転生したら守護者?になり称号に『お詫び』があるのだが

紗砂

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裏切り

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俺は、人族を裏切り、魔族側へとついた。




……と、いうのを演じなければいけなくなった俺であったが相変わらず来ないリュークからの連絡を今か今かと待ちわびていた。
いや、連絡するにしてもリュークは素直だからな。
単純なリュークは嘘を付けない。
つまり、俺が演じている事を魔族にバレる。
しかもリュークはバカだ。

……なんで俺はリュークを対象にして魔法を使ったのだろうか。

カリンあたりならば問題なかっただろうに。
貴族って腹芸得意そうだしな。

んじゃ、あれだな。
やるべき事は魔族にバレないようにしつつ、カリンへ連絡する事と魔族からの信用を得る事。
この2つが急ぎだな。
まぁ、連絡はレクトのほうでもいいが……説教とか長そうなんだよな。
バレる可能性が上がるし。

あと、時間をかけてやっていくのは、魔族と人族の協和だな。
俺は魔族の方を懐柔しながらやってくか。
んで、リュークが人間側。
丁度いいじゃんか。

まぁ、取り敢えずの行動が決まったところで魔族に連れてこられたやたらと豪華な部屋を見て溜息を吐いた。


「……まぁ、やれるとこまでやってみっか」


ただの平民だった俺が何故こんな事に巻き込まれているんだ……と思わなくもないがそれは俺が転生者という事もあるので仕方ないとも思える。


「……取り敢えずこの部屋、変えてもらお」


こんな豪華な部屋は居心地が悪すぎる。
教会よりも広いしやたら豪華なんだが。
もっと質素というか…日本でいうアパートの一室くらいでいいのに。
というか、この部屋より野宿のほうがいい。

俺が部屋を出るとそこに待機していた魔族が顔を出した。


「神子様、どうかなさいましたか?」

「…カイだ。
神子様ってのは止めてくれ」


しばらく睨みあっていたのだが遂に魔族が折れた。


「……………………承知いたしました」

「なぁ、部屋って変えらんねぇのか?
もっとさ、小さいとこがいいんだけど…」

「なりません」

「なぁ、頼むよ」

「…お…私にはその様な権限が与えられていませんので…」


どうしても無理そうなのでそこは諦める事にした。
まぁ、呼び方が変わっただけでマシだと思う事にする。


「…じゃあそれはいいや。
その代わり、敬語禁止な。
あと、名前教えて」

「……フェイルです。
敬語に関しては申し訳ありません」

「んじゃ、妥協して俺と2人の時は敬語は無しな」

「…まぁ、それくらいなら」


俺は小さくガッツポーズをするとフェイルは呆れたような目で俺を見てきた。
その後、この城の中をフェイルに案内してもらい、少しだけ剣の稽古をつけてもらってから部屋に戻った。


「カイ、魔王がお前を呼んでる」

「マジかぁ……行きたくねぇ……。
行かなきゃダメかな?」

「……冗談はやめてさっさと支度しろ」


フェイルはこの短い時間で大分遠慮が無くなってきたようだ。
敬語も完全になくなっている。
こっちの方が全然いいと思う。
冗談じゃないんだがなぁ……。


「ん…よし、行くか!」

「……はぁ」


訂正しよう。
大分遠慮がなくなってきたのではない、遠慮が無さすぎる!
いや、まぁ…こっちの方が有難いんだが…。

俺はフェイルに案内され、魔王のいる部屋へと入る。
開けた瞬間に大きな魔力に包まれるような感じがし、思わず身構えた。


「ん…あぁ、済まない。
これでいいだろう?」


魔王と思われる者が俺に声をかけたと思うと先程の魔力が消え去った。
魔力を押さえ込んだのだろう。

俺も緊張を解き、席に着く。


「先程は済まなかった。
私はディナート。
そこにいるフェイルの兄であり、魔王の称号を持つ者だ」


どうやらフェイルは魔王の弟だったらしい。
こんな口の悪い奴が…。
いや、魔王の弟だからこそなのか?

