43 / 70
本編
36
しおりを挟む後日、私は王妃教育のために再び城へと訪れていました。
そして始まったわけですが……。
「あら、私からエリスさんに教えることは無いようですね」
と、軽いテストを受けた後、そう言われてしまいました。
ただし、貴族家や流行の情報集め、雑務などの書類仕事に関しては別のようですが。
「エリス、聞いたぞ。
もう既に教えることはない、とな。
流石だな」
アルは私を見つけるなり、そう口にして微笑みました。
その優しげな表情に、思わず私の表情も緩みます。
「そんなことはありません。
もっと学ばなければいけないことが沢山ありますから。
まだ、アルの隣に立つには足りません」
「そんなことは無い。
エリスは良くやってくれている。
私はそんなエリスだからこそ選んだんだ。
だから、あまり頑張りすぎるな」
やはり、アルは優しいですね。
いえ、優しいというよりも甘い、と言うべきでしょうか。
私が無理をしないとは思っていないことが気になりますが。
とはいえ、それは私自身の行動が原因なのでしょうから諦めましょう。
「それは、私よりもアルの方だと思いますが。
私は自分の限界は理解しているつもりですから」
「その辺に限っては信用出来ないからな。
限界は超えていないと自分に言い聞かせて無理をするだろう?」
否定出来ませんね。
自分のことであればまだしも、店や従業員達、アルなどの親しい間柄の人に関連することであればきっとそういった行動をするでしょうから。
「全く、少しは自分を甘やかせ。
そうでなければ心配するだろう?」
呆れたような口調ではありますが、アルは優しげな目を向けてきました。
ですが、私がもし、自分を甘やかさなくともアルが甘やかしそうなので問題ないと思うのです。
アル以外にも、アリスは勿論、商会の幹部職に就いている者達や家族に屋敷の者達と私を甘やかす者達が多く居るのです。
そんな中で、私までもが自分を甘やかしてしまえば私はすぐにでも堕落してしまうでしょう。
それが分かっていて、自身を甘やかすなんて出来るはずがありませんし、するつもりもありません。
「あぁ、そうだ。
エリス、再来週の夜会には参加するの
か?」
再来週の夜会ですか。
あまり好きではありませんが、アルの婚約者ですし、何よりこの国の貴族を知ることにも繋がります。
そうとなれば、参加しないわけにもいかないでしょう。
「参加するつもりです」
「そうか。
なら、エスコートは私の役目だな。
ドレスは何色がいい?
私のものと合わせさせなければいけないから贈ろう」
アルは金髪に赤い瞳をしています。
それを考えると黄色か赤、でしょうか?
「薄めの黄色、でしょうか?」
そう言ったところで気付きます。
まだ、私とアルは婚約者になったということを公開していません。
それを考えるとやめておいた方がいいでしょうか?
「薄めの黄色、だな。
分かった」
そう思ったのですが、最早言えませんね。
そういえば、こうしてドレスを贈ってもらう、というのは初めてな気もします。
どこかの馬鹿はそのようなことをしてくれませんでしたから。
別に良いのですが。
あの方の贈り物など着たいとは思いませんし。
0
あなたにおすすめの小説
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
答えられません、国家機密ですから
ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
ぱんだ
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる