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学園
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しおりを挟む突然だが……俺は今、大変面倒な状況に置かれている。
それを作りだしたのは他でもない、俺の目の前にいるレクトール・ヘルナスだ。
こいつ、朝俺とリュークが教室に入ったら突然……。
「お前、カイとかいったな!
今日こそ私と決闘しろ!」
などとふっかけてきやがった。
せめてリュークにふっかれば良かったものを……。
俺は盾職だってのに……。
いや、俺は断った。
断ったのだが……何故か勝手にティードとリュークが受けていた。
俺とレクトールとの決闘を、だ。
そのため、俺は決闘を受けるしかなかったのである。
まぁ、理由は俺のことを馬鹿にされてって事だから怒るに怒れないのだ。
2人を煽ったレクトールには文句でも言いたくなるが……。
「…カイ、悪かった」
「申し訳無かったっす……」
シュンと肩を落として謝ってくるリュークとティードに俺は大きな溜息を吐いた。
その俺の溜息に反応してビクッと肩を震わせたりしていて面白い。
「…はぁ………。
今回だけだからな?
ったく……」
俺は苦笑をもらし、2人に気にすんな、と言うと2人共パァっと顔を明るくした。
……こういう子供っぽいところは変わっていない。
「ふん!
逃げずに来たようだな!」
「まぁ、リュークとティードが受けちまったしな」
「ふん、余裕ぶっていられるのも…」
「さっさと始めようぜ。
俺とリュークは、今日レヴィアともやんねぇといけねぇんだ。
そう時間がねぇんだよなぁ……」
俺のその発言が気に入らなかったのかレクトールは頬を引き攣らせていた。
「さっさと合図をしろ!」
「は、はいぃぃぃ!!
えっと……準備はいいですよね?
は、初め!!」
その合図で俺はナイフを取り出した。
速攻で仕留めようとしたのだ。
理由はいくつかあるのだが……。
あげるとしたらこの2つだろう。
1つは、俺の主な職業が盾職だという事。
だが、盾職では長期戦になってしまう。
普段ならば良かったのだが……。
だが、それはいつもなら、だ。
今日であるのならば話が別だ。
それは2つめの理由にも関わっている。
その2つめの理由とは、リヴィアを待たせてしまうということだ。
リヴィアとの約束の時間まではあと1時間しかない。
そのため長期戦に持っていきたくはなかった。
リヴィアを待たせれば……俺達の身が持たない。
それらの理由から俺は短期戦に持っていきたかったのだ。
そこで、だ。
冒険者としての職業を持っている俺はナイフを扱う事にしたのだ。
「はっ!
盾職がナイフだと?
ナメるな!!」
「残念だったな。
俺は盾職でもあるが……冒険者でもあるんだよ」
俺はニヤリと笑ったレクトールを見逃すことは無かった。
その表情に薄気味悪いものを感じナイフを引っ込め後ろに下がった。
「水獄」
その詠唱に俺はこいつの職業が魔導師であった事を思い出す。
だがその時にはもう既に遅い。
なぜならもう発動しているのだから。
この水獄という魔法は水の監獄を作り出す魔法だ。
だがその監獄を作り出すには捕らえる者を渦に呑ませなければいけない。
つまり、だ。
この渦に呑まれなければ問題はない。
その前に消してしまえばいいのだ。
俺は最初の頃に覚えた無属性魔法の陣を渦の下に描き始める。
この陣は消滅魔法と呼ばれる無属性の中でも最強と呼ばれる分野の魔法でその構造はとても複雑になっている。
だが、その分強力な魔法だ。
今回は水獄を消滅させるだけの範囲に収めるように調整している。
「時間の問題だな」
観客からそんな声が聞こえる。
俺はその声に心の中で同意を返す。
この陣が発動したらこいつは、レクトールはすぐに倒せると判断したからだ。
「カイ!」
リュークの声だった。
俺は魔法陣を描きながら水獄を避けるという作業をやっている中で耳を傾けた。
「負けるなよ!」
短い言葉。
それでもその言葉程嬉しいものは無い。
その言葉は俺の勝利を確信しているかのような言葉だったから。
「そうよ、カイ!
勝ちなさい!」
「頑張れっす!」
「頑張ってください!」
パーティーのメンバーが俺を応援してくれる声が聞こえた。
そんな事言われなくても勝つっての……。
ここで負けるとなればリヴィアになんて言われるか。
そう悪態をつきながらも俺の表情は明るい。
これほどまで心躍られる敵はそうはいないからな。
「ふん。
私の勝利は既に決まっているというのに…」
馬鹿馬鹿しい、とでも言うような口ぶりのレクトールに俺は先程まで忙しなく動かし、渦を避けていた足をピタリと止めた。
そして、不敵な笑みを浮かべる。
「それは違うと思うぜ。
お前はここで俺に負ける。
何が魔導師だよ。
俺の陣にも気付かねぇくせに。
ま、もう遅いんだけどな。
チェックメイト、だぜ」
そう、もう遅い。
既に魔法陣は完成しているのだから。
あとはトリガーを口にするだけ。
そんな俺に顔を顰めるレクトールを見ながらトリガーを口にした。
「発動しろ」
と。
その瞬間、水獄は消え去り残ったのは白い光を出している消滅魔法の陣のみが残る。
「なっ……」
「これで終わりだ!」
俺は再びナイフを取り出すとレクトールの首元に添える。
「し、終了!!
えっと、カイさんの勝利、です!」
そんな終了の合図でパーティーメンバーはなだれ込んでくる。
そして口々に労いの言葉をかけてくれる。
「カイ、お疲れ!」
「当然よね。
でも、まぁ、お疲れ様」
「お疲れっす!」
「お疲れ様でした!」
おう、と短く返事を返すと時間を確認した。
そして………。
「……うぉぉぉぉぉ!?
やべぇぇぇぇぇぇぇ!!
リューク、走るぞ!!」
「ん?
………うぉぉぉぉぉ!?
リヴィアにやられるぅぅぅぅぅ!!?」
俺とリュークは走り出す。
リヴィアとの約束まで残り15分という時間を知って。
その日、王都の町…というかギルドでは鬼の形相で待ち構えたギルドマスター、リヴィアに土下座を披露した2人の少年が訓練場で悲痛な叫びを上げていたらしい。
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