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団体戦(先輩)
しおりを挟むついに決勝戦となった。
初めての決勝ということもあり、かなり緊張する。
だが、一年にかっこ悪いところは見せられるはずがない。
一年がここまでお膳立てしてくれたというのに、俺たち先輩が負けていいはずがない。
「レオニード先輩!
カルア先輩!
頑張ってください!」
などという一年の応援の言葉を聞き、片手を挙げ応える。
『いよいよ!
決勝戦となりました。
ここまで勝ち進んできたのはー!
王者、エディット帝国武術学園。
順調に勝ち進んできたが、このまま王者の風格を見せつけ優勝するのか!
対するは、今、流れに乗っているリリーシア王国国立魔法学園です!
……ここで、3人の部の結果発表です!
3位はフリケット魔道学園!!
2位はカーナヴァル魔法学園!!
そして、優勝したのは、リリーシア魔法学園!』
俺とカルアは優勝校の名を聞いて思わず笑った。
「なぁ、後輩が優勝してるんだ。
俺たちが負けるわけにはいかないよな?」
「あぁ、レオニード、やるぞ」
俺たちが勝たなければいけない理由が増えた。
だが、さすがというべきだろう。
今年の1年は強い。
俺たち3年が足元にも及ばないと思わせるほどに。
特に、その筆頭となっているルシャーナだ。
闘技大会での『何か』がなければ確実にルシャーナが優勝していただろう。
それ程に、他のヤツとはかけ離れた実力を持っている。
そのうえに悪魔契約、精霊契約と来た。
ルシャーナの異常性は計り知れない。
『報告によれば、リリーシアの選手はたった一名のみで相手にしたようだ!』
などというナレーションに俺はコケ層になる。
その一名というのは確実にルシャーナだろうと判断できたからだ。
ほかの二人も強いには強いのだが、一人で三人を相手にして勝てるような実力ではないのだ。
そんなことができるのは一人、ルシャーナだけなのだ。
「何やってんだ、あいつらは……」
「何かしら事情があったんだろう。
それより、この試合に集中しろ。
後輩にかっこ悪いとこなんか見せられないんだぞ」
「……分かっている」
カルアの子叔母に頷くと、俺はこの試合の事だけを考える。
ルシャーナの事は後だ。
事情は……。
まぁ、聞いてやらんこともない。
負けたらそんなことできないが。
そのためにも、この試合には勝つ。
『それでは、試合開始だ!!』
その合図でカルアは土の壁を作り出す。
カルアの壁が壊されるか回避される前に、俺は火の魔法の詠唱を始めた。
『全てを燃やし尽くす火焔よ!
俺の願いのもと顕現せよ!
来い!
火焔獣、エルース!!』
エルースは攻撃性の魔獣だ。
コイツは自らの意思を持ち動く。
魔力はあんま無いが。
「エルース、敵が来たらやれ」
エルースは俺の言葉に頷くと壁に近付いた。
「かなりの勢いで削られている。
もう少しで崩れるぞ。
準備をしろ」
「おう」
カルアはそう言うが、まだ大丈夫そうだ。
そこで、もう一つ魔法を使用する。
『全てを燃やし尽くす火焔よ。
俺の願いのもと顕現せよ!』
俺の声で、壁ギリギリに火が上がる。
その炎は高く燃え上がっている。
「よし、いいぞ」
「やっとか……」
『解除』
カルアが額に汗を浮かべながら呟き、解除すると、武術学園の奴らはなだれ込むように突っ込んでくる。
そして、火だるまになり、場外へと転げ落ちていく。
……なんなんだコイツら。
と思わなくもないが、自滅してくれるのはありがたい。
まあ、ちょっとかわいそうだが。
「ルシャーナ!
場外の奴らを回復してやれ!!」
「えっ……!
わかりました。
エリー、リマ、悪いけど少し外すね」
「私も行く!」
「では、私は先輩方のところへ」
ということで二手に分かれることとなった。
私はスタッフに連れられ選手の控室まで来ると中に入り二人の選手の治療を行う。
『聖なる光よ。
私はここに願います。
この者の傷を癒しあるべき姿へと戻せ』
火傷が酷いがレオニード先輩はどれだけ高火力の魔法を使ったのか。
いや、それよりも何故この二人は突っ込んでいったのか。
「これでいいはずです。
今後、あのような無茶は気を付けてくださいね?」
「うっ……。
善処しよう。
治療、礼を言う」
「サンキュー」
2人の選手からの礼を受け取ると、私は微笑んだ。
「いえ、私の試合は終わっていますから。
先輩の魔法で起こったことですから私も無関係というわけではありませんから」
「ん?
ってことは、リリーシアの選手?」
気付いていなかったらしい。
いや、いいけど。
……明日は優勝するつもりだし。
「あの一年生か……」
「あの、とは……?」
嫌な予感しかしないが聞いてみた。
案の定というべきか……。
「非常識の塊、だったか?」
「あー、そんなこと言ってたっすねー。
確か、瞬殺されたー、だっけ?」
それは3人の言葉なのだろう。
だが、心外だ。
あの時は結界を張っていただけだったはずだ。
……いや、幻術も使ったか。
だがそれだけで全て私のせいのように言うのは酷いと思うのだ。
「いやいや!
お姉ちゃんがほとんどやったと思うよ?」
「……そんなことはありません。
ないはず、です」
思わぬところからの攻撃もあり、間が空いてしまった。
この頃姉としての威厳がなくなっている気がするのは気のせいだろうか。
「……では、もう大丈夫そうですので私は戻りますね。
お大事になさってください」
完璧に治癒を施したうえでお大事に、というのは少しばかり違和感を感じるが。
「あ、あぁ」
「サンキューな」
部屋から出るとそのまま先輩の元へと戻る。
そこには疲れた風な先輩とリマがいる。
「ルー、お疲れ様です」
「ありごとう、リマ。
先輩、優勝おめでとうございます!」
「おう、ありがとな。
そっちも優勝おめでとう。
よくやった」
レオニード先輩がそう言って笑う。
その言葉に、そういえば優勝したんだった、などと思うあたり少し疲れているのだろう。
今日はかなり魔力を使ったしね。
こういうこともあるだろう。
「にしてもルシャーナ。
お前、まーたやらかしたな?」
「へ……?
なんのことですか?」
今回は本当に身に覚えがなかった。
せいぜい大掛かりな幻術を使った程度だ。
うん、特に問題ないはず。
「お前さぁ……。
決勝戦の時、一人でやったそうだな?」
「……エリーとリマを巻き込んでしまうような魔法を使ったのですが、イラにはレジストされてしまい、結果的にそうなってしまっただけです。
私は悪くなどありません」
正直それは忘れていた。
だが、まぁ、理由としては問題ないはず。
うん。
大丈夫だよね?
「ルシャーナ、お前ならその魔法を使わなくても勝てたはずだ」
「それはどうでしょうか?
私には先輩が思うほどの力はありませんから」
本当の事だ。
私には皆が思うほどの力はない。
いや、正確に言うとまだすべてを使いこなせてはいない。
だからこそ、負けそうになるのだ。
「まぁ、いい。
ただ、次はこういうことはやめろ。
団体戦の意味がないからな」
「レオニード先輩、それは私のお父様が……」
と、リマが説明してくれたおかげでその話は不問となった。
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