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しおりを挟むついに私の番が回ってきた。
そのためワームを10体ほど残し残りの30体程呼び寄せてみた。
すると、地の底からうじゃうじゃと出てきて気持ち悪く多少、後悔をしたもののすぐに作業へと取り掛かる。
これくらいの数が多いだけの敵であれば魔法を使う必要はない。
そう判断し、剣のみで黙々と討伐を続けていく。
そして半分程倒した辺りでトール先輩から声がかけられる。
「アメリアさん、出来たら何か魔法使ってください!
魔法の精度も確認したいので…」
「分かりましたわ!
少し離れていてくださるとありがたいのですが……!」
私は声を上げるとワームから剣を抜き、バックステップで後ろへと下がる。
そして、剣を仕舞うと私は魔法を唱えた。
『属性魔法-風-水-剣-舞え』
風と水による剣がいくつも形成されそのままワームの群へと舞うように飛んでいく。
そして、全て倒し終わったところで魔法は解除されワームの死体だけが地に残った。
「この様な感じで宜しいでしょうか?」
「……魔力は大丈夫なのか?」
重そうな口を開いたのはロイド先輩だった。
あまりロイド先輩とは話していなかったので少しだけ驚いたがすぐに気持ちを切り替え笑顔になった。
「御心配ありがとうございます、ロイド先輩。
ですが、問題ありませんわ。
魔力の消費を抑えるために威力も規模も下げましたので」
「……………あれで?」
何故か驚かれているようだ。
……2属性を使ったからだろうか?
そんな先輩達を置いてレオニード様は私に問いかけてきた。
「アメリア、どうせ他にも残しているんだろう?」
「勿論ですわ。
残り10匹程…いえ、正確には17匹ですが…呼び寄せますの?」
私は魔法を弄りながら問い返すとロイド先輩は少しうんざりした様子で呟いた。
「…まだいたのか……」
「トール、どうする?」
戦術科のトール先輩に指示を仰ぐことにしたようだ。
ラン先輩もラナス先輩も先輩後輩関係なく考える人だからこそだろう。
トール先輩は少し考えてから指示を出した。
「……当初の目的であった連携の練習を少しやってみます。
前衛は、ロイ、アメリアさん、ラン先輩がお願いします。
中衛にはレオニードさんと僕が。
後衛はラナス先輩の担当にします。
レオニードさんは魔法で援護しつつ、もらしがあれば対処をしてください。
ラナス先輩は遠距離からの援護をお願いします。
前衛の3人ですが…基本はラン先輩とアメリアさんに戦って貰うことになります。
ロイは緊急時の対応という事で体力を残しておいて貰いたいので」
私達は自分の役割を理解すると、頷き、ワームの群の到着を待つ。
だが、私はチラッと片手に握った剣を見た。
今の剣は安物のためだ。
前に使っていた剣は修理とメンテナンスのため手元に無かったので仕方なく代わりとなる剣を購入したのだが……そろそろ限界が近いらしく軋んでいる様な感じがするのだ。
補強も既にかけてあるためこれ以上の魔法はかけられない。
かけられても時間がかかりすぎるため私は諦めワームの群の到着を待つ。
それから少ししてワームの群が到着した。
土から頭だか尻尾だかをだし蛇の大軍のようにしているその姿は何度見ても気持ち悪い。
そんな感情を押し殺し援護を受けつつラン先輩と共にワーム達を切り捨て、薙ぎ払っていく。
全て倒し終わった、そう思った時だった。
先程切り捨てたはずのワームの何匹かが異様な回復を見せた。
「なっ……!?」
ラン先輩の驚いた声が聞こえる。
そしてその回復力を見たエデンが叫ぶ。
「……主!
分かってはいると思うが……」
「ウィルム、でしょう?」
「うむ」
ウィルムはワームの上位種と言われてはいる魔物だ。
外見はワームと同じようにしか見えないのだが、その驚異的なまでの回復力から冒険者の間では恐れられている。
ある意味ではゾンビやグールよりも厄介だと言われている程だ。
その回復力からワームが通常、個体ではC~Bランクなのに対し、ウィルムはAランク以上、Sランク以下と言われている。
そしてそんな奴が2体。
「アメリア、俺が左の奴をやる!
お前は右をやれ!」
「はい!」
元気よく返事をしたものの私は正直、分が悪いと感じていた。
以前ならば喜んで行っただろうが今は剣が使えない状態になっていて、 しかも本調子ではない。
危険だった。
だが、ここで諦める訳にはいかない、その一心で私はウィルムに切りかかる。
「っ……硬くなっていますわ…!」
その皮膚は先程切り捨てた時よりも数倍硬くなっていて私の剣があまり効いていないように感じた。
グルガァァ!
ウィルムが襲いかかり、私がその攻撃を剣で弾いた時だった。
剣が、ポキリと、いとも容易く折れてしまった。
宙に舞う折れた剣の片割れが落ちていくのが不自然なまでにゆっくりに感じた。
次の瞬間、わたしの口元には笑みがうかんでいた。
「ふ、ふふっ……ふふふっ……。
いいですわ。
私の剣を折った事、後悔させて差し上げますの」
私は俯きながらも力強く、怒りのこもった声を出した。
『オリジナル魔法-銀-結晶型-発動』
結晶型。
それは、私のオリジナル魔法、銀魔法で1番凶悪であり、1番、使うことのない魔法であった。
そんな魔法を何故、今使ったのか。
それは、私が軽くキレていたからだ。
そしてこの魔法の嫌なところはじわじわと銀がまとわりつき、固まっていくところ。
銀による結晶化。
それがこの魔法だ。
何より、この魔法ではかけられた者の自我が残る。
そして緩やかに死を迎えていく。
だが、この結晶が剥がれる事は私がこの魔法を解除しない限り決してない。
つまり、だ。
自分の身体が段々と結晶と化していくのを見ながらも決して逃げられず、簡単に死ぬ事も許されない。
ウィルムという魔物であれば長い時間をこの結晶の中で過ごしていく事になるのだ。
だが、私にも慈悲はある。
今回はちゃんと臓器まで結晶になるようにしてあげた。
そうすることにより早く死を迎えることが出来るのだ。
「ふふっ……私の剣を折った罰ですわ。
そこで一生、反省していなさい」
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