転生したようです?

紗砂

文字の大きさ
6 / 7

入学試験です!

しおりを挟む
いよいよ入学試験の日となった。そのため、私は辺境からこの王都へと来ていた。

それにしても昨日は大変だった。ライト様が突然家に来るし。
そのせいで使用人たちが大騒ぎだった。

お父様やお母様、お兄様なんかは動揺の色など見せなかった。


結局色々と話をするだけに終わったのだが……。
まぁ、いいや。今はこれから始まる入学試験の事に集中しよう。


「フィー」

「フィー、久しぶりですね」


試験会場で私の名を呼んだ人はやはり…というべきかライト様だった。
もう一人は少し前に知り合ったケヴィン様。
宰相様の子供で父同士の仲がいいのだ。
そのせいか、私達はよく三人でいる事が多かった。


「ライト様、ケヴィン様」

「フィー、入学試験頑張ろう」

「はい。三人で合格出来る様に頑張りましょう」


昨日の続きを話しているとそれぞれの会場が開き、私達は一旦別れ筆記試験を行った。


筆記の問題は意外と簡単なものが多くスラスラと書き進めて行くことが出来た。

次に行う実技の試験はライト様と同じく平地で行う事になった。
番号的にはライト様が前だったので実技も私より先に行う。ケヴィン様は別の会場だ。


「ライト様、頑張ってください」

「ありがとう、フィー」


ありきたりな言葉ではあったがライト様は嬉しそうなので良しとする。


『我、神の力を受け継ぎし者。神々の代行者なり。
制約に基きここにその力を示せ』


神大魔法、ライト様のみが持つこの魔法は平地に大きなクレーターを作り出した。


「これ程とは……」


と試験管が感心、恐れなどの感情を見せる一方で私は笑顔でライト様を労った。


「ライト様、お疲れ様でした」

「フィー……。怖くないの? 僕は……」


ライト様は自らの力を恐れているようだった。
そんなライト様に私は何ともないように口にする。


「怖くなんてありませんよ? ライト様なら悪用しないと思いますから」

「そ、そっか。ありがとう。あ、フィーも頑張って!」

「はい、ありがとうございますライト様」


私はライト様の応援を受けて前に出ると魔法の詠唱を始めた。
多分、この力がなければライト様の力に対する少しくらいの怯えはあっただろう。
だが、この力があれば問題ないように感じたから。だから私は怯えなくてすんだのだ。


『我、ここに願い奉る。我が願いはこの地の修復。
全ての痕跡を拭いて元の在りし日の姿へと戻す事。
我が光は癒しの光。さぁ、輝いて。奇跡を起こす金色の力を今ここに』


と、優しい声が大地に響き渡る。体から金色に輝く魔力が流れ、銀色の髪を金色に変えていく。

そして、光は大地を癒しいつかの緑を甦らせる。大きなクレーターをも消し去り木々や花々が咲き乱れる。
その光景はまるで女神のようで、まさしく奇跡の光だった。


「綺麗……」


それは一体誰が呟いた言葉だったか。それは分からないがこれだけは分かる。
これは『奇跡』だと。紛れもなく神の域に入った者の所業だと。

だが、この光景を作り出した当の本人は何ともないように戻っていった。

事実、この魔法を使った後の私は何の異常もきたさなかった。何故か。
それは、大地の魔力を使用したからだ。
大地を甦らせるその代償を永年そこに溜まってきた魔力で代用したのだ。

そのため体には何の異常もなく、どこかにあるとすればそれはすり減った精神力だけだった。


「ライト様、どうかしましたか?」


私は呆然と変わり果てた自然の姿を見ていたライト様に問いかける。


「フィー、お疲れ様。すごく綺麗だったよ。
……羨ましいくらい。僕には、破壊の力しかないから」


悲しげに笑うライト様に私は微笑んだ。


「ありがとうございます。ですが、ライト様の力も十分誇れるものだと思います。
『強大な力は破壊しか生み出さない』
昔、誰かがそう言いました。ですが、私はそうは思いません。
例え、強大な力を持っていたとしてもそれは持つ者によって変わります。
破壊か、守護か。私にはとてもライト様が破壊を選ぶとは思えません」


驚愕に目を見張るライト様に私は尚も言葉を続けた。


「それにもし、破壊しか生み出さないというのなら、私が変えます。
私の力は奇跡を生み出す力ですから。可能性は無限にあります。
どの可能性を掴むかは本人次第……。今が無理ならば今から変えていけば問題ありません!」


最後のは私の持論だ。未来なんて何も分からないがこれだけは分かる。
自分の未来を決めるのは自分自身だと。過去は変えられないが未来は変えられるのだ。
だから今の自分の力にそう悲観することは無い……と、私は思う。


「ありがとう、フィー。……僕は、フィーを守れるようになるよ。
フィーが言ったように誰かを守るための力として使っていく。
そして、フィーに相応しくなれるように頑張るよ」

「はい!」


最後、変な言葉を聞いた気がするが。きっと気の所為だろうと思うことにした。


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

処理中です...