幽刀星

氷翠

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歩・二十「証」

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チャド・ゴールドマンを捕まえるまで、思った以上に時間がかかった。
それでも、俺たちは諦めずに町を動き、闇に潜む彼の尻尾を掴んだ。

「……ようやく、だな」

そうつぶやいたのは俺自身だった。

「チャド・ゴールドマン。お前に聞きたいことが山ほどある」

俺は目の前の男に視線を落とす。やせ細り、血の気の引いた顔。それでも瞳はどこかふてぶてしかった。

「何のつもりで俺を……」
「お前を陥れるよう言われた。ただ、それだけだ」

チャドは静かに口を開いた。その口調には、罪悪感も、恐れもない。

「誰に?」

隣でカサレアが問う。感情を抑えているが、声に怒りが混じっていた。

「……名は明かされていない。だが、あの女――レミエルを殺したのは、俺の仲間だ」

俺とカサレアは顔を見合わせた。やはり、そうか――。

「……ヨゼフの仲間か?」

チャドは一瞬だけ目を伏せ、そして頷いた。

「ヨゼフは俺たちの中でも慎重派だった。すぐに手を出すことはなかったが、狙いははっきりしていた。お前を殺すこと。それが命令だった」
「……それで、レミエルを?」
「彼女は邪魔だった。ただそれだけ。だが、俺は――直接は手を下していない。あれは別の奴がやった」

俺の中で怒りが渦巻く。だが、怒鳴ってもレミエルは戻らない。

「カサレアを狙ったのも、お前の仲間か?」
「いや、あれは別口だ。別の依頼。別のギルド。お前には、いろんな連中が関わってるらしいな」
「……それはどういう意味だ?」
「知らん。だが、依頼が重なっていたことは確かだ。お前を尾行していたのも、カサレアを狙っていたのも、それぞれ別の奴らだ。偶然か、何か意図があるのかは知らない」
「……全部、俺一人に向けられた歪んだ矢だ」

カサレアが横目で俺を見る。何かを言いたげだが、言葉にはしない。
俺は深く息を吐いた。

「……で、その依頼はどこから来たんだ? 誰が金を払った?」
「……それは、さすがに教えられない。言えば、俺の命がなくなる」
「言わなきゃ、それ以上の地獄を見せてやる。俺は今、そういう気分だ」

俺が刀の柄に手を置くと、チャドの顔が引きつる。

「……名は聞いていない。ただ、『白い指』とだけ名乗った」
「白い指……?」

カサレアが首をかしげた。

「ギルド名か、組織名か、それとも――」

俺もその言葉を反芻する。
チャドは続ける。

「金は振り込み。連絡はすべて中間の伝言。直接会ったことは一度もない。だが、命令は確かだった。お前を消せ、と」
「レミエルの命も、その流れで奪われたのか……」
「……あの夜、影が動いていた。レミエルは、それに気づいていた。だが油断したんだ」
「……」

沈黙が落ちる。重い沈黙だった。

「レミエルが……」

カサレアの声が震えている。
俺はそっとカサレアの肩に手を置いた。

「カサレア……ありがとう。ここまで来てくれて」

彼女は首を振った。

「違う、私たち……ここで止まるわけにはいかない。レミエルのためにも」
「もちろんだ」

そして、俺たちはチャドを捕らえたまま、どうするべきかを相談し始めた。

「このまま衛兵に引き渡しても、闇ギルドに口を塞がれる可能性がある」

カサレアが言うと、俺は頷いた。

「どこか、安全な場所で匿って、もっと情報を引き出す。それしかない」
「危険だけど……やるしかないわね」
「カサレア……ありがとうな。こんなことに巻き込んじまって」
「もう、巻き込まれたって思ってない。私は、レミエルの意思を継いでる」
「……ああ」

夜は更けていった。だが、闇の中でも、俺たちは前に進まなければならない。
レミエルの命が――すべての始まりだった。
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