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婚約ですか?
しおりを挟むさて、今私は何処にいるでしょう?
……答えは王宮だ。何故こうなっているか?
それは勿論、プレートが原因だ。あの駄神め!
「……ふむ、話は分かった。だが、知っているだろう。
ライトも居るのだ」
つまり、私を保護する時間などない、と。そういう事なのだろう。
「というのが、王としての答えだ。
という事で、カインかライトとの婚約を条件に、というのであれば庇護下に置こう」
「アルド……」
「トゥールの子だからな」
アルドというのは国王の名で、トゥールは私のお父様の名前だ。
どうやら二人は仲が良かったらしい。
「フィーは嫁にはださん!」
「お父様!?」
「トゥール、お前な……」
お父様の返答に思わず呆れ顔になる国王。
気持ちは分かる。親馬鹿と言いたいのだろう。
「フィーは一生嫁に出さんぞ!
少なくとも私が生きている限りはな!」
「はぁ、分かった分かった……。
嫁に出す出さんは置いておくとしてもだな、婚約者にはなってもらうぞ。
そうでなければこちらも動けんからな。それと、中央魔法学園の試験を受けてもらうぞ」
「チッ、仕方ない。フィーの安全が保証されるのなら、な。
だが! 婚約だけだ。嫁には出さないからな!」
とは言いつつも目が座っていたのは気の所為だろうと思いたい。
「どちらの婚約者にするか、だが……同い年のライトの方が良いだろうな。
まだ公表はしないが決定だ。……まだ時間はあるようだな。
ライトに会っていくといい。トゥールはまだ話がある」
との事で私はライト様に会う事になっていた。場所は中庭だ。
この中庭にいると余計に日本では無いのだ、と思い知らされるようで寂しさがこみ上げてくる。
「えっと、フィオナ様……ですか?」
「はい、フィオナ・ランドウルムと申します」
綺麗な白い髪に王族を示す金色の瞳。
一目でこの方がライト様なのだとわかる。
「ライト・ルーマニルスです。ライトと呼んでください」
かっこいい、というよりも麗しい、可愛い、という様な雰囲気を持つ人だった。
「私の事はフィーと。親しい人は皆、そう呼びますので」
私は銀髪でライト様は白髪。髪色だけなら似ている。
「ライト様も秋の編入試験をお受けになるのでしたよね?」
「はい。僕も、という事はフィーも…?」
「はい。無事学園に入学出来るよう、一緒に頑張りましょう」
「はい!」
天使の様な、と言われそうなライト様の笑顔に思わず可愛いと思ってしまう。
男の子を相手に、だ。
同性ならばともかく!!
何やら負けた様な気もするが知らないふりをしておこう。
「フィー、帰るぞ。殿下、娘のお相手をして頂きありがとうございました」
どうやら時間切れの様だ。少し名残惜しい気もするが仕方ない。
私は席を立つとお父様に近寄り、ライト様に頭を下げた。
「あ……。いえ、僕も楽しかったですから。
また機会があればお話させてください。……フィー、またね」
「はい、ライト様。またお会いしましょう」
私達の様子を見ていたお父様は少しだけ眉を動かし、何ともなかったかのように私を連れて立ち去ったのだった。
~ライト~
僕はまた貴族の令嬢と話さなければいけないのか…とうんざりしながらもその子が待つという中庭へ向けて歩いていた。
僕は神大魔法の使い手という事で早々に婚約者を決めるらしく今回のように色々な令嬢と会って話をさせられるのだ。
そんな貴族の令嬢達は皆一様に我儘で面倒だった。だから僕は貴族が嫌いになった。
だが、その日会った令嬢は違った。
僕と同じ様な色合いの髪に透き通る様な紫の瞳。
僕と同じくらいの歳のように見えるのにその動作は洗練されていて今まで会って話してきた人達とは違うと、そう感じた。
実際に話してみるとその感覚はさらに広がり今まで苦でしかなかった会話が楽しく感じた。
「ライト様も中央魔法学園をお受けになるのでしたよね?」
という言葉に僕は驚愕と歓喜が入り交じったような感覚に襲われる。
も、という事はきっと彼女も受けるのだろう。
「無事学園に入学出来るよう、一緒に頑張りましょう」
その言葉と共に見せた彼女、フィーの可愛らしい笑みに僕はつられるように微笑んだ。
多分、その時からフィーは僕にとっての『特別』になったんだと思う。
いつか婚約者を決めなければいけない事は分かっている。
その婚約者が出来るなら、フィーだったら……と思うほどに。
「ライト、お前から見てフィオナ・ランドウルムはどうだ?」
「彼女は、可愛らしい方だと思います。
純粋で、綺麗で……とても同い年には見えないくらい動作が洗練されていました」
それがこの短い時間で感じた僕のフィーに対する純粋な評価であった。
「そうか……。ライト、お前の婚約者が決まった。
フィオナ・ランドウルムだ。公表はまだ先になるがな」
「フィーがですか!」
僕は歓喜した。まさか、こうも早く叶うだなんて思っていなかったから。
あのフィーが僕の婚約者になる……。
それだけで今まで以上に勉強や魔法、剣にも力を入れられる気がした。
そして、それと同時にフィーに早く会いたいという想いがこみ上げてくる。
あの不思議な雰囲気を纏った可愛らしい彼女と会うために僕は残り短い試験までの勉強を頑張ろうと改めて決意を固めるのだった。
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