17 / 69
16
しおりを挟むそして、私とマスターは今、闘技場で向かい合っている。
既に合図はされているが双方一歩も動くことなく相手の出方を待っていた。
先に動いたのは私だ。
無詠唱のため少し時間はかかったものの氷のナイフを3本服の中で作り上げていた。
そのうちの1本をマスターに投げると同時に斜め後ろへと下がる。
カンッという氷のナイフが弾かれたような音が聞こえると次の瞬間、マスターは強化魔法を自分にかけ、私に迫ってきた。
「本気なんだろう?
なら、アメリア。
君も使いなよ」
私はそんなマスターの言葉を聞きながら、防御魔法を踏み台にし上空へと旅に出る。
『オリジナル魔法-銀-槍-発動』
私は銀魔法を発動させ槍を数本作り出すと持ち前の器用さで槍を操りながらも剣で追いつめていく。
「さすがに手強い….か!」
マスターは吐き捨てるように口にすると勝負を決めようと先程とは比べ物にならないような速度で私に迫ってくる。
私は、マスターの攻撃を受け流すとそのまま槍を使いマスターの武器を跳ね返し首元へと剣を突きつける。
「勝負あり!
勝者、アメリア!!」
私はフッと息をつくと発動していた魔法を消し、マスターにお礼を告げた。
「うぉぉぉぉ!!
あのマスターをやりやがった!!」
「Sランクを倒した!?」
「あんな年端もいかない女の子が!?」
そんな歓声に私は思わず苦笑を漏らす。
「遅くなったけど…アメリア。
Sランク昇格、おめでとう」
「っ……ありがとうございます」
そんな会話のせいかまた、ドッと声が上がる。
その声は私のランクについてだ。
不正をした、などと言う者がいないのはマスターとの勝負に勝ったからだろう。
「そう言えばアメリアは学園に入学するんだっけ?」
「はい。
無事、戦闘科に合格出来ましたわ」
「さすがアメリア。
応援しているよ」
「ありがとうございます」
私は笑みを浮かべてお礼を言った。
それは、合格出来たという実感と応援されているという事の2つが嬉しく、学園生活が楽しみだったからだ。
「あ…マスター、少し相談があるのですが……」
リアンの事について許可をとるのを忘れていたのだ。
ギリギリで思い出して良かった。
「うん?
あ~、じゃあ個室に移動しようか」
「お願い致しますわ。
…レオニード様も一緒に宜しいでしょうか?」
レオニード様を放っておくのも悪いと思っての事だ。
普段ならばあまり気にしないのだが。
「いいよ。
サニア、聞き耳をたてないようにね?」
「うっ……わ、分かっていますよ!」
私達はマスターの執務室へと移動をするとすぐに話を切り出した。
「マスター、私の契約獣が王都に入れるように許可証の発行をお願いしたいのですが……」
「契約獣?
アメリアの、ねぇ……?
考えない事もないけど……。
とりあえず種族は?」
「竜種です」
「そう。
竜種の……って……え?
竜種……竜種!?」
マスターは何度か竜種と繰り返した後、腰を浮かせた。
そして咳払いをしてから座り直すと先程よりも真面目そうな表情になった。
「竜種…許可は出せない事もないけど…。
色は?」
「白…ですね」
「いや、あれは銀だろ」
私は白混じりの銀という普通ではない、変異種のようなリアンの片翼を思い浮かべた。
白銀の翼と薔薇の模様を……。
「よりによって……まぁいいか。
アメリアだしね……。
1時間後にまた来てくれれば許可証を用意しておくよ」
「本当ですか!?
ありがとうございます!!」
その後、私は1時間待ち、無事許可証を手に入れる事が出来たのであった。
そしてそれから私の頭の上か腕の中には余程の事がない限り白銀の竜可愛らしい竜がいるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
答えられません、国家機密ですから
ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。
敗戦国の元王子へ 〜私を追放したせいで貴国は我が帝国に負けました。私はもう「敵国の皇后」ですので、頭が高いのではないでしょうか?〜
六角
恋愛
「可愛げがないから婚約破棄だ」 王国の公爵令嬢コーデリアは、その有能さゆえに「鉄の女」と疎まれ、無邪気な聖女を選んだ王太子によって国外追放された。
極寒の国境で凍える彼女を拾ったのは、敵対する帝国の「氷の皇帝」ジークハルト。 「私が求めていたのは、その頭脳だ」 皇帝は彼女の才能を高く評価し、なんと皇后として迎え入れた!
コーデリアは得意の「物流管理」と「実務能力」で帝国を黄金時代へと導き、氷の皇帝から極上の溺愛を受けることに。 一方、彼女を失った王国はインフラが崩壊し、経済が破綻。焦った元婚約者は戦争を仕掛けてくるが、コーデリアの完璧な策の前に為す術なく敗北する。
和平交渉の席、泥まみれで土下座する元王子に対し、美しき皇后は冷ややかに言い放つ。 「頭が高いのではないでしょうか? 私はもう、貴国を支配する帝国の皇后ですので」
これは、捨てられた有能令嬢が、最強のパートナーと共に元祖国を「実務」で叩き潰し、世界一幸せになるまでの爽快な大逆転劇。
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる