36 / 70
本編
29
しおりを挟む「エリス、お前は王となるつもりか?」
突然、お父様が私問いかけてきました。
そういえば、以前お父様には王となりたい、と言ってしまったのでしたね。
すっかり忘れていました。
「いいえ。
王となるつもりはありません。
私が王となり、やるつもりであったことはフィーリン商会でも出来るようなことです。
ならば、無理に王となる理由はありませんし、フィーリン商会の会頭が私である限り国に害を与えることにしかなりませんから」
私は、お父様の目を見てそう告げると、お父様は満足そうに頷きました。
私が思うに、お父様は最初からそれが分かっていたのだと思います。
だからこそ、私が王となることに反対していたのでしょう。
その点、私はそれに気付くことが遅すぎました。
やはり、お父様にはまだ届きませんね。
「と、いうことだ。
エリスを無理に王へと推すのはやめてもらおうか」
「むぅ……とは言ってもだな……」
普通であれば王となりたいという者の方が多いのでしょうが、公爵家は違います。
王の傍に仕え、その仕事を見てきたからこそこうして押し付け合いとなっているのです。
「お父様、食事も終わったようですし、ケーキを用意致します」
「あぁ、頼む」
私はお父様に声をかけると、厨房へ行き、ケーキとお茶の準備をして戻ります。
「お待たせ致しました」
「今日のケーキはなんだ?
また、フィーリン商会の新作か?」
「そのつもりではいますが……分かりません。
今日は、木苺を使用したタルトとスポンジの両方のタイプを用意致しました。
お好きなタイプを選んで頂く形になります。
どちらにしますか?」
私は皆さんに好きな方を選んで頂くように告げると、自分のものはタルトとスポンジを少なめに両方を選び、先に切り分けました。
「タルトのみを頼む」
「あら、じゃあ私は両方いただこうかしら?」
「僕はタルトで」
「俺はスポンジ」
と、お父様とお母様が決めると、他の方々も決めていきました。
結果的に、タルトの方が人気のようです。
「羨ましいわぁ……エリスちゃんがいれば新作をいつでも食べられるのでしょう?」
「フィーリン商会の新作はすぐに売り切れてしまいますものね」
分かってはいましたが、奥方達はフィーリン商会のケーキを大分気に入られているようです。
取り置き可能にしてもいいのですが、そうなると全て取り置きとなってしまいそうなのですよね。
そうなってしまうと、他国からのお客様の手に行き渡らなくなってしまいますからそれだけは避けたいのです。
「先に仰っていただけばお届けいたしますが……」
「まぁ……!
嬉しいけど、よろしいの?」
「公爵家の分のみでしたら問題ありません。
私の方にご連絡いただければ、商会ではお取り置きできなくともこちらでご用意させていただきますから」
私が作ってしまえば問題にはなりませんから。
ただ、その代わりに少しだけご協力をお願いすることがあるかもしれませんが。
「という訳ですので、私は王となり公務に費やしている時間はありませんので諦めてください。
私はフレイ様を王へと推薦致します」
そして、私はついに、他の公爵方の前でそう口にしました。
0
あなたにおすすめの小説
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる