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学園
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しおりを挟む「カイ!!」
「分かっている!
アイギス!!」
俺達は思っていたよりもオークの集団に手こずっていた。
それは、オーク全体のレベルが高いのが一つの原因だ。
そしてもう一つは、数が多いこと。
そのせいでかなり魔力を使うのだ。
「カイ!
飲みなさい!」
「サンキュー、カリン!」
カリンは俺の魔力の残量を気にして魔力ポーションを渡してくる。
俺はそれを受け取り瓶を開けて飲むと苦味が口の中に広がってくる。
思わず顔を顰めるが魔力が回復してきたのが分かる。
「炎獄!」
「ヒール」
「魔力弾っす!」
後ろでそれぞれが支援、攻撃をしてくれるおかげなのか2人の時よりも動きやすく感じる。
だが、何よりも問題なのはリュークの体力だ。
リュークを見ると、もう既に息を切らせていて動きも鈍くなっている。
だが、俺やリュークの怪我が原因でリナにもそこまでの余裕はない。
「リナ!
ヒールは最低限でいい!
それよりリュークの疲労を消せ!
それと、俺へのヒールは必要ない!!」
「っ…はい!
メディック!!」
リナはリュークにメディックをかけるとその瞬間、リュークの動きは最初の頃と同じ様に素早いものに戻る。
「メディック」
リナは全員にメディックをかけるとヒールの準備に入った。
そこから、俺達は最初の頃の余裕を取り戻していく。
だが、これではキリがない…。
そう考えたのかカリンは俺とリュークに声をかけてきた。
「カイ、リューク!
一旦下がりなさい!
一発、大きいのを打つわよ!!」
その言葉にギョッとして思わずカリンを見ると、既に魔力が込められた炎の球が空に浮いていた。
それに焦るのは前衛で戦っていた俺とリュークの2人だ。
「うぉぉぉい!?
ちょっと待てぇぇぇ!」
「おいぃぃぃ!?
打つ気満々だろうがぁぁぁぁ!!」
俺とリュークは急いで撤退するものの、僅かにカリンの魔法の方が早く、熱風に俺たちは吹き飛ばされる。
「何すんだよ!?
危ねぇだろうが!?
最初に言えよ!」
「あっぶねぇぇぇぇ!
死ぬかと思ったぞ!?」
「言ったじゃない!!
それより……」
俺とリュークはカリンにくってかかるがカリンは後ろ、と指を指した。
言うにしてももっと早く伝えてほしかった。
俺達が振り向くとそこにはオークの死体とジェネラル7体。
「そろそろ休憩させてくれぇぇぇぇぇ!!」
「アイギスゥゥゥ!!
展開しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺とリュークは即座に戦闘態勢に入るとオークを狩り始めた。
突然だったせいでアイギスの展開でかなりの魔力を取られたが仕方ない。
これは…本格的にやばいかもしれない。
「あぁっクソっ!!
一体どんだけ倒しゃあ終わるんだよ!
次から次へと……うぜぇな!!」
「リューク、一旦下がるっすよ!
自分が変わるっす!」
「あぁ!
頼む!」
リュークとティードが交代し、前衛が俺とティードの2人になる。
俺はティードに合わせるようにアイギスの大きさを変えながらも陣を描く。
カリンや、リナ、ティードの3人には詠唱にしないのか、と聞かれたことがあったが俺はあれが苦手だった。
そのため、陣専門となっているのだがその分時間がかかるのだ。
それに陣ならば適正がなくとも威力は多少下がるが使えるからな。
「発動」
俺が使ったのはお馴染みの炎蛇だ。
この頃はかなりの頻度で使っていたからか少し上達し、前よりも自由に操れるようになってきた。
「助かるっす!」
「ティード、悪いがすぐに消える!」
「カイ、私が変わるわ!」
「おう、頼む!」
俺は炎蛇の全てをカリンに委ねると今度は防御のみに専念する。
それにより俺の負担は少し軽くなるが、オークの突進や魔法を受け流したりしている事で身体的ダメージが溜まっていく。
正直、足は既にキツくなっていて気力のみで立っている状況だった。
受け流しているからこそこうしていられるが受け流せなくなったら俺は終わりだろう。
「メディック、メディック!!」
リナは俺のその様子に気付いたのかメディックを数回重ねがけしてくれる。
それにより、足が軽く感じた。
いや、気の所為ではない。
先程まで重く、枷を付けられていたようにすら感じたのに今はそれが外されたように軽い。
俺は改めて回復術師であるリナの重要さを思い知る。
「ティード、もう大丈夫だ。
変わるぞ」
「も、申し訳ないっす……」
「いや、十分だ。
俺は、まだ戦える。
カイも行けるよな!!」
「誰にもの言ってやがる!
ジジイの加護ver.2と守護神の加護を持ってるんだぜ?
そうやすやすとくたばってられるかよ!」
「あぁ!!
それでこそ俺の知るカイだ!」
「そういうリュークこそ大丈夫なんだろうな!?」
「当然!!」
俺とリュークは揃って笑みを浮かべるとオークに向かって走り出す。
俺はもう既にアイギスを縮め、魔力の温存をしていた。
3人は後ろに下がり休憩をとっている。
魔力の回復もさせなければポーションがないからな。
俺とリュークはいつものように背中を合わせると一息つき、周囲を見渡した。
「カイ、剣は……」
「問題ねぇ!」
俺はアイギスから剣を取り出すとオークに切りかかる。
そろそろ防御の役割は要らないと考えたからだ。
「ブレイブ、ラプロテス」
リナは俺とリュークにそれぞれ攻撃力と耐久を上げる。
俺はオークの放つ魔法を避けながら懐へと入り、死角から攻撃していく。
それにより大分数が減り俺達も余裕を持ち、安定した戦いが出来るようになる。
だが、やはり……リュークとリナは精神的にきついだろう。
特にリナはかなり魔法を連発していたからな。
周りを見ながら戦うってのもかなり大変だな。
キツイな……。
みんな限界に近付いている。
このまま戦っていてもこちらの体力が持つかどうか……。
さて、どうしたものか。
カリンも俺から引き継いだ炎蛇を上手く操り敵の数を減らしていく。
その時だった。
先程よりも大きな音が洞窟内に響き渡る。
ドシン、ドシンと踏みしめるような音はだんだんと近づいて来ているようにも感じる。
「は、嘘だろ…。
今来るかよ……」
「一旦、外に出るぞ!」
「は、はい…!」
「えぇ…!」
「了解っす!」
俺達は一旦外に出て開けた場所へと移動する。
あのまま洞窟で戦えば天井が落ちてくるかもしれないと危惧しての事だった。
「今のうちに水とポーション飲んどけよ」
一応、リュークが注告すると俺は魔力ポーションと水を飲み、少しの間休憩する。
そして、キングオークの影が見えてからティードを別行動させた。
「……ティード、お前は回復次第、洞窟の中に行って子供を助けてこい。
そうすりゃあ後は最悪、逃げるなりここを壊すなり出来るからな」
「……了解っす」
俺達はティードを送り出すとキングオークを誘導し、自分達の戦いやすい土地へと移動していく。
幸いと言うべきかあまり知能はないみたいで行動も短絡的なのでこちらとしては有難い。
「俺は一度盾役に戻るぞ」
「リナとカリンは盾の後ろから頼む。
絶対にカイよりも前に出るなよ?」
「分かっているわよ」
「はい」
全員の息が整うと俺たちは再び洞窟の中に入った。
そして、戦いはオークの群のボス、キングオークとの戦いへと移行していく……。
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