王族なんてお断りです!!

紗砂

文字の大きさ
54 / 70
本編

46

しおりを挟む

結局、カイン様とルーファスはこちらにいる間のみですが、エンドルース公爵にお世話になるそうです。
そして、2人の変わりとでもいうように、ラルフがエンドルース公爵に連れてこられていました。


「エリス嬢とアルス王子を頼むぞ、ラルフ」

「おう!」


エンドルース公爵はそれだけ口にすると、カイン様とルーファスを連れ、城の方へと向かいました。


「そういや、俺はアルス王子の護衛ってことでいいのか?」

「あぁ、頼めるだろうか?」

「おう!」


それから少し、アルとラルフは話していましたが、流石はラルフ、というべきなのでしょうか?
既にアルと打ち解けているようです。
まさか、こんなに早く打ち解けるとは思ってもいませんでした。


「では、私は商会の仕事があるのでラルフに王都を案内していただいてはどうでしょうか?
前回はお土産を見ていて回れませんでしたから」

「俺はいいぜ」

「では、頼む」

「おう!」


私の提案で、アルはラルフにこの王都を案内してもらうことになりました。
正直、アルにずっと居られると仕事がやりにくいですから。
言い方は悪くなりますが、ラルフを利用させていただくことにしました。
勿論、ラルフだけでは心配なので、ニールを影からつけますが。


「では、行ってくる。
エリス、無理はしないようにな」

「無理をしようとしても、アリスが止めるでしょうから問題ありません。
行ってらっしゃいませ」

「んじゃ、また後でなエリス!」


私はラルフとアルを見送ると、すぐに店内へと戻り書類をアリスと共に片付けます。
その書類の中に、辞職願いが一枚、紛れ込んでいました。


「これは、詳しい話を聞かなければなりませんね」

「どうかしたのですか、エリス様?」


私の声を聞いて、書類に向かっていたアリスが顔を上げました。
アリスに、辞職願いを渡すと、顔を顰めました。


「こちらに呼びますか?」

「えぇ、お願いします」


人手不足の今、辞職されるのは困ります。
それに、もし他の商会へ、となるとこちらのレシピが漏れる心配もありますから辞職されるのだけは避けたいのです。
それに、『来る者拒まず、去るもの追う』というのがフィーリン商会の方針ですから。


「エリス様、お連れ致しました」

「入ってください」

「し、失礼します」


彼女、ミリスさんは若干緊張気味で部屋へと入ってきました。
ですが、その表情は緊張というよりも恐怖に近い、そう感じます。
これは、私がフィーリン商会の会頭だからなのか、それとも貴族だからなのか、もしくは、もっと他の何かがあるのか。


「どうぞ、座ってください」


私が座るように促すと、彼女はおずおずとソファーに腰掛けました。
そして、アリスがお茶をいれてきたところで話を始めます。


「さて、話というのはこちらの件です。
辞職願いが提出されていたのですが、これは本当にあなたの望んだことでしょうか?」


私の出した辞職願いに、彼女はピクリと反応しました。
そして、少し悲しげに瞳を揺らしながら口を開きました。


「っ……は、はい。
私の、望んだことです」


これは、明らかな『嘘』です。
私でも分かるほどの。
ならば、そうせざるを得ない何かがある、と判断して良いでしょう。
となれば、私だけでは心細いですね。

私は、何も言わずに席を立ち、紙とペンを持ち、一文を書き上げます。


「ハーネス、居ますね」

「はい、ここに」

「では、これをお願いします。
出来る限り、早く。
そちらを最優先とし、ハーネスにその件を全任します」

「承知致しました」


ハーネスには彼女の背後についてを調べて貰うことにしました。
結果は数日後には出るでしょう。

私の予想が外れていれば良いと思いますが。
えぇ、まさかあの方がそこまで頭の弱い方だとは思いませんから。
きっと外れているでしょう。
そう、願いたいですね。


「ミリスさん」

「は、はい!」

「この辞職願いは今はまだ受け取れません。
そうですね、ハーネスが戻ってきてからまた聞かせていただくことにします。
確か、ミリスさんはフィーリン商会の寮で暮らしていましたね?」

「そうですが……」

「では、シャールをつけましょう。
アリス、呼んできてもらえますか?」

「承知致しました」


私の背後に控えていたアリスは一礼すると、退室し、シャールを呼びに行きました。

シャールの勘は良いですから。
きっとミリスさんに危険があれば察知して避けてくれるでしょう。
戦闘能力はあまりありませんが、危険を避ける能力は私の知る中で一番だと思います。


「フィーリン商会の方針は、来る者拒まず、去るもの追う、ですから。
私は、あなたを手放すつもりはありませんよ」

「追ってはダメだと思いますが……。
普通は去るもの追わず、では無いでしょうか?」

「フィーリン商会で働く者は誰であろうと家族だと私は思っています。
家族が欠けるなんて、寂しいでしょう?」


元々は、孤児院の子達の居場所を作ってあげたいという願いもあったのです。
それに、私が商会を立ち上げた時、家族のように仲が良く、まるで本当の家族と居るようなくらい暖かく居心地の良い商会になるように願っていましたから。
私にとって、このフィーリン商会で働く人達は第二の家族のようなものなのです。

そんな家族が欠けることは、許認出来ませんし、誰かに傷つけられるのならば、私の持てる力全てを使い、守ります。


「エリス様、だからといって無理はしないようにお願いします」


丁度、アリスが戻ってきたようで、呆れたような口調で口にしました。
まさか、聞かれているとは思っていませんでした。
早すぎるような気もしますが、アリスなので当然、なのでしょうか?


「善処します、アリス。
シャール、呼び出してしまい申し訳ありませんが、ミリスさんをお願いします」

「りょーかいです!
エリス様の期待に添えるように頑張ります!」


シャールは、少し心配になるくらいの明るい返事を返してきました。
……大丈夫でしょうか?
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

 怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~

美袋和仁
恋愛
 ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。  しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。  怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。  なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...