王族なんてお断りです!!

紗砂

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本編

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「エリス、お前は王となるつもりか?」


突然、お父様が私問いかけてきました。
そういえば、以前お父様には王となりたい、と言ってしまったのでしたね。
すっかり忘れていました。


「いいえ。
王となるつもりはありません。
私が王となり、やるつもりであったことはフィーリン商会でも出来るようなことです。
ならば、無理に王となる理由はありませんし、フィーリン商会の会頭が私である限り国に害を与えることにしかなりませんから」


私は、お父様の目を見てそう告げると、お父様は満足そうに頷きました。
私が思うに、お父様は最初からそれが分かっていたのだと思います。
だからこそ、私が王となることに反対していたのでしょう。

その点、私はそれに気付くことが遅すぎました。
やはり、お父様にはまだ届きませんね。


「と、いうことだ。
エリスを無理に王へと推すのはやめてもらおうか」

「むぅ……とは言ってもだな……」


普通であれば王となりたいという者の方が多いのでしょうが、公爵家は違います。
王の傍に仕え、その仕事を見てきたからこそこうして押し付け合いとなっているのです。


「お父様、食事も終わったようですし、ケーキを用意致します」

「あぁ、頼む」


私はお父様に声をかけると、厨房へ行き、ケーキとお茶の準備をして戻ります。


「お待たせ致しました」

「今日のケーキはなんだ?
また、フィーリン商会の新作か?」

「そのつもりではいますが……分かりません。
今日は、木苺を使用したタルトとスポンジの両方のタイプを用意致しました。
お好きなタイプを選んで頂く形になります。
どちらにしますか?」


私は皆さんに好きな方を選んで頂くように告げると、自分のものはタルトとスポンジを少なめに両方を選び、先に切り分けました。


「タルトのみを頼む」

「あら、じゃあ私は両方いただこうかしら?」

「僕はタルトで」

「俺はスポンジ」


と、お父様とお母様が決めると、他の方々も決めていきました。
結果的に、タルトの方が人気のようです。


「羨ましいわぁ……エリスちゃんがいれば新作をいつでも食べられるのでしょう?」

「フィーリン商会の新作はすぐに売り切れてしまいますものね」


分かってはいましたが、奥方達はフィーリン商会のケーキを大分気に入られているようです。
取り置き可能にしてもいいのですが、そうなると全て取り置きとなってしまいそうなのですよね。
そうなってしまうと、他国からのお客様の手に行き渡らなくなってしまいますからそれだけは避けたいのです。


「先に仰っていただけばお届けいたしますが……」

「まぁ……!
嬉しいけど、よろしいの?」

「公爵家の分のみでしたら問題ありません。
私の方にご連絡いただければ、商会ではお取り置きできなくともこちらでご用意させていただきますから」


私が作ってしまえば問題にはなりませんから。
ただ、その代わりに少しだけご協力をお願いすることがあるかもしれませんが。


「という訳ですので、私は王となり公務に費やしている時間はありませんので諦めてください。
私はフレイ様を王へと推薦致します」


そして、私はついに、他の公爵方の前でそう口にしました。
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