお願い致しますわ」


冗談めいたように口にした言葉は私にとっての決意であり、たった1つの目標であった。
小さい頃からの夢。
それは私にとって何よりも大切な事なのだ。


「おう!
ま、頑張れや」

「はい、お母様に追いつけるよう頑張りますわ」


私は笑を浮かべると奥の第二試験場へと向かう。
そして、背後では『レオニード・ブシュベル』と名を呼んだ声が聞こえた。
どうやらレオニード様も戦闘科を選択していたらしい。

同じ戦闘科に進むとしたら面倒くさそうだと思いつつ、振り返る。
すると、苦戦していたようだがギリギリのところで負けてしまったらしい。
それでも合格の様でこちらに来る。
そして私を見つけたようで走りよる。


「アメリア、見ていたのか…」

「えぇ…まぁ。
名前が聞こえましたから」

「ここに居るって事は……」

「合格しましたわ。
第一試験は、ですが…」


Aランクに近いと言われているレオニード様だが負けた事については悔しいらしくいつもよりも元気がなかった。


「……あの方、カインはAランクですわ。
確かにレオニード様の力も至らなかったかもしれませんがAランクの者がそう簡単に倒されてしまってはギルドとしても、あの方としても不味いでしょう?
ですからこれでいいと思いますわ」


私は慰めるように口にしたものの私らしくないと心の隅で自嘲する。


「っ……。
だが、アメリアは勝ったんだろう?」

「当たり前ですわ。
私はSランクですわよ?
ランクが全てとは言いませんが、私には目標がありますもの。
ここで負けてはその目標に遠のいてしまうのですから勝つしかありませんわ」


私の目標は高いのだ。
あの、『戦火の天獄』、唯一のSSランク冒険者…。
そんなお母様の隣に立つには負けるわけにはいかない。
ただ、それだけだ。


「……俺は、お前に追いつく。
お前を守れる位に強くなる…」

「私の目標は、お母様の隣に立つことですわ。
この世界で二人目のSSランク冒険者となる事。
それが私の目標ですわ」


2人で自分の目標を言いあったものの私はレオニード様の言葉は頭に入ってきてはいなかった。
だからこそ、そう狼狽える事はなかったのだから。


「ですが…」

「だが……」


私達は互いの言いたい事が分かり、フッと笑った。
そして、二人して宣言した。


「「今は首席を目指します(す)」」


と。
堂々と宣言をした。
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