ってか、魔王は自分が魔王ってことに不本意そうだな。


「別にいい。
俺はカイ。
転生神と守護神の加護を持つただの人間だ」

「うん…?
それは普通とは言わない気がするが……。
まぁ、いいとしよう。

本題に入るが…カイ。
信じられないとは思うが…私は転生者だ。
昔、転生神に無理やり転生させられ再び魔王をやらされているがな。
私は元は地球という地の出身であったのだが……。
まぁ、とにかくだ。
私は転生神に恨みがあってな」


転生者……。
しかも同郷か。
なら、案外仲良くなれるかもしれねぇな。


「……あのクソジジイにか。
なら、俺と同じだな。
俺は都木涼だ。
あんたは?」

「……まさか同じだったとはな。
しかも涼かよ」


どうやら知っている奴のようだ。
だが、だとしてもこうも人が変わるものなのか。

そんなことを思っている中、ディナートは名を口にした。


「俺は、神宮冬夜。
……久しぶりだな、涼」

「冬夜…なのか?
……マジで?」

「マジだっての。
小動物好きでコミュ障だった涼の大親友サマだ」


その言葉に俺は冬夜本人ということを確信した。
俺が小動物好きっていうのはむこうじゃあコイツしか知らなかったし、自分で大親友だっていうのは冬夜しかいないからな。

冬夜は俺の数少ない友人だった。
よく孤児院に来てガキ共と遊んでいってくれた優しい奴。
だが、俺よりも先に肺炎をこじらせて死んだ奴……。
そんな冬夜とまた会えるなんて思ってもいなかった……。
しかもその親友は魔王で俺は勇者の親友。


「おい、涼?
涼ー?
……これはしばらく使い物にならないな…」


冬夜が苦笑をもらした。
その仕草も確かに、俺の知っている冬夜と同じだった。


「冬夜!
時間、あとどれだけ空いてる!?」

「あー…そうだな。
今日はもう空いてるぞ。
というより、基本暇だ」


時間が空いてるらしいことを知り俺は思わず笑みを浮かべた。


「よし、んじゃ今から2人でクソジジイをぶん殴りに行くぞ!!
殴り込みだ!!」

「おう……?
え、待って…そんな簡単に会えるもんなの?」

「クソジジイだからな」


答えになっていない答えを返すとクソジジイに呼びかける。


「おい、ジジイ!!
話し相手になってやるからこの部屋の奴らと一緒に頼むぜ!!」


次の瞬間、クソジジイの声は聞こえはしなかったものの場所は変わっていた。
いつものあの白い空間に。


「……あぁ、ここ、見覚えがある」

「もうすぐあのクソジジイが来るぞ」

「……待ってくれ、なぜ俺まで巻き込まれているんだ?」


顔を引き攣らせているのはフェイルだ。
そんなフェイルに俺と冬夜は顔を声を合わせて答えた。


「「そこに居たから」」

「………はぁ…外に出てれば良かった…」


フェイルは兄と友人を見ると重い溜息を吐いたのだった。


『もうそろそろ良いかのぅ……?』

「……チッ」

『舌打ち!?
今舌打ちしたじゃろ!?
お主から呼んでおきながらその態度は……』


やはりうるさいジジイだ。
俺は隣の冬夜と顔を見合わせると頷いた。
そして……。


「「このクソジジイが!!」」

『ンギャ』


俺と冬夜は2人してジジイの顔面を殴りつけるとスッキリとしたように息を吐いた。
そして、吹っ飛んでいくジジイを見てザマァ…などと思っているとジジイが戻ってきた。
少し涙目になっている。


『何をするんじゃ!
年寄りは労われとお主らの故郷でも……』

「はっ、俺らの今の世界はレントキャーンなんだが?」

「あぁ、カイの言う通りだな。
それに、お前以外の年寄りならまだ、労わってやるぞ?」

『な、なんじゃ……。
折角、人が善意で……』


善意、その言葉に俺はジジイに掴みかかった。


「だからっつってもやり方くらいあるだろ!?
穴から落とすってなんだよ!?
しかも俺につけてる加護、ver.2や職業の?とか何なんだよ!?
いい加減消しやがれこのクソジジイが!!」

