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デート2
しおりを挟む店から出てきた私と凛を見て、天也は呆れたように口を開いた。
「咲夜、お前……アイツと仲良くなったんだな……」
「ふふっ、ちゃんと話せば分かりますわ」
「はぁ……この無自覚人たらしが」
「何か言いました?」
何か言ったように思えたのだが……天也は気にするな、と微笑んだ。
まぁ、天也が言わないのならばそう大切な事でもない……というか、私には聞かせたくない事だったのだろう。
まぁ、いつか話してくれればいいし。
私達が水族館に戻る頃には丁度、ショーの時間帯となっていたので、それを見てからまた2人でまわった。
一通りまわった後、お土産を見ていた時、天也が不意に声をかけてきた。
「咲夜、お前イルカは好きか?」
「えぇ、好きですが……」
まぁ、一番好きなのは海月だけど。
とくにジェリーフィッシュが!
「なら、コレなんかどうだ?」
そう言って天也が見せてきたのは可愛らしいイルカのストラップだった。
きっと今日の記念に何か買わないか、ということなのだろう。
優しい笑みを浮かべている天也に、私はただ笑顔で頷いた。
「そうか、良かった。
……スマホに付けるか」
「なら、私もそうすることに致しますわ」
「……あぁ」
短く無愛想にも思える返事ではあったが、その表情は優しく微笑み、声も今まで聞いた中で一番柔らかく嬉しそうに感じた。
そんな天也に、胸がキュッと締まるのを感じ、目を細めた。
ドイツに留学してから時々感じるこの感覚。
それは、もう既に理解していた。
ただ、天也がたまらなく愛おしいのだ。
天也の声を聞くだけで、その嬉しそうな表情を見るだけで何故かどんどんと膨れ上がる愛おしさ。
天也に抱いていた想いを自覚してから、認めてからどんどんとそれは大きく膨れ上がっていく。
その後、私達はストラップを買い、水族館を出た。
そして、そのまま近くのカフェに入り、窓側の席でゆっくりと話をしていた。
「咲夜、さっきから表情が暗いが……どうかしたのか……?」
心配そうな天也の声色にハッとした。
いつの間にそんな表情になっていたのだろうか。
こんなにもこの時間が楽しいと感じているのに。
「何でもありませんわ」
「何でもないわけがないだろう。
咲夜、俺じゃあダメなのか……?」
捨てられた子犬のような目を向けてくる天也に私は根負けした。
そして、理由を話し始めた。
「……心配、なんです。
天也はモテますから……私の居ない間に他の方に天也を取られたら……と思うと」
「っ……馬鹿か。
言ったはずだ。
俺は、咲夜以外に興味はないと。
数ヶ月離れていて冷める程度の想いなら、あの悠人先輩の義弟になろうなどとは思わないし、何年も思い続けていたりはしなかった」
「……もう」
冗談交じりに付け加えた最後の方の言葉に、天也の婚約者という立場を思い出す。
「俺としては、咲夜が向こうで落としていないかが心配だがな……。
咲夜の事だ、婚約者がいると知られていても告白されそうだからな」
という言葉に嫌な汗が流れた。
……既にその告白を受けているとはとても言えない。
……いや、疑われるくらいならば今言ってしまった方がいいだろうか。
「……おい、何故目をそらす。
まさか、もう既に告白されているとかじゃないよな?」
「…………そ、そのまさかですわ……」
「……はぁ、やはりか…」
そのため息は何だろうか。
物凄く心外なんだが。
というか、地味に傷つく。
「ちゃ、ちゃんとお断り致しましたわよ?」
「当然だっ!!」
何故か怒られているのだが……私、別に悪くは無いと思うんだが。
「……まぁ、俺も咲夜の事を言える訳ではないが」
天也の方が私より告白された回数は多いからだろう。
……私には兄がいるし天也が婚約者になるまで私に近付く人を威嚇してたし……。
「まぁ、不安ではあるが心配はしていない。
咲夜のそばには悠人先輩もいるからな。
あの人がそう簡単に近付かせるわけがない」
……その言葉に物凄く納得した。
あの兄が何もしないわけがないと。
あのシスコンはどうやっても治ることがないのだから。
「まぁ、お兄様ですし……。
実はと言うと、天也の事もそう心配しているわけではありませんし」
凛が私と天也の事を認めたし、色々とやってくれるだろう。
あの凛の事だ。
天也に近付く令嬢を威嚇するくらいの事はやってのけるだろう。
まぁ、つまりのところそう心配する必要もないのだ。
「そうか」
気の所為か、先程よりも天也の視線が柔らかく感じた。
そんな天也の視線にどこか恥ずかしくなり、私は紅茶のカップを傾け自分の顔を隠した。
時間が流れるのは早いもので、もう既に外は暗くなっていた。
「店は取ってある」
「……いつの間に」
「お前が俺を外に出して2人で話し込んでいた時にな」
「……うっ……それは、すいませんでした……」
嫌味としか思えない言葉に、私は思わず謝罪の言葉を口にした。
まぁ、目の前で楽しそうに笑う天也を見ていると何も言えなくなるのだが。
「こっちに戻って来るのは1ヶ月ぶりだろうし和食にした」
「懐石料理ですか?」
「あぁ」
懐石料理か……アレはかなり時間がかかるが……まぁ、それだけ天也といる時間が長引くと思えばいいか。
天也も私と同じ事を狙ったのだろうか?
それとも全く考えずに?
まぁ、どちらにせよ日本料理を……と考えたのは私の事を考えてだろうからそれだけでかなり嬉しいのだが。
「天也、ありがとうございます」
「っ……あぁ」
天也は私から顔を背けてしまったが耳が赤くなっているのが見え、私はクスリと笑った。
その後、懐石料理を食べた後、私は天也に家まで送ってもらった。
そして、またしばらく声だけなのだと思うと急に寂しさが込み上げてくる。
天也は私の中にどれだけ根を張れば気が済むのだろうか。
これ以上、天也の事を好きにさせないで欲しい。
そうでなければ、私は………。
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