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しおりを挟む「レオニード様、私はそろそろ戻りますわ」
「まだ1分程度しか休んでないだろう……」
レオニード様の呆れたような声を聞きながら私は首を傾げた。
「1分も休みましたわよ?」
お母様のメニューでは休憩はあっても10秒程度だったこともあり、1分も休めば大抵の疲れは取れるようになっていた。
「休憩に誘っていただきありがとうございました」
きっと誘われなければ休憩など取らなかっただろうと思いお礼を告げるとレオニード様はどこか照れた様子で私の隣を歩く。
「レオだ」
「はい?
レオニード様、どうかなされましたか?」
「だから、レオと呼べと言っているんだ」
そんなレオニード様らしからぬ言葉に私は思わず足を止めた。
まさか、あのレオニード様が愛称で呼べと言うだなんて……。
「レオニード様?」
「レオだ」
どうしても愛称で呼ばせたいらしい。
「……レオ様」
「様は要らない」
レオニード様の無言の圧力に負け、私は愛称で呼ぶことにした。
「……レオ」
「何だ?」
「はぁ……私の事はリアでいいですわ」
「分かった、リア」
こうして不本意なかまら愛称呼びになったわけだが……。
いずれ婚約破棄をしようと考えているのに……などと思ってしまう。
「リア?
どうかしたか?」
私が黙って立ち止まっていたせいかレオが振り返った。
その表情は私を心配しているようで申し訳なく思いながら「何でもありませんわ」と答えると歩き出す。
「リア、何かあったらすぐに言え。
私が対処しよう」
「…自分で出来ますわ」
「何でも1人で抱え込むな、と言っているんだ」
「1人で抱え込んでなどいませんのでご安心を」
レオの言葉に私は全て素っ気なく返すがそれを気にする素振りもなくレオは苦笑をもらす。
何故、そのような表情をするのかが分からない。
レオは私の事が嫌いなはずなのだから。
私と婚約破棄をしたいのは向こうも同じなのだから。
「……やはり、わかりませんわね」
私は天を仰ぎそう呟くと再び木刀を握りカカシに対して打ち込み始める。
ボキッと音が聞こえたかと思うと手加減をしていたはずにも関わらず折れていた。
「………えーと……」
「どうした、何が……」
私の方へ教官が走ってくると、カカシを見てから私に咎めるような視線を送ってくる。
「も、申し訳ありません!
ちゃ、ちゃんと手加減はしていたのですが……」
「…名前は?」
「アメリア・ヴェノムと申しますわ」
私が名乗ると教官はお前が……などと呟く。
私が何かしただろうかと考えるが身に覚えがありすぎた。
エデンの事とかリアンの事とか…それと、リーシャやお母様とか……。
「よし、いいだろう。
アメリア・ヴェノム、お前は特別メニューだ。
物足りなかっただろう?」
「はい、もう少し厳しいと思っていまし……」
私はそこで自分の失敗に気付いた。
だが、既に遅かった。
「そうだな…。
現時点で終了している者は挙手!」
挙手したのはレオニード様と私を抜いて6名程だった。
そのうち2名は既に体力の限界が近いようではいたが。
私とレオの他に1年は1人だけだった。
「その7名とアメリア、お前ら8名は特別メニューだ。
ついてこい!」
特別メニューという言葉に私とレオは首を傾げながらも先輩達と教官について行く。
その前に、もう1人の倒れている同級生へ簡単な治癒を使い疲労を消してあげると3人で一緒に向かった。
「あ、ありがとうございます。
僕は、カナン・エンデールといいます」
「私は、アメリア・ヴェノムと申しますわ。
よろしくお願い致します」
「私はレオニード・ブシュベルだ。
よろしく頼む」
少し気弱な性格をしているらしいカナンさんだったが黒のバッチということに驚いた。
だが、確かにこの時間で終了しているのならば黒で間違いないだろう。
などと思いながら私達は特別メニューを受ける事となった。
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