「え、何それ。
俺の時は水の中に落とされたんだけど。

というか、レントキャーンに来て結構経つけどver.2とか?とか聞いた事ないんだけど」


どうやら俺と冬夜の時では異なるらしい。


「ふっ…ってか、涼、お前やっぱ変わんねぇなぁ……」

「……冬夜も変わんねぇだろ」

「……そうか?」

「あぁ」

『…そろそろ離してくれんかのぅ……』


ジジイの胸ぐらを掴んでいたことをすっかり忘れていた俺はバッと手を離した。
そのせいかジジイは勢いよく頭を地に打ち付けた。


『いったぁぁぁぁぁぁぁ!?
何をするんじゃ!』

「何って…離せって言われたから離しただけだろ?
なぁ?」


俺が冬夜に同意を求めると冬夜もうなずいた。


『お主のせいで頭をうっ…』

「いや、勝手に打ち付けただけだろ……」

『……もうよい!
さっさと戻らんか!!』


そして、俺たちは元の場所へと戻った。


「……なぁ、涼。
お前、戻りたいか?」

「は?」

「……俺はお前にここにいて欲しい。
けど、お前が勇者のとこへ戻りたいって言うなら俺は……」


その、自分の気持ちを押し殺したような冬夜の声に俺はハッと息を呑んだ。
正直、リュークの事が気がかりではあった。
だが、リューク以上に今の冬夜のほうが危うい。
そう感じた。


「……なぁ、冬夜。
魔族と人族で条約とかって結べねぇかな?」

「条約、か……。
俺はいいんだが…こっちの老人共と人族の国の方がな……。
……向こうにとっては俺等魔族は絶対悪、なのだろうな」


悲しそうに顔を歪める冬夜は確かに魔王なのだと理解させられた。
俺の知る冬夜では無くなってしまったような気がして、少しだけ寂しさがこみ上げてくる。


「だったら、俺がやる。
魔族にはジジイからのお告げだとか言えばどうだ?
それなら渋々ではあるが納得するんじゃねぇの?」

「だが…それでも魔神の方が、な……」

「あー…だが、魔神はジジイの親友だろ?
なんとかなるんじゃね?」

「……待て、その話はどこから?
魔神が転生神の友…?」


どうやら冬夜は知らなかったらしい。
いや、冬夜だけでなく、フェイルも知らなかったようで目を見開いている。


「……よし、じゃあそっちは任せる。
これ以上居いたら怪しまれるだろうしな。
涼、転生の話は……」

「分かってる。
誰にも言わねぇよ、冬夜…いや、ディナート。
ただ、俺の事についてはリューク……勇者には話した」


俺は今の冬夜の名を呼んだ。
すると、冬夜はフッと笑った後、不安そうな表情で俺を見た。


「…あぁ。
また、会えるか?」

「おう。
ってか、俺、基本何もやる事ねぇし」

「…そうか。
じゃあ、また連絡する」

「待ってるぜ」


全ての予定が狂ったのを感じながら俺は与えられた部屋に戻ると、取り敢えずベットにダイブした。
あれだな、逃亡については無しだな。
んで、一度あいつを連れてリュークのとこ行ってわけを話すか。
最悪、転生神使って向こうの世界で会うか。


「……おい、俺とお前しかいないが…少しは気にしたらどうだ?」

「……んー」

「…まぁ、いい。
…………カイ…兄さんの事は頼む」

「フェイル?」


何やら変な言葉を残して部屋を出ていったフェイルに俺は再び頭を回転させた。
ったく……俺は知能派じゃねぇんだけどな……。

まるで、この先に何かおこる様な口振りだったフェイルは一体何を知っているのだろうか。
俺は、どんな行動を起こすのが正しいのか。
どうすればリュークと冬夜の2人と過ごせるのか。

何より、リュークと冬夜を戦わせない方法は……最善策は何なのか。


全てが分からないことだらけでとても行動は起こせそうにない。

だが、だからこそ出来る事を探し少しでも選べる手を増やしていかなければいけない。


だが、まぁ……今日は疲れたし取り敢えず行動は明日からにしよう。
あと、冬夜にアイギスの練習について相談するか。
どうせなら魔族の軍とかの訓練に混じりたいな。


意外と満喫できそうだ、などと思い、俺は笑みを浮かべるのだった。

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