竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

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魔法を発動してから一瞬だけ、お母様が下がった。
いつもならばそこへと踏み入れたのだが今回は違った。
既に体が限界を迎えていたのだ。
眠りから覚めてまだ2日。
だが、どうしてもそれを理由にはしたくなかった。
その一心で私は動き続ける。
体が悲鳴をあげたとしても。
そんな事でお母様との手合わせを無駄にはしたくなかったから。

せめて、せめて一太刀でも……!


『防御魔法-発動』


いくつか小さめの防御魔法を発動させる。
その位置は階段のように下から上へと上がっていく。


『オリジナル魔法-銀-発動』


オリジナル魔法…それは私特有の魔法だ。

お母様ならば『煉獄』というオリジナル魔法を持っている。
私の場合は銀魔法だ。
これは色々と使い道がある。
銀細工にして売るのもいいし、このように…鏡のように私の姿を反射させることも出来る。
これは銀と名のつくものであればいくらでも生み出せるし、操れる。
それがこの『銀魔法』だ。

まぁ、色々と制約はあるが…。
それに、生み出すよりも操るほうが魔力の消費は少ない。


『オリジナル魔法-銀-剣-発動』


私は銀で刃のない剣をいくつか作るとそのままお母様に向けて放つ。
私はそのまま飛び降りると剣を振りかざした。


「…甘い!!」


お母様は私の持っていた剣を跳ね返すと私の魔法で作った剣をも弾き飛ばした。
だが、1つだけ…誤魔化しで作った矢のみが気付かれずにお母様へ当たった。


「っ…はっ!」


お母様は矢を切り裂くと私の首へと剣を当てた。


「勝負あり!
勝者、スカーレット」


また、負けた。
だが、お母様に当てることが出来た。
少しお母様に近付けた、そんな気がして嬉しく感じる。


「アメリア、成長したな…」

「ありがとうございます、お母様。
お母様に追いつけるよう、頑張ります」


憧れであるお母様に褒められたことで私は更に頑張らなければ…という思いにさせられる。
そんなお母様は確かに私の師であり母であるのだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アメリアとスカーレット様の戦いは私の想像していた以上のものだった。


「ランクが3つ違うのにな……」

「何言ってんだ?
アメリア、あいつはSランクだぞ?」

「な……」


アメリアはそんな事、一言も……。
私はずっとBランクだと…。
いや、待て。
アメリアは朝、『私が先にランクを上げる』などと言ってはいなかったか?


「…アメリアは、SSランクになる力が……?」

「いや……。
今のアメリアは、Sランクの上位ってところだろうな。
だが、アメリアは1年のブランクがあるうえ、白銀騎士とも呼ばれてるくらいだ。
あいつはまだまだ強くなるぜ?
俺もスカーレットもそれを確信してる。
…いや、あいつの剣を見た奴は誰だってそう思わされる。

それ程までにアメリアは凄い」


私は…アメリアの婚約者としてAランクになれる、それで満足していた。
なのに…私はアメリアに追いついてすらいなかったのだという事を今更ながらに理解した。

アメリアは私には使えない魔法を駆使し、更に剣も扱いSSランクのスカーレット様に向かっていく。
その剣筋は真っ直ぐで、彼女の心を表しているような気がした。
真っ直ぐで、キラキラと眩しいくらいにり輝くアメリアを…々。

最後に、アメリアが銀魔法を使った時……私は心から彼女に負けていると、劣っているとそう思った。


「……私は、あの日から何も変わってはいなかったのだな…」


そう。
あの頃から何も変わらない。
私はアメリアに好意を抱いている。
だが、アメリアは私の事など何とも思っていない。

…私はアメリアよりも時間があったはずだ。
なのに、アメリアには追いつけていない。


「……私は、相応しくある」


そう。
そのために強くなろうと思ったのだから。
彼女を守れるくらいに強くなりたかったから。
だから剣を始めたし、以前よりも魔法に力を入れた。

それでも私はまだ追いつかない。
だが、私は諦めたりはしない。
お前を離す気はないのだから。
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