転生したようなので妹のために奮闘することにしました

紗砂

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助ける事にしたらしい

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あのメイド、カリーナに裏切られてから1日たった。
あれから暫く、私はカリーナの事を考えていた。
誰よりも優しく私に色々な事を教えてくれたカリーナが本当に自らこのような事をするのだろうかと。
私にはこの件はカリーナの意思ではないように思えたのだ。


「止まれ!
ここから先に入るのは禁止されている!」


そう言われると思って先に国王から署名を貰ってきたんだよね。


「許可はとってあります」


私がその署名を見せると「失礼しました!」と言って敬礼した。
……必要ないのにな。

私はお礼を言い、カリーナの入れられている牢へと向かう。
カツンカツン……と、私の足音だけが 冷たく響き渡る。
目的の場所までくると私は汚れるような事など気にせずに座り込んだ。


「……カリーナ」

「巫女、様?」


その声は昨日とは違い弱々しく衰弱している事が分かる。
そのためか思わず顔を顰めてしまった。


「今の私はただのルシャーナです。
カリーナ…あなたは誰に命じられて毒を盛ったのですか?」

「っ…。
巫女、様……。
私は、私の意思で……」


誰かを庇おうとしているのは分かる。
だが、私はそんなにも頼りないのだろうか?
私ではカリーナの力になれないのだろうか?


「…カリーナ、お願いします。
私はカリーナに救っていただきました。
ですから今度は私の番です。
ですから、カリーナ。
教えてください」

「わ、私は…知りません…」


お願い。
私はカリーナを殺したくはない。
カリーナだって分かっているはずだ。
巫女という称号をもつ私を傷つければ死刑となる事くらい。


「カリーナ…その人は、あなたがそんなにまでして助ける程の人なのですか?
……弱味を握られているのでしたら私はその全てを解決するために巫女のもつ力全てを使いましょう。
私はあなたを信じています。
カリーナにならば私の無属性の力を教えてもいいと思うほどに。
ですからカリーナ。
あとはあなたがが私を信じてください。
あなたが信じてくれるのであれば私はあなたの敵全てを倒しましょう」


私はそう言って牢の中に手を伸ばす。


「巫女…様……」


カリーナは泣きながら私の手をとった。
それに私は笑い、牢の鍵を開けた。
鍵?
そんなもの作ればどうにかなる。
大抵の場合氷の鍵だけど。


「カリーナ、行きましょう。
…私は友人を傷付ける奴は許さない主義なの」

「巫女様……」

「ルーシャ、でしょう?
ルーナでもいいけれど……」


巫女様って私じゃない気がするし……。
それに、なんか壁を感じるし。


「巫女様、その者は…」

「大丈夫です。
今から陛下に直談判しに向かう途中ですから。
この者は私のメイドだったのです。
誰にも文句は言わせません。
責任は全て私が取ります」


それでも渋る兵士達に対し私はお願いしますと頭を下げる。


「……分かりました。
しかし、今回限りにしてください」

「…善処いたします。
ですが、改めてお礼を。
本当に、ありがとうございます」


私はそのままカリーナを連れて国王の執務室へと向かう。


「み……ルーシャ様、どちらへ?」

「国王の執務室。
直談判しに、ね?」

「る、ルーシャ様!?
それは……」


問題ないって。
何とかなるもんだよ?
私は軽くノックをして返答を聞かずに中に入る。


「ルーシャ……君、だんだん遠慮なくなってきてない?」

「気の所為です。
と、いう事でカリーナは犯人出なかったようなので戻してください」

「何が『と、いう事で』なのかな!?
最初から説明してくれないかな!」


化けの皮が剥がれてきてるし。
ま、関係ないからいいけど。
……最初から説明って…面倒な事を言うよね。


「面ど……いえ、分かりました」

「君、今面倒って言おうとしたよね?」

「はい。
それが何か?」

「……本当に君、遠慮なくなったよね」

「それほどでもあります」


そんなやり取りを続けた末、許可を獲得した。


「お義父様、ありがとうございます」

「義理とはいえ娘のお願いだからね」


私とエリーは正式に王族となった。
……血は繋がっていないけどね。
ちなみに上はケヴィンの他にもう1人いて、下にはあと2人程いる。
もう一人の上の王子と下の王子はひねくれていると言われている。
幸いというべきなのかもう一人の下の王女は愛らしいと言われている。王子の方は好き勝手に育ったが王女の方は家庭教師に囲まれて育ったと言っていた。
だからなのだろう。

