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本編
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しおりを挟む「エリス様、ご報告が」
フィーリン商会を動かしてから数時間が経った頃、私はハーネスから報告を受けました。
「ウェスコール男爵家の脅威はなく、侯爵に関しては私どもが到着した時には既に殺された後でした。
私達の力が及ばず、申し訳ございません」
ハーネスが申し訳なさそうに頭を下げました。
ですが、あの侯爵が殺されたということは、侯爵家にまで忍び込める程の実力を持つ暗殺者ということでしょう。
そう考えるとみすみす放置も出来ませんし、暗殺を依頼した人物も気になりますね。
「ハーネス、申し訳ありませんが侯爵を殺した者の調査をお願い致します。
ただし、危険と判断した際にはすぐに引くようにしてください。
くれぐれも、命を第一に考え行動するようにお願いします」
「承知いたしました。
エリス様、その暗殺者はこちら側に引き込みますか?」
引き込む……。
それもいいかもしれません。
ですが、それほどの人物を引き込むことが出来るのか、と言われると出来ないような気もします。
既に誰かの子飼いか、暗殺者ギルドに所属しているでしょうから。
「そう、ですね。
出来れば引き込みたいとは思いますが、無理だと思ったのならば引いてください」
「承知いたしました」
ハーネスは一礼した後、目の前から消えました。
こういったことは偶にありますし、既に慣れましたが改めて見ると思うところがありますね。
「あ……。
ウェスコール男爵について聞きそびれてしまいましたね。
ですが、脅威はないということは、ラミアさんと縁を切る判断をくだしたということでしょうか?
それともまた別の……」
ハーネスが脅威はないと言ったということは確かなことなのでしょう。
私に報告する時、ハーネスは確かな情報しか口にしませんから。
今は、それだけわかれば動くのに問題はありません。
……本当に、ラミアさんは面倒なことを起こしてくれたものです。
「……もう、あの方にこれ以上何も奪わせません。
私に失っていいものは、何もないのですから」
あの時、ラミアさんがキース様の婚約者という立場を私から奪ったようにはもうさせません。
フィーリン商会もフォーリア公爵家の令嬢であることも、そしてアルの婚約者であることも。
「私の大切なものは全て、守り通します。
ですから、私の全力をもってお相手致します、ラミアさん」
*
その頃、屋敷の者達を止めに行ったはずのルアンの方はというと、アルスと合流し、黒い笑みを浮かべていた。
「さて……。
じゃあ、僕も準備をしなきゃ。
だってエリス姉さんとエリス姉さんの大切なものに手を出したんだ。
それ相応の報いを受けてもらわないと」
「ルアン、止めに行くんじゃないのか?」
「ん?
えっ、何で止める必要があるのさ。
だって、エリス姉さんに手を出したんだよ?
止める必要性はないと思うんだ」
僕だって怒る時は怒るんだ。
ただ、怒るのはエリス姉さん関連ってだけで。
幼い頃は姉弟だったらシスコンって言われる自信があるくらいに、僕はエリス姉さんにしか興味がなかったから。
今は……まぁ、殿下やカインがいるけど、それだけだ。
「程々にしておけ、ルアン。
でないと、後々エリスが気にするからな」
「エリス姉さんにはバレないようにするので問題ないですよ」
殿下に言われ、僕は笑顔で返す。
「勿論、殿下とカインも協力してくれますよね?」
「んー、よく分かんねぇけどいいぞ!」
「……仕方ないな。
やるなら徹底的にやるぞ」
なんだかんだ言って、殿下もカインも協力的だ。
カインはともかく、殿下はエリス姉さんの件でかなりキレてたから今日してくれると思ってた。
カインの方は考えを放棄するからなぁ。
「で、何をするつもりなんだ?」
「あぁ、それは……」
僕は、エリス姉さんには絶対に見せることのない笑みを浮かべ、作戦を2人に話した。
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