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学園
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しおりを挟む「ぐっ……」
俺はアイギスを伝い、ずっしりとした重さとかなりの衝撃を感じながらも盾役としてしっかりと役割を果たす。
とはいえ、負担は増える一方であり、リュークも苦戦気味で士気は下がる一方だ。
だが、これがアイギスでなければ……きっとすぐに砕け盾役としての役割を果たせずにいただろう。
「カリン、魔力ポーションをあけてくれ」
「はい」
「サンキュ」
俺はカリンから受け取った何本めかになる魔力ポーションを飲むと瓶を捨て、陣を描く。
これはあまり得意ではないが…仕方ない。
前世で地雷と呼ばれたものに似た魔法を幾つも仕掛けていく。
5つを仕掛けたところで俺は見てしまった。
リュークがオークに吹き飛ばされるその姿を。
「リューク!!」
「う……あ…カ、カイ……わ、悪ぃ…。
……し、しくじっ、た……ぐっ……」
「リューク!?
いい、喋るな!
リナ、頼む!
カリンは下がってくれ」
俺は頭の中が真っ白になり何も考えられなくなってくるのを感じながら、声を掛けると今までで一番、大きいだろうと思うほどの声で叫んだ。
「何が、何が守護者だ!
何が加護だ!!
俺はダチの1人も守れねぇじゃねぇか!!
プライドなんてそんなもん捨ててやる!
クソジジイ、俺に大切なもんを守れるくらいの力を貸しやがれ!!
代わりに俺のもんなら何でもくれてやる!!」
結局、最後は人、いや…神頼みだ。
だが、それでもいい。
プライドなんて要らない。
ただ、大切なものを守れればそれでいい。
『なら、お主の職が代償じゃ。
代わりにわしは、新たな選択をやろう。
どうじゃ?』
「それでリュークを守れんのかよ」
『それはお主次第じゃな』
「……分かった。
いいぜ、くれてやるよ」
『よかろう』
そのクソジジイの声を聞きながら俺は新しい力が流れてくるのを感じる一方で、何か大切なものが流れていくのを感じる。
だが、そうでなければリュークを助けられない。
ならば……力なんていらない。
リュークを親友を助けられればそれだけでいい。
その力の使い方は自然と理解していた。
「開け、ワールドメモリー」
ワールドメモリーにはどうやらこの世界の事が全て書かれているらしかった。
俺は膨大な量の情報のせいで、酷い頭痛を感じながらも必要なものを探す。
そして、それは見つかった。
「リナ」
「は、はい!」
「今から俺が転写する魔法陣を使え」
「え……」
戸惑っていたリナだったが俺はただ、淡々とリュークを助けるための行動にうつす。
「転写」
「っ……!?」
リナは頭を抑えていたが、それがどういったものかを知ると目を見開き、俺を見つめてきた。
「リナ、急げ」
「…分かりました!」
俺はリナが陣を描き始めるのを確認してから同じように、ワールドメモリーから取り出した魔法を使おうとする。
「…ちっ、思ったよりもキツいな……」
攻撃を避けながら陣を描いているせいかそれともこの陣が特別複雑なせいか中々進まない。
陣を描き続ける事15分。
ようやく完成した。
まさか陣を書くだけで魔力ポーション2本を空にするとは思わなかった。
「開け、無限牢獄」
まるで、ブラックホールのようなものが出現するとその中にキングオークは吸い込まれる。
それをしっかりと確認してから俺は、意識を手放した。
そして、気づけば何度目かになる白い空間に、俺はいた。
クソジジイはいつもとは違い、少しだけ悲しむような表情をしている。
『お主は……お主は、友のためであれば人であることを辞める気か?』
「なんだよ、急に」
『いいから答えよ。
お主は人であることを辞めるつもりか?』
俺はいつになく真面目なジジイの言葉に少し考えてから返事をする。
なぜ、そんなにも悲しそうな顔をするのかわからない。
俺とジジイの間にはそんな深い関係はないはずだからな。
「……それしか助ける手がねぇならな」
『……そうか。
お主ならば、あやつをどうにか出来るやもしれぬの……』
「……あやつって、誰だよ?」
『……今のお主には関係はあるまい。
じゃが、お主はいずれ選択を迫られるじゃろう……。
友か、世界か、自身か、どの選択を選ぼうとお主の勝手じゃ』
ジジイはやはりクソジジイだった。
それが確認出来たのはいいのだが……それにしても何故このクソジジイはこんな悲しげな表情を浮かべているのだろうか?
いや、それよりも、だ。
今の俺に関係ないって事はつまり後には関係あるかもしれないって事だ。
それなら今教えろ、とは思うが面倒事にはあまり関わりたくない。
……特にこのクソジジイの案件は。
よし、知らなかった事にしよう。
俺は僅か数秒でそう決める。
だが、それよりも気になるのは……選択を迫られるってとこか。
世界か、友人……。
友人、か。
それは、リュークのことだろうか。
はたまたほかの人物か……。
『今、お主、わしを面倒などと思わんかったか?』
妙に鋭いジジイだ。
本当に面倒な奴だが一応リュークを助けてもらったからな。
「…ソンナコトネェヨ………?」
『何故、棒読みなんじゃ!?
しかも、疑問形じゃと!?』
棒読みと疑問形の部分を指摘されるが俺は笑顔を崩さない。
「……キノセイ、キノセイ」
笑顔で棒読みとは…何やら既視感があるが…まぁいいとしようじゃないか。
『だから何故棒読みなんじゃ!
お主程失礼な奴はいないぞ!』
「え?
そうか?
他の奴は頑張って耐えてたんだな……大変だっただろうに……」
俺が思わず口にした余計な一言に転生神のクソジジイはうるさく突っ込んでくる。
『耐えてたとはなんじゃ、耐えてたとは!
わしはこれでも神なんじゃ!
そこそこ信望もあるのじゃぞ!?』
「これでもとか一応って付けてる時点で駄目じゃね?
ってか、そこそこなんだな……」
またもや余分な一言を口にしてしまう。
俺は少しだけ後悔しながらクソジジイの言葉を受け流す。
『お主、絶対聞いとらんじゃろ!?』
「…キイテルキイテル」
『じゃから何故棒読みなんじゃぁぁぁぁ!!』
仕方ないだろう。
聞いていないんだから。
それにしても……相変わらずうざいジジイだな。
「はぁ……煩い奴だな」
『神に向かって煩いじゃと!?
失礼にも程がある!!』
「地獄耳だな」
俺が関心したように口にすると、クソジジイは自慢げに胸を逸らす。
……自慢する事じゃないと思うが。
『どうじゃ!
参ったか!』
「……あぁ、参った参った」
テメェの馬鹿さ加減とうざさ加減にな。
と、心の中で付け加えておくのを忘れない。
あぁ、やっとこれで終わる……そう思うと自然と溜息が出ていた。
一体それは、このクソジジイのせいなのか、それとも今までの疲れのせいか…どちらだったのだろうか。
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