竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

文字の大きさ
11 / 69

10

しおりを挟む

私が目覚めてから約1ヶ月がたち、ついに入学試験の日が訪れた。

今まで頑張ってきた事、それはお母様やお父様にも無事認めて貰った。
だからこそ、今日ここで、私が入学試験を受ける事を認めてもらえたのだから。
特にお母様からは会場へ来る前に


『やるなら徹底的にやれ。
形だけのSランクでは無いという事を証明してみせろ。
信じているぞ、アメリア。
…私の愛しい娘よ』


そのお母様の期待に答えない訳にはいかないだろう。
それに私はSランク。
そう簡単に負けてはSランクとしての名と、私に剣を教えてくれたお母様、それにギルドの皆を裏切ることとなる。
こんなところで簡単に負けてはお母様に追いつくどころではないのだから。


「アメリア」

「レオニード様、お久しぶりです」


婚約者(仮)のレオニード様に挨拶をすると何故かこちらに寄ってきた。
きっと友人がいないのだろうと思わず同情の様な目になってしまう。


「おい、なんだその目は……」

「え、いえ……。
大丈夫ですわ。
きっとレオニード様の事を理解して下さる方がいらっしゃいますわ」

「おい、それは私の友人が少ないと言いたいのか?」

「はい…あ、いえ…いな…そ、そんな事ありませんわ」


つい正直に答えてしまった。
そのせいかレオニード様は私を睨みつけるかのように見つめてきた。
居心地が悪くなった私は思わず視線を逸らす。


「…もういい。
アメリア、お前はどの科を受けるんだ?
貴族院か?」

「あら、私がそんな科を受けると本気で思っているのですか?」

「…いや、そんな科ってお前も一応貴族の端くれだろうが……」


そう言われてようやく思い出すが確かに私も貴族の一人だった。

思い出せなかったのはこの頃勉強やダンスなんかよりも剣を降っている時間や魔法を使っている時間のほうが長かったからだろう。

だが、だからといって私が貴族院を選ぶかは関係ないと思う。
確かに貴族には貴族院を進めているがそれを選ばなければいけないという決まりは無い。
……まぁ、普通の令嬢であれば貴族院以外の選択肢は無いだろうが。


「私はヴェノム家に名を連ねる者ですもの。
ヴェノム家では貴族としての力よりも武力の方が重要視されますわ。
それに……私のお母様が誰だと思っているんですの?」


私の言葉にレオニード様は納得したのだろうが少し複雑そうな表情だった。


「21番、アメリア・ヴェノム!」

「はい。
では失礼致します、レオニード様」

「あ、あぁ…」


呆然としているレオニード様を置いて私は剣を腰にさしたまま中へと入っていく。
緊張はするがそこまでではない。
冒険者として活動をしている時よりは全然緊張していなかった。


「アメリア・ヴェノム、ヴェノム家長女、か。
この書類に不備がある。
書き直してくれ」

「不備、でしょうか?」


まさか、と思い私は首を傾げる。
そんな私に何を思ったのか見当違いの事を口にした。


「あぁ、希望の科が間違っているだろう。
これでは戦闘科になってしまう」


戦闘科で問題はないはずなのに、だ。
女禁制ということは聞いていないので問題ないと思うのだが。


「戦闘科を選びましたが…」

「…は?
……貴族院ではなく、か?」

「はい、私が選んだ科は戦闘科ですわ」


そうでなければこの学園を受けた意味が無い。
それだと言うのに試験官は笑い飛ばした。


「はははっ!
貴族が戦闘科だと?
それも男ではなく女が!
無理だ無理だ、やめておけ」


私は眉を潜め、どうするべきかと頭を巡らせる。
私はどうにかして戦闘科に入りたいのだ。
そして、お母様に追いつきたいのだ。


「…戦闘科の試験官は何方でしょうか?
その方を倒せば問題ありませんわよね?」

「くっ、くくっ!
あの人に勝つだなんて無理に決まってるだろう!
だが、いいだろう。
付いてこい」


私は大人しく試験官について行く事にし溜息をついて歩き出す。
試験早々、こんな事になるとは思ってはいなかったのだ。
分かってはいた事だが…女だからといって嘗めないでほしい。


「カイン様、もう1人お願いします。
カイン様に勝ったら…などと言っていたので本気でお願いします」

「お?
嬢ちゃんも戦闘科か?
…その髪、ヴェノム家か?
っつぅ事は…スカーレットの娘か」

「…それはどうでしょうか?」


私は意味深に微笑んだ。
バレては色々とめんどくさそうだっただけだが。


「まぁいい。
さっさと構えろ」

「はい。
手合せ、よろしくお願い致します」


私は頭を下げると試験官の合図と共に動き出したのであった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

答えられません、国家機密ですから

ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

敗戦国の元王子へ 〜私を追放したせいで貴国は我が帝国に負けました。私はもう「敵国の皇后」ですので、頭が高いのではないでしょうか?〜

六角
恋愛
「可愛げがないから婚約破棄だ」 王国の公爵令嬢コーデリアは、その有能さゆえに「鉄の女」と疎まれ、無邪気な聖女を選んだ王太子によって国外追放された。 極寒の国境で凍える彼女を拾ったのは、敵対する帝国の「氷の皇帝」ジークハルト。 「私が求めていたのは、その頭脳だ」 皇帝は彼女の才能を高く評価し、なんと皇后として迎え入れた! コーデリアは得意の「物流管理」と「実務能力」で帝国を黄金時代へと導き、氷の皇帝から極上の溺愛を受けることに。 一方、彼女を失った王国はインフラが崩壊し、経済が破綻。焦った元婚約者は戦争を仕掛けてくるが、コーデリアの完璧な策の前に為す術なく敗北する。 和平交渉の席、泥まみれで土下座する元王子に対し、美しき皇后は冷ややかに言い放つ。 「頭が高いのではないでしょうか? 私はもう、貴国を支配する帝国の皇后ですので」 これは、捨てられた有能令嬢が、最強のパートナーと共に元祖国を「実務」で叩き潰し、世界一幸せになるまでの爽快な大逆転劇。

放蕩な血

イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。 だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。 冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。 その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。 「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」 過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。 光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。 ⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

処理中です...