チラッと聞いたがケヴィンがあんなにも真っ直ぐに育った事が奇跡なのだそうだ。
……まぁ、私と同じ転生者だしね。
中身は30超えてるし。


「それにしても…ハリス家か……」


ハリス家はカリーナの実家だ。
今回の件はハリスの家の当主、つまりカリーナの父の命らしい。


「カリーナはそれでいいのですか?」

「…はい…。
もう、いいです。
私の命は巫女さ…ルーシャ様に捧げると決めましたから」


いや、命貰っても困るんだけど。
自分のために使いなよ。


「ルーシャ様のためになるのであれば私の命はたとえ悪魔にだろうと差し上げます。
……ルーシャ様は私に光を与えてくださいました。
私は、ルーシャ様について行きます。
たとえ、地獄であろうと私の命が尽きる、その時まではルーシャ様に誠心誠意仕えさせていただきます」


重い!!
重いよ!!
地獄って、私はそんな所に行く予定はないし!!
悪魔にまでって……。

私は顔を引き攣らせるがカリーナはそれに気付かずにキラキラとした目で私を見つめている。
……やりづらい。


「自分の命を最優先にしてください……。
カリーナには申し訳ありませんが……ハリス家の当主を捕まえますか…」

『ルーシャ、ルーシャ!
僕がやる!』


物凄く不安になるのは何故だろうか?
まぁ、これだけやる気があるならいいか。


「なら、称号も一緒にとってくる事。
それと、能力に制限をつける事。
それが条件です」

『うん!
分かった!!
行ってくる!!』


幾分か魔力を抜き取っていったようだ。
……まぁ、すぐ回復するからいいけど。


「ル、ルーシャ様……先程の者は……?」

「それを含めて、私の部屋で話しましょう」


こんな所で言うわけにもいかないからね。
幸い、私の部屋なら防音結界があるから誰にも聞かれる心配はない。


「は、はい」


防音結界を超えて中に入り、座ると私はもう1度結界を施した。
これは念の為というものだ。


「カリーナ、まずはリオの事からにしましょう。
先程の悪魔は私の契約者でリオと呼んでいます。
真名は、サタン・エスカリオス。
七つの大罪(笑)の中の憤怒の悪魔と言われています」

「なっ……。
憤怒の、悪魔……。
歴史上にも殆ど名を残さないあの憤怒の悪魔なのですか!?」


まぁ、あの様子とは繋がらないよね。
あんな子供じゃあ……ねぇ?


「憤怒って感じではないでしょう?」

「うっ……はい…」


まぁあれだからねぇ。  
能天気とか馬鹿とかがあったら分かるんだけどねぇ…。


「リオの事はいいとして……。
あとは…そうだね。
私が無属性魔法の適正を持っているのは知ってる?」

「はい。
まさか…もう既に発現なされているのですか!? 」


発現。
無属性は特別で特定の魔法がないのだ。
自分だけの魔法。
それが無属性魔法である。
無属性魔法はその者の心に左右されるとも言われている。
そして、そんな無属性魔法は適正を持つからといえど簡単に発動はせず、発動させる事が出来るようになることを発現という。
普通は1つしかないのだが、偶に……。


「2つとも発現しました」

「2つ!?
さすがルーシャ様……」


2つとも、とは言ってるけどあともう1つ枠があるんだよね。
とはいえそれは言わない方がいいと判断したのだけど。
だから表にだしていいのはこの2つ。
まぁ、両方ともバレない方がいいのだけど。


「1つは『予知』。
これは何分か先の未来を予測できるもの。
便利そうには聞こえますが色々と制限があるのであまり使えません。

もう1つは『奇跡の手』です。
これは傷を治すもの。
どんな重症者でも、いえ…。
死後1までならばどんな状態であろうと治す事が出来ます。
ですが、魔力消費量が多いため最大5人が限度でしょう。
それと、1人治すのにとてつもなく時間がかかる事が難点でしょうか」

「あ、あの…。
それは、病でも治す事が出来るのでしょうか……?」


カリーナは暗い表情で、恐る恐る訪ねてきた。
…知り合いに病を患っている者がいるのだろうか?


