脇役だったはずですが何故か溺愛?されてます!

紗砂

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計画?

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結局眠ってしまったようで、私は司に起こされて目を覚ました。
心做しか少し楽になった気がするあたり、やはり疲れが溜まっていたのだろう。

あまり根を詰めるのも良くないな、と思いつつもしばらく忙しくなることを思い出しため息をつく。


「……ありがとうございます。

司、しばらくしたら4人分のお茶を用意して、ロイさんと私の部屋に来てください。
清水はすぐに真城を私の部屋へ呼んできてくれますか?」

「はい」

「承知いたしました」


2人に頼むと私は細く息を吐き、自室へ向かう。

自室へ行くと、ベットに倒れ込み、溜息を吐いた。

それは、私の背負う事になったものの重さを知ったからだった。
店を始めるということは、その店で働く者達の生活を背負うということを理解したからだ。

私なんかのような子供の背に背負うものではなかった。
だが、それが私の選択した道の先。
ならば、せめて少しでも長く続くように考えて行かなければいけないだろう。
少なくとも、店が潰れても皆の生活が狂わない程度には。


「……ままならないものですわね。
ですが、昔よりも断然、今の方がいい」


思わず、そう呟いた。
昔、前世の頃よりも今の方が幸せだと胸を張って口にできる。
今の私には最高の婚約者もいて、私を支えてくれる者もいるし、優しくてかっこいい兄もいる。


「お嬢、来たぜ」

「……入ってください」


2人分の足音と真城の声に、私はすぐに姿勢を正し、席についた。


「失礼するぜ、お嬢」

「失礼致します、咲夜様」


真城と清水を部屋に招き入れると、私は早速報告を聞く。


「宣伝については問題なく進んでるぜ。
評判もかなりいいみてぇだ。
まだ客は増えると思うぜ。

んで、もう1つの方だが……。
アレは頭が可笑しいと思うぞ?

なんたって、ここは乙女ゲームの世界らしい。
……んで、よりによってお嬢が悪役令嬢なんてほざいていやがる。
その場で殺してやろうと思うくらいにはおかしかったな」

「……咲夜様が悪役令嬢?
なんですか、その頭の中がお花畑の馬鹿は。
咲夜様が悪役令嬢などという馬鹿げたことをするはずがないでしょうに。
そのようなことをする前に私か真城が全てを終わらせるに決まっています」


その声すら聞こえなくなるほどに私は驚いていた。
私が悪役令嬢ということは、だ。
彼女は私を知っている。
私が私でない事は知らないだけなのだ。

彼女は、黒羽凛は……私と同じ、転生者。
まさか、今頃になって同じ転生者に気付くとは思わなかった。


「……真城、黒羽凛はこうも言っていませんでしたか?
『天也は攻略対象者』だと。
そして、『シナリオ通りではない』と」

「何でそれをお嬢が?
確かに言ってたが……」

「……いえ、前回、天也が付きまとわれていると言っていましたから。
彼女がここを乙女ゲームの世界だと言うのならその彼女が追いかけている天也が攻略対象者だと思っただけです。
もし、そうと仮定した場合、私と天也の関係を考えると彼女の言うシナリオとは異なっている、と思っただけです。
ですが……そうなった場合、彼女が次にどのような行動を取るかが分かりませんわね。

……清水、近々日本に渡ります。
予定を空けられますか?」

「承知致しました。
手配しておきます」


2人の事は信用しているが、転生の事を言うつもりは無かった。
いや、2人だけではない。
誰一人として教える気は無かった。


「お嬢、とにかくアレには気を付けた方がいい。
お嬢の婚約者も流石にキレてたからな……」

「あの天也が、ですか?」


私の前で天也がキレる事は無かったせいかとても意外に感じた。
それと同時に、一体何をすればあの天也を怒らせることが出来るのか。


「ま、俺もつい手が出そうになったけどよ。
あそこにいたのが俺じゃなく清水だったらきっと今頃殺されてたぞ」


……つまり、私を侮辱したと言うことだろう。
それに清水も気付いたらしく、顔を顰め肩を震わせている。


「……咲夜様、しばらくお暇を頂きたいのですが」

「清水……あなたが居なくなったら私はどうするのですか……。
私を支えてください、清水。
それにしても……相当の馬鹿ですね。
あの方は少なくとも、生徒会の方々は敵に回しましたわね」

「さ、咲夜様を……私が……。
ふふっ、私の勝ちです、真城」

「あぁ?
俺と清水じゃあ、役割が違ぇだろうが」


先輩達は私を可愛がってくれているからね。
それと、これが兄に知れればかなり不味い。
それこそさっきの清水よりも……。

……はぁ、何故私が私を侮辱しただろう黒羽凛の尻拭いをしなければならないのか。


「真城、お兄様の耳には……」

「もう既にお嬢のファンクラブのやつから報告されてるぜ。
それと、神崎の坊ちゃんからも、な。
向こうは向こうで動いてるらしい」


……まさか、奏橙が裏切るとは。
どう対処すれば1番穏便に済ませられるのか。
……余計な仕事が増えたな。
転生者どうし少し話したいし兄に何か手出しをされるわけにもいかない。
あぁ、面倒臭い。


「……まぁ、そちらは諦めるとしましょうか…。
やるとしてもまだ……。

真城、今日、明日はゆっくりと休んでください。
明後日からはまた、別の仕事をお願いしますわ」

「おう、んじゃ、また明後日に来ればいいのか?」

「そう、ですね。
では、明後日の夜に来てください。
その時は清水と一緒に」

「おう」

「畏まりました」


真城は短く返事をすると、退出して行った。
清水が残っているのはまだ他に話があると理解しているからだ。
それか、私から離れる訳にはいかない、とでも思っているのかもしれない。
まぁ、なんにせよ都合はいい。

そこに、ロイさんと司がお茶とお菓子を持って入ってくる。


「遅くなってしまい申し訳ありません」

「丁度いい時間ですから気にしないでください」


真城が出ていってすぐだったので良かった。
真城が戻って来なければいいが。


「さて、もうすぐ真城の誕生日ですし少人数ですがお祝いパーティーを開きたいと思うのだけど……」

「真城にそのような気を使わなくとも……!」


反対…のような言葉をあげたのは清水だった。
ただ、その目が羨ましいと言っているように見える。


「と言っても誕生日パーティーなのは建前。
皆、この頃休んでいるようには見えませんでしたからそのためでもあります」

「咲夜様……!!」

「それは……ケーキを用意しなければなりませんね」

「早々に準備を進めておきます」


清水は歓喜、感動といった感情を顕にし、司は楽しみという風に微笑んで、ロイさんは……まぁ、いつも通り少し固かった。


「真城の誕生日は来週の土曜なので午前中は私か清水が外へ連れ回します。
ですのでその間に……」

「承知いたしました」

「畏まりました」

「了解です」


それにしても、私の専属は随分増えたものだと思う。
少し前までは1人もいなかったのに今は4人もいる。
真城と清水から始まって司にロイさん。


私の周りはかなり賑やかになった。
だが、こういうのも悪くない、そう思いそっと微笑むのだった。


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