王族なんてお断りです!!

紗砂

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本編

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数日後、アリスは私の頼んだ事を終わらせ、報告書と雇用契約書を持ってきました。
雇った料理人は18人中15名、残った3人はどうやら前科があるようです。
一人は盗賊、二人は暴力沙汰のようですね。
後者の方々はまだわかるとしても、前者の方は一体どのような経緯で料理人へとなろうと思ったのでしょうか。
もともとそのつもりでしたが、これは話を直接聞いた方がいいかもしれませんね。

そう判断すると、私はアリスに頼み、夜会の次の日にもう一度面接を行う事を知らせてもらいました。
そんな私の決定に不安そうにしてはいましたが、反対の言葉を口にすることはありませんでした。


「エリス様、新しく雇った者のうち、3名は即戦力になるかと思いますが、支店へと入れる前に講習といった形をとっておきますか?」

アリスの言葉に、改めて考えます。
人手不足はあるかもしれませんが、料理人の中にはやけにプライドの高い者もいますから一度見ておいた方が無難でしょうか。
とはえ、あまり時間もありませんから軽く私が見た後、他の者に任せるような形になってしまうでしょうが。


「では、そのように手配をお願いします。
場所は、支店の試作用の厨房で行うようにします。
作るものは、シンプルにショートケーキにするつもりです」

「承知いたしました。
誰をつけますか?」


誰をつけるか、というのは見張りを兼ねてという意味でしょう。


「そうですね。
では、スフィアにお願いしましょう。
アリスには料理人以外の方の面接をお願いします」

「承知いたしました。
エリス様のご期待に添えられるような人材を確保して見せます!」


少々心配になってきましたが、大丈夫でしょうか。
アリスのことなので大きなミスはしないと思いますが、空回りしそうな雰囲気ではありますね。
そのようなことは無いと信じたいですが。


「そういえば、キース様はどうなっていますか?」


あの日、キース様の王位継承権が破棄された後、私はすぐにフィーリン商会の情報部から一人、キース様につけるように命じてありました。
もちろん、アリスが傷つけられたのですからあの程度で終わりにするつもりはありません。
とはいえ、やりすぎてこちらが潰れてしまうなんてことがあってはいけませんから程々にするつもりではありますが。


「あの方でしたら、現在北の地で暮らしているそうです。
報告によりますと、なぜかジャガイモ畑を作りはじめただとか」


ジャガイモ畑に至るまでの経緯が知りたいのですが。
あの無駄にプライドの高く面倒でバカな王子だったキース様が農夫?
一体なにがあればそこまで行き着くのでしょうか。


「どうやら、王位継承権を剥奪されてすぐにラミアという女狐に捨てられたようです。
その後、一旦は山賊になるも、仲間(笑)に裏切られ身ぐるみをはがされた上で無一文で放り出され、その後は食べるものもなくさまよっていた後、倒れられ、近隣の部族に運ばれたそうです」


すでに私が行動に移す前にかなりの不幸に襲われていたそうです。
ですが、元とはいえ、王子ともあろうお方が山賊になるなどというのはどうなのでしょうか。


「その後、その部族では怪しげな呪術の生贄として重宝されていたようですが、本人は気づく様子もなく、ジャガイモ作りに勤しんでいます」


怪しげな呪術とは一体なんなのでしょうか。
それにしても、かなりひどいですね。
最後にたどり着いた部族で、まさかの生贄扱いをされるとは。


「本人はとても楽しそうに暮らしていらっしゃるようですが、どういたしますか?
エリス様が望むのであれば、どのようなことでもやってみせますが」


さらっと口にしましたが、それは言外にやれと言われていませんか?
気のせいならばいいのですが、アリスの満面の笑みを見ていると、気のせいだとは到底思えませんね。


「監視と報告のみでお願いします。
ただ、キース様が生贄とされそうになった時は助けてあげてください。
その後、フィーリン商会で使いますから。
多少は役に立ってくれるでしょうし、何かしらに使えると思いますから」

「大変不本意ですが、承知いたしました。
ですが、その場合なんの仕事をお与えになるおつもりでしょうか?」

「キース様の能力次第ですが、あれでも交渉上手かったのでそのあたりの補佐に回そうかと。
それが無理なようでしたら、雑用に回すつもりです」


その辺りについては問題はないと思いますが。
もうすでにそれだけ裏切られ、命の危機にさらされたのであれば、死に物狂いで新しくもたらされた居場所を守ろうとするでしょうから。
そうなれば、きっとあの頃よりも使えるようになるはずです。


「なんにせよ、そんな甘い仕事を与えるつもりはありませんが」


一番厳しいものを回すつもりですから。
使い潰さないように注意しなければいけなくなるでしょうが、それだけでかなりの労働力は得られるでしょうから。
さて、キース様はいったいどの程度まで耐えられるのでしょうか。
少し、楽しみが出来ました。
あまり褒められた楽しみではないことは理解しておりますが。
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