「やってみなければ分かりません。
…ですが、私の持てる全てをもって助けます。
お知り合いにいるのですか?」


私は確信をもってカリーナに尋ねる。
カリーナは言いにくそうに、躊躇いつつも口にした。


「…母が、母が病に侵されているんです…。
今回の事も、母の薬との交換条件に提示された事でした……」


そう、か。
それなら急ぐ必要がある。
その手段をとったということはカリーナの母親はかなり危険な状態なのだろう。
ならば急がなければ危ない。

……ついでに、そのお礼としてその依頼者を聞き出そう。


「分かりました。

『風よ  私の声を届けて
対象は サタン・エスカリオス』」


私は魔法を使いながらカリーナに持ってきてもらった紙に伝言を書く。


『あれぇ?
どうしたの?
ルーシャ』

「至急、戻ってきてください。
やって欲しいことがあります」

『うん!
すぐ戻るよ!』


これで移動手段は大丈夫そうか。
それでもしばらくはかかるだろうから準備を進めよう。


「カリーナ、外出の準備をしなさい。
少し遊びに行きましょう」


そう。
あくまでも私は遊びに行くついでに治療を施すだけだ。
そして、私を毒殺しようとした犯人を捕まえるだけ。
うん。
何も問題ないね。

……というか、今更だけど毒殺って……。
ケヴィンにも毒を盛られたなぁ……。
私、毒と縁があるのかな?
そんな縁は要らないんだけど。


『ルーシャ!
ただいまぁ!』


意外と早く帰ってきたようだ。
私はリオに転移の事を話すと了承が返ってきた。


「カリーナ、掴まっていてください」

「え?」

「リオ」

『うん!
いっくよぉ!』


リオは私から魔力を少し奪うと転移魔法を起動させた。
そして驚くカリーナを見ない事にし、そのままカリーナの実家へと転移した。


「カリーナ」

「る、ルーシャ様……。
ここ、は……私の家!?」


すぐに気付くものなんだな。
まぁ、人が集まってくるからその前にカリーナに案内させるか。


「カリーナ、あなたのお母様のところへ案内してください」

「え……ルーシャ様…それは…」


私に話してくれたんだから治すに決まってる。
こういう時のための魔法だろうに。


「カリーナ?」

「は、はい!
こちらです!」


案内されたのは完全に隔離されている部屋だった。
誰にもうつさないようにという意味もあったのだろう。
私はその部屋に迷わず入っていく。


「ルーシャ様!!
ルーシャ様にうつってしまったらどうするつもりですか?」

「大丈夫。
私の周りには基本的に結界がいくつか貼ってありますから。
あ…カリーナにも貼っておきますね」


私は空に軽く指を滑らせ魔法をかける。
こうすればうつることはない。
まぁ、他の魔法の効果も遮断しちゃうけど。


「誰だ!!
この部屋には…なっ!?
カリーナ!?
それに、巫女様まで……」

「失礼しております。
ハリス伯、勝手にお邪魔してしまい申し訳ありません。
これからやる事は誰にもバレたくありませんのでこの部屋の外でお待ちください」


症状を見ると熱、咳、鼻水といった風邪の症状に似ているようだ。
だが、風邪であればこのような苦しみ方はしないだろう。
……もしかしてだが。


「……リオ」

『ルーシャの見立て通りかな。
中級くらいの呪いだよ。
でも……このままじゃ死んじゃうかなぁ?
もってあと2日くらいだよ。
僕からみてもほぼ完璧な術式だもん。
それと、こんなに根付いてるようだと上級じゃないと厳しいよ?』


やはり、呪いだった。
だが、誰がそんな事を?
……この際どうでもいい。
まずは救う事から始めよう。


「……巫女様」

「お父様、ここはルーシャ様にお任せし……」


あれ?
まだいたのか。
……まぁ、無属性は使わないからいいけど。


「カリーナ、大丈夫です。
ハリス伯、これだけは約束出来ますか?
ここで見た事は誰にも言わないと。
そうでなければこの部屋から速やかに出て行ってください。
もし破ればあなたの身の安全が保証できなくなります」

「……約束しよう」


ならば問題ない。
ハリス伯はカリーナの父親だからね。
友人の家族は信用するさ。


「ならば問題ありません。
それと、これは病なんて生易しいものではありませんよ」


私はそう口にするとカリーナと私の周りにはっていた結界を全て解除した。
その代わりに使ったのは防御魔法と氷。
呪いの方向がこちらに向かって来た時のための防御魔法と、侵入者を防ぐための氷魔法だ。

私はいつもよりも強く魔力に意識を向ける。
そして、カリーナの母親にかけられている呪いを解くための詠唱を始めた。


「…始めます。

『汝にかかりし呪を今、解き放つ
我が名において命じる
根深き闇を解放せよ
我が名はルシャーナ!
我が魔力を代償とし呪よ  退け!!』」


途中の一文を加えたのはリオのアドバイスからだ。
その分強力になるが魔力の消費も増える。


「ルーシャ様!
それ以上は……!!」


私はカリーナの制止すら聞かずにただ、願い続ける。
この人を助けるためにと。
ただ魔力を流し続ける。


「ルーシャ様!!
お願いします!
それ以上はルーシャ様の命まで危険に…」


うるさい。
私は、この人を治す。
根深い…。
本当に、根深い。


「……アマテラス!!」

『…ようやく私を呼ぶ事を覚えたか。
遅いくらいだがな』


どこか嬉しそうだが、その目は呪いの根源へと向いている。


『……散れ』


…フッと抵抗が消え、魔力が簡単に通るようになる。


「ラス、ありがとうございます」

『ふっ……私はただ呪いの塊を散りばめたにすぎない』


それが大変だというのに……。
呪いの塊は抵抗が大きいから中々浄化できないのだ。
散りばめてくれたお陰で抵抗が減りその分、浄化が簡単になった。

その数分後にはすでに、彼女の体からは呪いが消え去っていた。


『ではな、ルーシャ』

「えぇ…。
また来週、お茶会で」

『あぁ、楽しみにしている』


ラスはそう言うとふっと消えていった。
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