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魔族襲来
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しおりを挟むついに、魔族が来る、そう言われた日がやってきた。
協力を得られたのは、3つの貴族家と教会関係者数人にギルドの知り合いが数人。
最初の予定に比べれば集められたもののそれでもやはり足りないと思う。
「カイ、こっからは別行動になるけど……」
「あぁ、お互い無事にな」
今回の作戦に当たっては俺とリュークは別行動をとることに決めていた。
その方が安全だと判断したからだ。
魔族が俺とリュークのどちらを狙うか分からないが…両方を狙ってきた場合、俺とリュークが1箇所にいるとその地点に敵も集まることになる。
そうなれば俺たちに勝ち目は無い。
そこで、だ。
敵の勢力を分散させるためにも俺とリュークは別行動にしたのだ。
「ティード、リナ…リュークを頼む」
「任せるっすよ!」
「が、頑張りますっ!」
俺がリュークと行動する2人に声をかけている間、リュークも俺と行動を共にする2人に声をかけていた。
「カリン、レクト、カイを頼むぞ」
「あぁ」
「えぇ」
本来であればカリンとリナを逆にするべきなのだろうが……。
魔族は俺を殺す事はしないだろう。
転生神の加護を持ってるからな。
俺が魔族ならば信仰する神の加護を持つ者を殺したりなんかはしない。
だが、リュークは違う。
リュークの加護は女神であり、勇者である事から命を狙われているのだ。
俺なんかよりも余程リュークの方が危険である。
そこで、リナはリュークのグループとなったのだ。
俺とリュークが別れるとリュークは教会へ俺はギルドへと向かう。
その地点で襲われた場合、皆が魔族と戦わなければならなくなるからだ。
そこで、リュークの場合は勇者ということで支援を受ける教会へ。
俺は1番関わりのあるギルドへ向かっているのだ。
ちなみにこの案を出したのはハミルである。
『協力者が少ないのなら、協力せざるを得ない状況に追い込んでしまいましょう』
と笑顔で告げた時にはハミルの裏の顔の怖さを垣間見た気がした。
そして、ハミルだけは絶対に敵にしないようにと決意したのだった。
……リュークの敵になるってんなら容赦はしないが。
「リヴィア、いるか?」
「おりますが……今はやめておいたほうがよろしいかと……」
つまり、リヴィアは今、剣でも振るっているのだろう。
そんな時に行けば巻き込まれる事になる。
……結果、俺たちはしばらく待つことにした。
「カイ、来ていたのならば声をかけてくれれば良かったものを……」
「……邪魔したくなかったんでな」
(声をかけたら訓練だ、とか言って切りかかってくるだろうが)
それなりに付き合いのある人物の事なのだ。
行動についてはよくわかっている。
リヴィアが俺の前に座り、魔族についての話を始めた。
「今回の魔族は幹部級だ。
お前とリュークは1度、魔族の相手をしたと思うが……。
あれより何倍も強い。
何度も言うようだが今のお前達では絶対に負けるだろう」
「……あぁ」
それは分かりきったことだった。
俺は勝手に決めてことがあった。
リュークにも、リヴィアにも言わずに決めたことが……。
裏切り者、そう呼ばれることも覚悟していた。
だが、それでも。
そんなことでリュークを守れるというのならば……俺はそれさえいとわない。
なんだってやってやる。
そんな覚悟が俺の中で出来ていた。
俺は、魔族と取引をする。
ここから撤退し、リュークに手を出さない事を条件にし、俺が自ら向こうに行くという取引を持ちかけようとしていたのだ。
それが、リュークの安全に繋がるのであれば……。
俺は、俺がどうなろうと構わない。
なんと言われようとリュークさえ無事ならば……。
俺が向こうにいようとも、リュークは必ず魔王のもとにたどり着く。
それに、俺が向こうから逃げ出してもいい。
だが、その為にはやらなければいけない事があった。
カリンとレクトには悪い事をするが……。
「カリン、レクト……悪い」
「何、言ってんのよ」
「……変なものでも食べたのか?」
2人に1度謝ってから俺はこの室内で魔法を発動させた。
「発動しろ、スリープ」
「なっ……カ、ィ……」
「っ……な……」
リヴィアには効かなかったようではあるが2人には無事効果があったようだ。
「……リヴィア、リュークの事頼むぞ。
俺は、多分…もう、リュークの側に居られねぇからな」
「……お前は良いのか、それで……」
「…あぁ。
もう既に決めた事だ。
俺はリュークの守護者だ。
とっくに覚悟は出来てる。
……じゃあな」
「…あぁ。
……済まない」
その言葉は何に対するものだったのか。
少なくとも俺には理解できなかった。
何故ならこれは俺が望んだ事なのだから。
俺しか出来ない事だったのだから。
別に、謝られる事じゃない。
「……行くか」
俺は1人でリヴィアの部屋を出ると王都の外へと出ていく。
俺は、今更ながらに俺が守護者と言う職業になったわけが分かった気がした。
きっと、リュークを守るためだ。
ここで、リュークを助けるため。
俺が守護者ではなかったら俺はきっとここにいなかっただろうからな。
何もない平原に着くと、後は待つだけとなった俺に語りかけてくる者が1人いた。
『…お主は、馬鹿じゃのぅ………』
クソジジイだ。
俺の目的を知っている数少ない奴だ。
「……うっせぇよ」
『お主がそこまでする必要は無いと思うが……』
「……リュークを見殺しになんて出来るかよ」
『……そうか。
そろそろ来るぞい』
「……あぁ」
俺は広い平原で魔族を待つ。
すると、ジジイの言う通り、本の数分で魔族は俺の前に現れた。
それも大人数で。
「貴方が転生神様の加護を持つ御方ですね?」
1人の黒いスーツに身を包んだ魔族が前に出て、訪ねてきた。
「……俺の加護は守護神の加護だ」
「あぁ、ようやく……ようやく転生神様の加護を持つ御方に出会う事が出来ました」
……こいつ、話を聞いてねぇ。
いや、俺も何を言ってんだろうな。
転生神の加護もちであることを否定するなんて……。
ティード……いや、最初の頃のレクトに近いな。
人の話を聞かないなら俺に確認した意味は何だったんだろうな?
