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友人……らしい?
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次の対戦校はフリケットの魔道学園だ。
それに勝てば、イラ達と戦うことになる。
私は意外にもイラと戦うことを楽しみにしていた。
「お姉ちゃん、また何か企んでるでしょ!」
「ルー、またですの?
やりすぎるのはやめてください」
「私が何かやる前提!?
ただ、これが終わったらイラと戦うと思っただけだよ!!」
失礼な!
と怒る私にリマとエリーは顔を見合わせて笑った。
そんな2人を見ていると、まぁいっか。
と思ってしまうのが不思議だ。
『さぁ、団体戦も終盤!!
フリケット魔道学園とリリーシア魔法学園の勝負だァァァァ!!
フリケット魔道学園はこれまで確実に勝負を決めてきた!
対してリリーシア魔法学園は瞬殺で決めているぅぅぅぅ!!
今回もリリーシア魔法学園が瞬殺するか!?
それとも、フリケット魔道学園に流れを止められるのか!!』
などと紹介が入り、その間に私達は入場する。
そして、開始の合図がなると、私はすぐに結界をはる。
「リマ、デカいの一発お願い!
その間、私が守る!
エリー、強化するから1人やれる!?」
「勿論!」
「わかりましたわ!」
作戦は決まったとばかりに私達はそれぞれ動き出す。
そして、相手の声を捉えるように風の魔法も使用する。
『司令塔は、あのルシャーナって1年だ。
そいつから倒すぞ!』
『剣士はどうする?』
『……やれるならやれ!』
作戦は丸聞こえだ。
とはいえ、エリーに隙はあるはずもなく、私に向かってくるのならば問題はない。
だって、結界がはってあるし反撃の準備もしてあるし。
そう、だからあとは待つだけだ。
「エリー、リマ、向こうは私からやるみたい。
エリーはやれるならやれ、だって」
「……相変わらず、ですわね、ルー」
「了解。
けど、私の方には来ないとか……」
エリーは少し落ち込んでいる様子であった。
ただ、リマは呆れているようだが。
「……ルー、あと少しでできますわ」
「ん、じゃあ、リマに合わせて結界を消すよ」
「えぇ」
私は結界を頑張って破ろうとしている相手を眺めながら、そう口にした。
エリーの方は司令塔らしき人物に真っ直ぐ向かっている。
どうやら先程のことで頭に血が上っているらしい。
『風よ。
自由を尊びし風達よ。
私の声を届けて』
「エリー、そろそろ下がって。
リマの魔法が完成する」
『うん!
すぐに戻るね!』
少しはスッキリしたのかいつも通りの明るく元気なエリーに戻った。
うん、私の可愛い妹だ。
「ルー!」
「いーよ!」
『清き水よ。
私の声に応えてください!
濁流となりて押し返しなさい!』
リマは詠唱を短縮できるようになったようだ。
かなり早くなっている。
私は念の為、エリーに結界をはると、安全なところまで移動させる。
私とリマは再び私が結界をはったため安全だ。
「くそっ!」
『大地よ!
俺の声を聞き届け、水を呑み込め!』
向こうの1人が土で水を吸収し始めた。すると、それを見た他の者達も同じように魔法を使い始めた。
『猛々しく燃え上がる炎よ!
眼前の水をも燃やし尽くせ!!』
水は燃えないと思うのだが。
いや、そこで突っ込んではいけないだろうか?
……まぁ、いいや。
「んー、じゃあ……そっちがその気ならこっちもやるよ?」
『聖なる光よ。
我が願いを聞き届けたまへ。
その光は万物を強化せし、力となりてふりかかる』
適当な部分を短縮し発動させたのは勿論、強化魔法。
私の強化魔法もあってか、彼らの儚い抵抗は虚しく、水に流され場外失格となった。
「よし!」
「やりましたわね!」
「やった!」
3人でハイタッチを交わすと、私達は休憩に入る。
この後、準決勝や準々決勝などをやるので私達には1時間の休憩があるのだ。
「観戦しよっか?」
「そうですわね、他の試合も気になりますし……。
勉強にもなりますもの」
「私はお姉ちゃんと一緒ならなんでもいいかな!」
妹が可愛い……。
ほんと、私にこんな可愛い妹がいて良かった。
などと安定のシスコンぶりを発揮しながら私は2人と共に観覧席へと向かった。
すると、少ししてから
「リマーニ」
と声がかかる。
リマはビクッと体を震わせてから少し体を強ばらせ、後ろを向いた。
「お、お父、様……何故、ここに……?」
「対校戦に出ると言うから見に来たのだ。
それより、そこの者は?」
リマの父親は厳格そうな人だった。
だが、リマがこんなにも萎縮してしまっているのは、それだけなのだろうか?
「あ……ゆ、友人の」
「ルシャーナと申しますわ。
こちらは妹のエリアスです」
一応、王家の姓を名乗るのはいいと言われているのだが、流石に巫女とバレてしまうのでそれはやめておく。
まぁ、聞かれてないしね。
聞かれたとしても答える気はないけど。
「……平民か」
リマの父親は苦々しい表情を浮かべる。
それで理解した。
リマが萎縮していたのはリマの父親が平民を差別しているからなのだろう。
「リマーニ、付き合う者は考えろ」
「あ……う……」
「……お言葉ですが、貴族の方に私達以上に強い方はいらっしゃるのですか?
少なくとも、私達と当たった方々は私の結界さえも破れませんでしたが。
そのような方々に、あなたの仰られる『付き合う者』は本当にいらっしゃるのでしょうか?
少なくとも、私達は王家の庇護を受ける身。
それだけの実力はあると自負しておりますが」
真っ直ぐに見据えて、ただ思った事を口にする。
簡単に言えば、お前のいう付き合うべき者は弱い奴のことなのか、っていうのと、王家の庇護を持つ私達に手を出してただで居られると思っているのか、である。
脅しっぽくなってしまったのは仕方ない。
「……ほぅ?
平民が、貴族たる私に喧嘩を売るか」
「あら、喧嘩だなんて……。
ただの子供の世迷言ですわ。
まさか、貴族様がそんな子供の言葉で動く、だなんてことはありませんよね?」
「……貴様、本当に平民か?」
「えぇ、平民ですわ。
ただ、少しある方の屋敷で勉強させていただいたことがあるだけで、所詮は付け焼き刃ですもの」
狐と狸の化かし合いというのはこんな事を言うのだろう、などと思いつつも私は笑みを浮かべる。
「……リマ、エリー、次の試合、私に任せていただけませんか?」
「……ルー?」
「お姉ちゃん……?」
私は、2人の返答を聞かずに1つ、提案をした。
「1つ、賭けを致しませんか?」
「……なに?」
「私は、次の決勝戦、1人で戦います。
それに勝てば、リマの友人であることを認めてください。
負ければ、私は素直にリマの友人であることをやめますわ」
「……分かった、良いだろう。
だが、それだけでは足りぬ。
負ければ、私の命令に1つ、従え」
「……分かりましたわ。
では、くれぐれもお忘れなく」
私達は待機室へと戻ると、大きく息を吐いた。
「ルー!!
何故あのようなことを口にしたんですの!?
お父様は本気で……」
「いいよ、別に。
だって、私は巫女だよ?
聖女と違うんだから」
聖女と巫女の違い。
それは、役割だ。
聖女は別名、全てを助ける者と呼ばれるのに対し、私、巫女は、全てを守り慈しむ者。
だから、私には負けることは許されない。
聖女と違って、私には勝利しか許されていないのだ。
「私は巫女、全てを守り慈しむ者。
初めから、私に敗北は許されていない。
例え、どんなハンデがあろうとも私には勝利以外の道はない。
だから、変わらないんだよ。
ただ、負けられない理由が増えただけ」
「ルー……わ、私……」
「だから、リマ、エリー、応援してて。
私を信じて待っていてくれればそれでいいの。
それだけで、私は救われるから」
「当然!
私のお姉ちゃんは1度言ったことは最後までやり通す、自慢のお姉ちゃんだもん」
「……信じ、ますわ。
ルー、お願い致します」
「……うん、ありがとう」
私は自分に喝を入れると、3人でステージへと向かった。
「ルーシャ、今回は絶対に俺が勝つ」
「私も、負けるつもりはありません」
イラには少し申し訳なく思うがリマのためだ。
そこは後で謝っておこう。
『さぁ、団体戦もいよいよ決勝戦!!
残ったのは、やはり強かった!!
昨年度優勝校、カーナヴァル魔法学園!!
対するは、リリーシア魔法学園!!
果たしてどちらが栄光を冠するのか!!
決勝戦、始めぇぇぇぇ!!』
開始の合図と共に私はバックステップで後ろへと下がり詠唱を開始する。
リマとエリーは場外にいき、早々に失格になる。
『おおっとー!?
これは、どうしたんだ!?
エリアス選手とリマーニ選手、場外失格だぁぁぁ!!
残ったのは、な、なんと!!
ルシャーナ選手1人のみ!!
リリーシア魔法学園、どうしたぁぁぁ!?』
などと、場外で騒いでいる。
その声すら聞こえない程に、私は集中をする。
勿論、結界ははってあるが、イラを相手にどれだけ持つかは不安だ。
『夢、礎となりてここに願い奉る。
世界を構成する全てに告げる。
深紅の薔薇のように燃え上がる炎よ。
静かに流れし清らかな水よ。
自由を尊びし気高き風よ。
世界を支えし偉大なる土よ。
闇をも包み込みし暖かな優しき光よ。
光と共に生きし怒りの闇よ。
そして、その全てに属さぬ無よ。
我が声に答えよ』
この魔法はまだ先がある。
私の魔法は、進化する。
『夢へと誘うその華は何を望み何を願い何を見る。
その先に繋がるものは何も無く。
あなたは暗闇をさまよい歩く。
さぁ、お行きなさい。
全ての夢の集うあの先へ
夢への扉は今開かれる。
さぁ、全ての夢見る者達へ
この果てなき夢を届けよう。
私の願いは未だ叶わず
あなたの願いはすぐそこに
それは、果てなき全ての者が望む夢。
あなたに一時の幸福を届けよう。
全ては私に収縮される。
さぁ、旅立ちなさい。
あの扉の向こうへと。
私は認めよう。
私が私たることを』
そう、これは幻術。
ただし、その中での痛覚や苦しみは感じるようになっている分タチが悪いのだが。
『ルーシャ、気を付けて。
レジストされてる』
「……大丈夫、分かってる」
リオの忠告に頷くと、私は新たに魔法を展開させる。
『自由を尊びし気高き風よ。
私はここに願う。
我が敵を切り裂き真なる自由を得ることを!』
私の得意属性は風。
なにせ、魔術師でしかなかった時に風の女王たるシルフィードと契約を交わすほどなのだから。
私は風を集めると、刃のように鋭いイメージを重ねる。
それにより風は鋭き刃となりてイラに襲いかかる。
残りの2人をその間に場外まで飛ばすと、残りのイラだけに神経を集中させた。
『契約に従いその身を我が眼前に現せ!
七つの大罪が1つ、傲慢の王、ルシフェル・ティルス!』
まさかの召喚により状態は変化した。
ルシファーの登場で私は窮地に立たされたのだ。
原因はその魔力。
ルシファーの魔力は完全なる闇。
更に言えば、私でさえも魔力でカバーしなければ精神がやられる程に濃い魔力なのだ。
つまり、戦いながらも魔力を通さないように守らないといけない。
それだけでかなり不味い状況になるのだ。
『ルーシャ、僕を呼んで。
僕ならルシファーを止められる。
だから……』
「……イラに敬意を払い、私も同じ土俵に立ちましょう」
『契約に従い汝が姿をここに。
七つの大罪が1つ、憤怒の王、サタン・エスカリオス』
私は初めて、リオを正式に呼び出した。
すると、以前よりも濃い紫の髪に、赤の瞳をしたリオが召喚される。
その口元にはうっすらと笑みが浮かんでいるが冷たく感じる。
「やっぱ、簡単にはやらせてくれねぇよな……」
「当然です。
私に敗北は許されていないのですから……」
最後のほうは声が小さくなる。
なぜこんなことを口にしたのかわからないまま、私はルシファーの対処をリオに任せ、イラとの一騎打ちに持ち込む。
「あはぁ、ルーシャに任されたからには負けるわけにはいかないなぁ」
「ぬかせ」
リオは捕食者のような笑みを浮かべると自らの主の為に勝利を得ようと密かに誓う。
自分に存在理由を与えてくれた主の信頼にこたえたいと願ったのだ。
「リオ、お守り替わりです」
『私はあなたの敗北を否定する』
めったに使わぬ無属性の魔法だった。
更に、もう一つの無無属性を発動させる。
この魔法に詠唱は必要ない。
すると、ビジョンが見える。
次のイラの行動、ルシファーの動きが見える。
イラが全なる盾をルシファーに対し発動させ、リオの魔法を防ぐ。
その様子からして防げるのは一回きり。
ならば、私が魔法を放てばいい。
リオはイラを相手にしてもらおう。
「リオ、イラの魔法がはつどうさせてすぐ、私とリオの役割を変更」
「りょーかい!」
簡単な打ち合わせをしていると、イラが魔法を発動させた。
『展開しろ、全なる盾よ!!』
『私の心を委ねます。
あなたの闇は鋭く 切り裂く刃となった。
私の光は穏やかで
冷たい闇をも包み込む暖かな光。
今、私の光は解き放たれ
あなたの闇を照らし 凍った心を溶かしましょう。
私の光は全てをやさしく包み込む。
たった一つの希望の光』
私が使うのは永続的な聖魔法。
それがいちばん効果的であると判断したのだ。
「っ……イラニ!!
