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土曜日デート
しおりを挟むそして約束の土曜日、私は約束していた時間よりも少し早めにその場所へと来ていた。
にも関わらず……。
「咲夜、おはよう。
早いな」
「おはようございます。
ですが、天也がそれを言うのですか?
もう……。
今日こそは、天也よりも早く来ようと思っていましたのに」
今日だって、そのために30分前に着くように来ていたのだ。
それなのに既にいるだなんて、そんなこと思うはずがない。
「どれだけ待ったのですか?」
「ん、そんなに待ってないぞ。
俺も来たばかりだったからな」
絶対嘘だろう、と思わなくもないがさり気ない心遣いを嬉しく思う。
「毎回それじゃないですの。
それで、私が信じるとでも思っているのですか?
……仕方ありませんし、今回は信じますが!」
これではまるでツンデレのようだ。
違うとは言いきれないのが辛いところだが。
「仕方ないだろう。
咲夜のことを考えていると時間を忘れるんだ」
よくもそう恥ずかしいセリフをサラッと言えるものだと私は感心する。
「からかわないでください!
天也、行きましょう?」
「あぁ」
そして、移動を始めようとするも、あることに気付く。
「行く場所は既に決まっていますの?」
そう、場所を決めていなかった。
それに気づき、私は天也に問いかける。
「いや、そもそも何を買うかも決まっていないからな……。
咲夜は決めているか?」
「私はCalmeで用意しようかと思っていますわ。
宣伝にもなりますし、オーダーメイドもありますもの」
それに、天也には言わなかったが、私は司やロイ、それに真城や清水を信頼している。
だからこそ、Calmeで選ぼうと思ったのだ。
だって、みんなが私に変なものを選ばせるわけがないし。
「Calmeか……。
それもいいかもしれないな……。
咲夜の店ならば信用出来るしな」
そう言って、天也はフッと笑った。
その、少し揶揄っているような視線に、少しだけ悪戯心が芽生えた。
……まぁ、何もしないけど!
しないじゃなくて出来ないの方だけど。
「でしたら、休業日にすれば良かったかもしれませんわね……」
「別にいいだろう」
「そうですか?
そういうのなら……。
ですが、その、後悔するかもしれませんわよ?」
後悔、というのは店が混んでいると予想できるからだ。
服飾の方も人気ながら、特にカフェブースの人気が凄かった。
「相変わらず凄い人気だな……」
「司の出すお茶は美味しいですもの。
それに、清水や真城、ロイの選んだものが並ぶ店ですから。
人気がないはずがありませんわ」
と、自信満々に言ってのけると、天也が隣で笑った。
「そういうところだろう」
「え?」
「咲夜のそういうところがあったからこそ、皆が着いてきて、この店が出来たのだろう。
なら、それは咲夜の力だ」
だなんて、天也が真っ直ぐに口にする。
本当にそう思っているのが感じられ、恥ずかしくなってくる。
何故、天也はこうも真っ直ぐなのか。
「……ありがとうございます。
ですが、皆で作った店ですもの。
私だけの力ではありませんわ。
それに……。
天也は私のことを買いかぶりすぎですわ」
だって、私は前世の記憶を頼っているだけなのだ。
天也がいう程、天也が思っている程、凄い人物ではない。
「買いかぶりなわけあるか。
咲夜の使用人に聞いてみれば皆同じことを言うだろう。
それだけ、咲夜が慕われている証拠だな」
少し呆れたように、だがどこか嬉しそうに口にする天也に、私も少しだけ笑みを浮かべた。
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