「神子様、我等と共に魔王城へお越しください」
神子、それは加護持ちを表す言葉だった。
そして、連れていかれる場所は魔王城のようだ。
その時、リュークのいる方向で火柱が上がった。
……リュークの魔法だ。
ということは、向こうでは戦闘が起こっているという事になる。
思っていたよりも早い。
急がなければ……。
「……1つ、確認していいか?」
「はい、何なりと」
「向こうで戦っている奴らはあんたらの仲間か?」
「魔王様の命令を受けた者、という意味でしたら、そうです。
ですが……向こうの担当の者は捨て駒も同然。
殺してくださってかまいませんよ?
こちらとしてもそのほうが有り難いので」
やはり、向こうにいるのも魔族の様だった。
まぁ、それは当然ではあるが。
ってか、いいのかよ。
魔王軍、内部分裂してんのか。
「なら、魔王城にって話の答えはNoだ。
向こうに居るのは俺の親友であり、家族も同然なヤツなんでな。
俺は今から向こうに行かなきゃならねぇんだ」
「……そう、ですか。
まぁ、いいでしょう。
話でしたらその後でも可能ですから」
一瞬、そう口にした魔族の目が酷く冷たいものになった気がした。
だが、俺はそれを確認する間もなくリュークのいる場所へと飛んだ。
「リューク!!」
「っ……カイ!?」
俺はリュークと合流すると、すぐにアイギスを展開させた。
「アイギス!!
リュークを守れ!!」
「なっ……何故神子様が!?
あいつらは何をしているのだ!!」
今、リュークが相手をしている魔族の中でも特に偉そうな奴がそう叫んだ。
そして、俺を追ってきた魔族も到着したようで上から眺めていた。
ってか、俺の加護は全員知ってんのかよ。
しかも、容姿まで知られてんのか。
俺はリュークの状態を確認した後、諦めた。
リュークの状態は最悪と言っていい程にボロボロだったのだ。
「リューク、よく聞け。
いいか?
俺たちは何があろうと、誰が何と言おうと親友だ。
俺とお前の間には誓いがある限り、決して変わることはない繋がりがある」
「か、カイ……?
何を……」
「聞けっ!!
俺は何があろうと、何年、何十年たとうとお前を、リュークを信じる!!
だからお前もおれを、カイを信じろ!!
……力がない守護者で済まない。
こんな俺でも受け入れてくれてありがとう、リューク」
俺はリナにリュークの治癒を頼むとリナに預ける前にスリープの魔法でリュークを眠らせた。
「……悪い。
リュークを頼んだ。
しばらく荒れると思うが……頼む」
そう言って、俺はリナにリュークを預けた。
そして、黙示録からある魔法を俺とリュークにかけた。
これは、リュークが気付くまではステータスにも出ないし効果もない。
だが、リュークなら気付くと信じて。
『我、世界より汝に告げる。
汝リュークに我が言の葉を。
世界より汝の言の葉が我、カイへと届くことをここに。
尚、これは対象が気付くまで無効とす』
俺とリュークが確かに繋がったという感覚がする。
かすかな違和感。
その違和感があるということは確実に魔法が成功したということだろう。
「……リューク、信じているぜ」
眠っているリュークにそう言葉をかけると、俺はティード達に背を向け、魔族との交渉を始めた。
「なぁ、あんたら、俺が欲しいんだろ?
だったら、リュークや俺の仲間に手を出すな。
その代わりに俺はあんた達と一緒に行く。
それが認められないって言うんなら、俺はここで死ぬ。
あんたらはどっちを選ぶ?」
俺はナイフを自分の首元に当て、少しだけ皮膚を切る。
俺が本気だと思わせるためだ。
「なっ……カイ!?
何を言ってるんすか!?
そんな事したらリュークはどうなるっすか!」
「……だから、リュークを頼むって言っただろうが」
「そ、そんなの…認められるはずありませんっ!
カリンだって……!!」
「そうっすよ!」
俺はチラリとリナとティードを見て、リュークの治療が終わっているのを確認してから再びスリープの魔法を使った。
2人が寝たのを確認してから交渉を再開した。
「で、どうすんだ?」
「えぇ、それで構いません。
念の為、契約をしておきましょうか」
俺と関わりのある奴らに手を出さない。
ただし、向こうから手を出してきた場合には防衛のため、手を出す。
俺が神子として魔族と共に行動する。
基本は自由だが一部の行動に制限がかかる。
その2つの内容を確認し、契約を交わした。
最悪、俺は黙示録を使って後から契約内容をいじれるからな。
そして、この日、俺は人族を裏切り、魔族の側へとついた。
眠ったままのカイ達をみて、俺は自分ほ非力さの自嘲した。
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