王族なんてお断りです!!

紗砂

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本編

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エールへと到着すると、少し痩せたルアンと楽しそうなお父様が出迎えてくれました。
ルアンの様子にアルは驚きを隠せずにいますが、私も通った道なのでせいぜい気の毒と思う程度なのですが。


「お待ちしておりました。
エリス、よく帰ってきたな」

「あ、あぁ。
フォーリア公爵、世話になる」

「お父様、ただいま戻りました。
お元気そうでなによりです。
ルアンも、お疲れ様です」


私がお父様に挨拶をした後、ルアンを労ったのは、その苦労を知っていたからです。
あの地獄はかなりキツかったのを覚えていますから。


「エリス……はっきり言ってなめてたよ。
ごめん。
だから助け……」

「はっはっは!
ルアン、ここに居たのか。
探したではないか!
む?
あぁ、エリス嬢にエリンスフィールの。
済まないな、ルアンはこれから勉強があるのだ。
借りていくぞ。
ほら、さっさと行くぞ、ルアン!」


哀れ、ルアンは泣きそうな顔をしながらルースベル公爵に引き摺られていきました。
気の毒としか言い様がありませんし、私にあのルースベル公爵からルアンを助け出せるような勇気も、そのような力もありません。
それはアルも同じだったようで、呆然とルアンが助けを求めてながら引き摺られていくのを見ていました。


「……さて、屋敷に入るとしようか」

「はい、お父様。
アリスはゆっくり休むようにしてください。
アル、カイン様、屋敷の中を案内致します」

「申し訳ありませんが、エリス様のご好意に甘えさせていただき、少々休ませていただきます」


アリスは私の言葉に従い、休むために、部屋へと向かいました。
その、あまりにもあっさりとしすぎているようにさえ感じる言葉に安心したと同時に不安にもなりました。


「お、おい、その……ルアンは本当に大丈夫なのか?」


そう尋ねてきたアルは、心配そうな表情を浮かべていました。
その表情に、優しいと思う反面、ルースベル公爵より教わっていた時期を思い出し、背筋に寒気が走ります。


「問題ありません。
娘の時よりも楽なくらいですからな!
あの程度で音を上げるとは、ルアンもまだダメだな」

「そうなのですか?」

「あぁ、まだルアンは他国へ無一文で放り出されるところまでいっていないからな」


ということは、まだ基礎の段階ということなのでしょう。
基礎を教えこまれ後からが本当の地獄ですから。

私やフレイ様、ラルフの場合はいきなり他国へと連れていかれ、それぞれ別の地点から無一文でエールの王宮まで帰ってこい、という無理難題を言い渡されましたから。
その時は、見えないだろうが護衛を付けている、と言われましたが、それが後々嘘だったと知り、私とフレイ様が怒ったのを覚えています。

それをお父様に言うと、殴り込みに行ってしまい、止めるのが大変でした。
それを考えると、まだそこまでいっていないだけマシだというものです。


「なんというか、かなり酷いな」

「ですが、それにより実際にこの目で見て、触れることが出来ましたから。
多少の恨みしかありません」

「多少は恨んでいるんだな」

「下手をすれば、誘拐されていましたから」


あの時のルースベル公爵は、よく子供だけで行かせようなどと思ったものだと思います。きっと、誘拐等といったことは頭から抜けていたのでしょうが。
その証拠に、帰ってきた後のルースベル公爵は痣が目立っていましたから。
きっと奥様から怒られたのでしょうね。


「また今回も同じようなことにならなければ良いのですが」


私は、誰にも聞こえぬほど小さな声で、そう呟きました。
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