予知されている!!
憤怒を探せ!!」
流石はルシファー。
もうばれてしまった。
とは言え、問題は無いのだけれど。
「あはぁ、チェックメイト、だよ~?」
リオがイラの背後に転移し、剣を突き付けた。
勿論、足元は影で縫い付けてあり、動けないようにしている。
『そこまでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
勝ったのは、リリーシア魔法学園!!
団体戦、優勝だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
なんと、ルシャーナ選手、一人で勝ってしまったぁぁぁぁ!!
強い、強すぎる!!
これは明日の個人戦も期待できそうだぁぁぁ!!』
という勝者のコールが聞こえた。
その瞬間、エリーとリマが私に抱き着いてくる。
「お姉ちゃん!!
やった、優勝だ!!」
「ルー!!
やりましたわね!」
「エリー、リマ……うん、勝ったよ」
2人の喜びように私も微笑んだ。
これでリマの父親にも認めてもらえる。
その思いからの安堵もあった。
「……ルーシャ、やっぱ強ぇな。
明日の個人戦、楽しみにしてるぜ」
「はい、明日は今日の反動で予知が使えませんが……負けるつもりはありません」
「おう!」
明日はできれば無属性は使いたくはない。
特に、奇跡の手は。
あれを使う機会だけは無ければいいと思いながら、私たちは先輩たちのいる会場へと向かった。
それに勝てば、イラ達と戦うことになる。
私は意外にもイラと戦うことを楽しみにしていた。
「お姉ちゃん、また何か企んでるでしょ!」
「ルー、またですの?
やりすぎるのはやめてください」
「私が何かやる前提!?
ただ、これが終わったらイラと戦うと思っただけだよ!!」
失礼な!
と怒る私にリマとエリーは顔を見合わせて笑った。
そんな2人を見ていると、まぁいっか。
と思ってしまうのが不思議だ。
『さぁ、団体戦も終盤!!
フリケット魔道学園とリリーシア魔法学園の勝負だァァァァ!!
フリケット魔道学園はこれまで確実に勝負を決めてきた!
対してリリーシア魔法学園は瞬殺で決めているぅぅぅぅ!!
今回もリリーシア魔法学園が瞬殺するか!?
それとも、フリケット魔道学園に流れを止められるのか!!』
などと紹介が入り、その間に私達は入場する。
そして、開始の合図がなると、私はすぐに結界をはる。
「リマ、デカいの一発お願い!
その間、私が守る!
エリー、強化するから1人やれる!?」
「勿論!」
「わかりましたわ!」
作戦は決まったとばかりに私達はそれぞれ動き出す。
そして、相手の声を捉えるように風の魔法も使用する。
『司令塔は、あのルシャーナって1年だ。
そいつから倒すぞ!』
『剣士はどうする?』
『……やれるならやれ!』
作戦は丸聞こえだ。
とはいえ、エリーに隙はあるはずもなく、私に向かってくるのならば問題はない。
だって、結界がはってあるし反撃の準備もしてあるし。
そう、だからあとは待つだけだ。
「エリー、リマ、向こうは私からやるみたい。
エリーはやれるならやれ、だって」
「……相変わらず、ですわね、ルー」
「了解。
けど、私の方には来ないとか……」
エリーは少し落ち込んでいる様子であった。
ただ、リマは呆れているようだが。
「……ルー、あと少しでできますわ」
「ん、じゃあ、リマに合わせて結界を消すよ」
「えぇ」
私は結界を頑張って破ろうとしている相手を眺めながら、そう口にした。
エリーの方は司令塔らしき人物に真っ直ぐ向かっている。
どうやら先程のことで頭に血が上っているらしい。
『風よ。
自由を尊びし風達よ。
私の声を届けて』
「エリー、そろそろ下がって。
リマの魔法が完成する」
『うん!
すぐに戻るね!』
少しはスッキリしたのかいつも通りの明るく元気なエリーに戻った。
うん、私の可愛い妹だ。
「ルー!」
「いーよ!」
『清き水よ。
私の声に応えてください!
濁流となりて押し返しなさい!』
リマは詠唱を短縮できるようになったようだ。
かなり早くなっている。
私は念の為、エリーに結界をはると、安全なところまで移動させる。
私とリマは再び私が結界をはったため安全だ。
「くそっ!」
『大地よ!
俺の声を聞き届け、水を呑み込め!』
向こうの1人が土で水を吸収し始めた。すると、それを見た他の者達も同じように魔法を使い始めた。
『猛々しく燃え上がる炎よ!
眼前の水をも燃やし尽くせ!!』
水は燃えないと思うのだが。
いや、そこで突っ込んではいけないだろうか?
……まぁ、いいや。
「んー、じゃあ……そっちがその気ならこっちもやるよ?」
『聖なる光よ。
我が願いを聞き届けたまへ。
その光は万物を強化せし、力となりてふりかかる』
適当な部分を短縮し発動させたのは勿論、強化魔法。
私の強化魔法もあってか、彼らの儚い抵抗は虚しく、水に流され場外失格となった。
「よし!」
「やりましたわね!」
「やった!」
3人でハイタッチを交わすと、私達は休憩に入る。
この後、準決勝や準々決勝などをやるので私達には1時間の休憩があるのだ。
「観戦しよっか?」
「そうですわね、他の試合も気になりますし……。
勉強にもなりますもの」
「私はお姉ちゃんと一緒ならなんでもいいかな!」
妹が可愛い……。
ほんと、私にこんな可愛い妹がいて良かった。
などと安定のシスコンぶりを発揮しながら私は2人と共に観覧席へと向かった。
すると、少ししてから
「リマーニ」
と声がかかる。
リマはビクッと体を震わせてから少し体を強ばらせ、後ろを向いた。
「お、お父、様……何故、ここに……?」
「対校戦に出ると言うから見に来たのだ。
それより、そこの者は?」
リマの父親は厳格そうな人だった。
だが、リマがこんなにも萎縮してしまっているのは、それだけなのだろうか?
「あ……ゆ、友人の」
「ルシャーナと申しますわ。
こちらは妹のエリアスです」
一応、王家の姓を名乗るのはいいと言われているのだが、流石に巫女とバレてしまうのでそれはやめておく。
まぁ、聞かれてないしね。
聞かれたとしても答える気はないけど。
「……平民か」
リマの父親は苦々しい表情を浮かべる。
それで理解した。
リマが萎縮していたのはリマの父親が平民を差別しているからなのだろう。
「リマーニ、付き合う者は考えろ」
「あ……う……」
「……お言葉ですが、貴族の方に私達以上に強い方はいらっしゃるのですか?
少なくとも、私達と当たった方々は私の結界さえも破れませんでしたが。
そのような方々に、あなたの仰られる『付き合う者』は本当にいらっしゃるのでしょうか?
少なくとも、私達は王家の庇護を受ける身。
それだけの実力はあると自負しておりますが」
真っ直ぐに見据えて、ただ思った事を口にする。
簡単に言えば、お前のいう付き合うべき者は弱い奴のことなのか、っていうのと、王家の庇護を持つ私達に手を出してただで居られると思っているのか、である。
脅しっぽくなってしまったのは仕方ない。
「……ほぅ?
平民が、貴族たる私に喧嘩を売るか」
「あら、喧嘩だなんて……。
ただの子供の世迷言ですわ。
まさか、貴族様がそんな子供の言葉で動く、だなんてことはありませんよね?」
「……貴様、本当に平民か?」
「えぇ、平民ですわ。
ただ、少しある方の屋敷で勉強させていただいたことがあるだけで、所詮は付け焼き刃ですもの」
狐と狸の化かし合いというのはこんな事を言うのだろう、などと思いつつも私は笑みを浮かべる。
「……リマ、エリー、次の試合、私に任せていただけませんか?」
「……ルー?」
「お姉ちゃん……?」
私は、2人の返答を聞かずに1つ、提案をした。
「1つ、賭けを致しませんか?」
「……なに?」
「私は、次の決勝戦、1人で戦います。
それに勝てば、リマの友人であることを認めてください。
負ければ、私は素直にリマの友人であることをやめますわ」
「……分かった、良いだろう。
だが、それだけでは足りぬ。
負ければ、私の命令に1つ、従え」
「……分かりましたわ。
では、くれぐれもお忘れなく」
私達は待機室へと戻ると、大きく息を吐いた。
「ルー!!
何故あのようなことを口にしたんですの!?
お父様は本気で……」
「いいよ、別に。
だって、私は巫女だよ?
聖女と違うんだから」
聖女と巫女の違い。
それは、役割だ。
聖女は別名、全てを助ける者と呼ばれるのに対し、私、巫女は、全てを守り慈しむ者。
だから、私には負けることは許されない。
聖女と違って、私には勝利しか許されていないのだ。
「私は巫女、全てを守り慈しむ者。
初めから、私に敗北は許されていない。
例え、どんなハンデがあろうとも私には勝利以外の道はない。
だから、変わらないんだよ。
ただ、負けられない理由が増えただけ」
「ルー……わ、私……」
「だから、リマ、エリー、応援してて。
私を信じて待っていてくれればそれでいいの。
それだけで、私は救われるから」
「当然!
私のお姉ちゃんは1度言ったことは最後までやり通す、自慢のお姉ちゃんだもん」
「……信じ、ますわ。
ルー、お願い致します」
「……うん、ありがとう」
私は自分に喝を入れると、3人でステージへと向かった。
「ルーシャ、今回は絶対に俺が勝つ」
「私も、負けるつもりはありません」
イラには少し申し訳なく思うがリマのためだ。
そこは後で謝っておこう。
『さぁ、団体戦もいよいよ決勝戦!!
残ったのは、やはり強かった!!
昨年度優勝校、カーナヴァル魔法学園!!
対するは、リリーシア魔法学園!!
果たしてどちらが栄光を冠するのか!!
決勝戦、始めぇぇぇぇ!!』
開始の合図と共に私はバックステップで後ろへと下がり詠唱を開始する。
リマとエリーは場外にいき、早々に失格になる。
『おおっとー!?
これは、どうしたんだ!?
エリアス選手とリマーニ選手、場外失格だぁぁぁ!!
残ったのは、な、なんと!!
ルシャーナ選手1人のみ!!
リリーシア魔法学園、どうしたぁぁぁ!?』
などと、場外で騒いでいる。
その声すら聞こえない程に、私は集中をする。
勿論、結界ははってあるが、イラを相手にどれだけ持つかは不安だ。
『夢、礎となりてここに願い奉る。
世界を構成する全てに告げる。
深紅の薔薇のように燃え上がる炎よ。
静かに流れし清らかな水よ。
自由を尊びし気高き風よ。
世界を支えし偉大なる土よ。
闇をも包み込みし暖かな優しき光よ。
光と共に生きし怒りの闇よ。
そして、その全てに属さぬ無よ。
我が声に答えよ』
この魔法はまだ先がある。
私の魔法は、進化する。
『夢へと誘うその華は何を望み何を願い何を見る。
その先に繋がるものは何も無く。
あなたは暗闇をさまよい歩く。
さぁ、お行きなさい。
全ての夢の集うあの先へ
夢への扉は今開かれる。
さぁ、全ての夢見る者達へ
この果てなき夢を届けよう。
私の願いは未だ叶わず
あなたの願いはすぐそこに
それは、果てなき全ての者が望む夢。
あなたに一時の幸福を届けよう。
全ては私に収縮される。
さぁ、旅立ちなさい。
あの扉の向こうへと。
私は認めよう。
私が私たることを』
そう、これは幻術。
ただし、その中での痛覚や苦しみは感じるようになっている分タチが悪いのだが。
『ルーシャ、気を付けて。
レジストされてる』
「……大丈夫、分かってる」
リオの忠告に頷くと、私は新たに魔法を展開させる。
『自由を尊びし気高き風よ。
私はここに願う。
我が敵を切り裂き真なる自由を得ることを!』
私の得意属性は風。
なにせ、魔術師でしかなかった時に風の女王たるシルフィードと契約を交わすほどなのだから。
私は風を集めると、刃のように鋭いイメージを重ねる。
それにより風は鋭き刃となりてイラに襲いかかる。
残りの2人をその間に場外まで飛ばすと、残りのイラだけに神経を集中させた。
『契約に従いその身を我が眼前に現せ!
