竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

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1体のウィルムの討伐を終えた私はチラッとラン先輩を伺った。
ラン先輩はあの回復力に少し苦戦しているようだったがラナス先輩とロイド先輩の援護もあり無事勝利を収められそうだった。


「アメリアはもう勝っ……なんだこれ!?」

「私の剣が折られてしまったので少々、その腹いせにやらせていただきましたわ……」


私はやり過ぎたような気もしていたので段々と声が小さくなっていく。
そんな私にレオニード様はボソッと呟いた。


「腹いせってレベルじゃないだろ」

「レオニード様、何か仰いましたか?」


私が笑顔で問うとレオニード様は慌てて「何でもない」と口にしたのであった。


依頼が終了したので私達グループは再び竜の背に乗り王都へと戻る。


「アメリアさん、どうかなされましたか?」


ギルドに入るなり私は受付嬢にそう聞かれる。
私は苦笑しながらも依頼完了の報告とウィルムについて話すとマスターの部屋へと通される。

その状態に私はうんざりとする。
何故、この短期間に私はマスターの部屋にこう何度も入っているのだろうか、と。


「お疲れ様。
で、ウィルムについてだっけ?」

「あぁ。
ワームの群れに2体混じってたぜ。
一応、倒したが…」

「……ウィルム、ね。
…分かった。
こちらでも少し気になる事があるから調べておこう」


マスターはそのまま考え込んでしまった。
その辺り、他にも同じ様な事例でも起こっているのではないだろうか?


「あ、そうそう。
強化合宿、頑張ってね~」


私はどこか腑に落ちないものを感じながら学園に戻り明日に備える……とは行かず、換えの剣を探しに武器屋を回る事にする。


「アメリア、少し渡したいものがあるんだが……」

「私に、ですか?」


私はギルドを出る前にレオニード様に呼び止められる。
レオニード様はいつもとは違い、口元に弧を描いていた。


「あぁ」

「んじゃ、3時間後に寮の食堂集合な!」

「わかりました。
お気遣いありがとうございます」

「はい、では、失礼致しますわ」


ギルドを出て、私とレオニード様は路地へと進んでいく。
迷いなく進んでいくレオニード様に対し、私は段々と不安が出てきた。

渡したいものがある、そう言われたのにも関わらずこんな薄暗い路地裏へと進むのだから当たり前だろう。


「レ、レオニード様……?
あの、どちらへ……?」

「…それは…もう少し後に分かる。
不安かもしれないが、私を信じて欲しい」


その不安の混じったレオニード様の声に私は言葉を返すことが出来なかった。

そんなにも不安げに言われたら信じるしかないじゃないか。
そう思いつつ、私は、はぐれない様にとレオニード様の手をとった。


「え……?
ア、アメリア!?
な、なな何を……」


慌てるレオニード様がおかしくて私はついつい笑みをこぼす。
すると、羞恥からかレオニード様は顔を赤くした。


「レオニード様、私を迷子にするおつもりですの?」

「あ……いや、そ、そんなつもりでは……」

「分かっていますわ。
ですから、はぐれないよう、お手をおかりいたしますわ」

「あ、あぁ……」


慌てていたレオニード様を思い出し少しだけふふっ、と笑ってしまう。
するとレオニード様は困ったような、だがどこか嬉しそうでもある笑みを零した。


「……あぁ、ここだ。
すいません、レオニードですが……」


路地裏まで連れていかれ、ついた所は鍛冶屋だった。
こんなところまで来て一体どうしたのだろうか?
剣か何かの修理か……そうとも思ったがどうやら違うらしく私はレオニード様に手招きされた。


「アメリア、鍛冶師のターナイトだ。
ここら辺では、結構腕が良いと評判の鍛冶師なんだ。
ターナイト、こいつはアメリアだ」

「アメリアと申します。
よろしくお願いいたしますわ」


私はレオニード様の紹介に合わせ、優雅に挨拶をする。
家名を口にしなかったのは貴族として驕っていると思われたくは無かったからだ。


「ターナイトだ。
…平民だがな。
それに…ここは嬢ちゃんみてぇな奴が来るところじゃな…」


私はターナイトの話を遮りその奥にある剣を見た。


「わっ……あの剣、綺麗ですわ……。
あの剣を打った方の心が込められているのが良く分かりますもの……。
それに、あちらの槍も……。
この武器を打った方は相当な腕ですわね……。

レオニード様、このような所を知っていたのならもっと早く紹介していただきたかったですわ」


私が口を尖らせて文句を言うとレオニード様は苦笑した。


「仕方ないだろう。
紹介しようと思っても時間が合わなかったんだ。
授業が終わると練習を始めるし、前回の休みは1人で依頼を受けに行っていたりしていただろうが」

「そ、それは……そうですが……」


私は思わず視線を逸らす。
そしてそんな私達のやり取りを見ていたターナイトは声を上げて笑い出した。


「ハハハッ!
嬢ちゃん、面白ぇじゃねぇか。
俺が平民だって気にしねぇのかよ」

「あら、平民か貴族かの違いは役割の違い、ただそれだけですわ。
それなのに貴族や平民で分けられるなど…本来ならばあるべきではないと思いますし。
……それならば私も冒険者として生きていけますのに……」

「そんなこと言った奴は初めてだぜ!
あんたにならコイツを渡してもいいぜ。
レオニード、お前から渡してやれよ。
元は、お前からの依頼だからな」
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