七つの大罪が1つ、傲慢の王、ルシフェル・ティルス!』
まさかの召喚により状態は変化した。
ルシファーの登場で私は窮地に立たされたのだ。
原因はその魔力。
ルシファーの魔力は完全なる闇。
更に言えば、私でさえも魔力でカバーしなければ精神がやられる程に濃い魔力なのだ。
つまり、戦いながらも魔力を通さないように守らないといけない。
それだけでかなり不味い状況になるのだ。
『ルーシャ、僕を呼んで。
僕ならルシファーを止められる。
だから……』
「……イラに敬意を払い、私も同じ土俵に立ちましょう」
『契約に従い汝が姿をここに。
七つの大罪が1つ、憤怒の王、サタン・エスカリオス』
私は初めて、リオを正式に呼び出した。
すると、以前よりも濃い紫の髪に、赤の瞳をしたリオが召喚される。
その口元にはうっすらと笑みが浮かんでいるが冷たく感じる。
「やっぱ、簡単にはやらせてくれねぇよな……」
「当然です。
私に敗北は許されていないのですから……」
最後のほうは声が小さくなる。
なぜこんなことを口にしたのかわからないまま、私はルシファーの対処をリオに任せ、イラとの一騎打ちに持ち込む。
「あはぁ、ルーシャに任されたからには負けるわけにはいかないなぁ」
「ぬかせ」
リオは捕食者のような笑みを浮かべると自らの主の為に勝利を得ようと密かに誓う。
自分に存在理由を与えてくれた主の信頼にこたえたいと願ったのだ。
「リオ、お守り替わりです」
『私はあなたの敗北を否定する』
めったに使わぬ無属性の魔法だった。
更に、もう一つの無無属性を発動させる。
この魔法に詠唱は必要ない。
すると、ビジョンが見える。
次のイラの行動、ルシファーの動きが見える。
イラが全なる盾をルシファーに対し発動させ、リオの魔法を防ぐ。
その様子からして防げるのは一回きり。
ならば、私が魔法を放てばいい。
リオはイラを相手にしてもらおう。
「リオ、イラの魔法がはつどうさせてすぐ、私とリオの役割を変更」
「りょーかい!」
簡単な打ち合わせをしていると、イラが魔法を発動させた。
『展開しろ、全なる盾よ!!』
『私の心を委ねます。
あなたの闇は鋭く 切り裂く刃となった。
私の光は穏やかで
冷たい闇をも包み込む暖かな光。
今、私の光は解き放たれ
あなたの闇を照らし 凍った心を溶かしましょう。
私の光は全てをやさしく包み込む。
たった一つの希望の光』
私が使うのは永続的な聖魔法。
それがいちばん効果的であると判断したのだ。
「っ……イラニ!!
予知されている!!
憤怒を探せ!!」
流石はルシファー。
もうばれてしまった。
とは言え、問題は無いのだけれど。
「あはぁ、チェックメイト、だよ~?」
リオがイラの背後に転移し、剣を突き付けた。
勿論、足元は影で縫い付けてあり、動けないようにしている。
『そこまでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
勝ったのは、リリーシア魔法学園!!
団体戦、優勝だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
なんと、ルシャーナ選手、一人で勝ってしまったぁぁぁぁ!!
強い、強すぎる!!
これは明日の個人戦も期待できそうだぁぁぁ!!』
という勝者のコールが聞こえた。
その瞬間、エリーとリマが私に抱き着いてくる。
「お姉ちゃん!!
やった、優勝だ!!」
「ルー!!
やりましたわね!」
「エリー、リマ……うん、勝ったよ」
2人の喜びように私も微笑んだ。
これでリマの父親にも認めてもらえる。
その思いからの安堵もあった。
「……ルーシャ、やっぱ強ぇな。
明日の個人戦、楽しみにしてるぜ」
「はい、明日は今日の反動で予知が使えませんが……負けるつもりはありません」
「おう!」
明日はできれば無属性は使いたくはない。
特に、奇跡の手は。
あれを使う機会だけは無ければいいと思いながら、私たちは先輩たちのいる会場へと向かった。
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