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22話「旅の途中、そして出会い」
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焼け落ちた村を背に、東の街道を三人は歩いていた。空は高く、雲は穏やかに流れているのに、胸の奥にはまだくすぶるものがある。地に転がっていた数多の死体。焦げた匂い。何もかもが終わったあの夜。
「……あの村、ほんとに全部……」
ジブリールが口を開いたが、すぐに言葉を飲み込む。
「全部、だ」
とサリエルが淡々と言う。
「逃げられた奴はいねえ。旅人も巻き込まれてた。……くそみたいな終わり方だ」
「……あやつの“術”は、時間をかけて染み出すように広がる。止められたのは最悪の未来だけじゃよ。それだけは確かじゃ」
サンダルフォンの声は冷静だが、その奥には怒りがあった。
「……でさ、サウナリアって町では、まず何をすんの?」
ジブリールの問いに、サンダルフォンがわずかに笑って応じる。
「身分証じゃよ。冒険者ギルドで発行できる。旅人としての証明がないと、これから先の街じゃ厄介なことになる」
「旅人証……なんか、冒険者っぽくなっくな、俺たち」
「まあ、あれだけ戦えば、それっぽくもなるわよね」
そんな冗談めいた会話をしながら、舗装の甘い街道を歩き続ける。昼過ぎ、森が開けた場所で、前方に何か動く影を見つけた。
「あれ……誰かいる?」
警戒心を強めたサリエルが剣の柄に手をやるが、相手もすぐにこちらに気づき、手を上げてきた。
「おーい、そこの三人! 旅人かい?」
現れたのは、鉄の鎧をまとった大柄の男だった。脇には細身の男、長杖を携えた年配の男、そして紅い髪の女性――四人がいる。
「……冒険者か?」
「そう見えるな」とサンダルフォンが呟く。
「やあ、こんな道で出会うのも何かの縁だね」
鎧の男――プリアプスと名乗る彼は、見た目に反してやわらかな口調で話す。
「俺たちはサウナリアに向かってるんだ。少し遅れて合流する予定の仕事があってね。君たちもそっちかい?」
「同じくサウナリアだ」
とサリエルが答える。
「珍しい組み合わせだな。こんな若い子が冒険者ってのは、まあ、最近は増えてきたけどさ」
「君もたいがい若そうに見えるけど?」
とジブリール。
「おや、嬉しいね。でももう28さ。ガタも来る年頃さ。ははは」
「……こっちはザバーニア。呪文の構成なら一級品だが、酒のことになると駄目な男だよ」
「ほっとけ、プリアプス。俺は自分の嗜好に忠実なだけだ」
ザバーニアと呼ばれた魔術師は37歳ほど。言葉遣いは理知的だが、その手にはワインの小瓶があった。
「で、あたしはミカイール。回復術士って名乗ってるけど、別に大したことないから期待しないで。怪我しても自己責任ね」
紅髪の女性は26歳ほど。言い方はぶっきらぼうだが、ジブリールにはなぜか親しみを感じさせた。
最後に口を開いたのは、弓を背負った細身の青年だった。
「リドワンと申します。サウナリアの射撃試験で最高記録を持っています。……あ、近づきすぎないで。汚れるので」
「うわ……なんか急に態度変わったな」
とサリエルがぼやいたが、リドワンは肩をすくめるだけだった。
「まあ、クセはあるが腕は確かだ」
とプリアプスが笑う。
「一緒に行くかい? サウナリアまでは、あと一日半くらいある」
ジブリールがサリエルを見ると、彼はわずかにうなずいた。
「変な奴らだけど、悪人じゃなさそうだしな。構わねえよ」
こうして、六人の旅は始まった。火の村から抜けた三人と、別の目的を持った四人。
まだ何も知らない。それぞれの背負っているものも、向かう先の運命も。
ただ、サウナリアという名前の町へ向かって――
「……あの村、ほんとに全部……」
ジブリールが口を開いたが、すぐに言葉を飲み込む。
「全部、だ」
とサリエルが淡々と言う。
「逃げられた奴はいねえ。旅人も巻き込まれてた。……くそみたいな終わり方だ」
「……あやつの“術”は、時間をかけて染み出すように広がる。止められたのは最悪の未来だけじゃよ。それだけは確かじゃ」
サンダルフォンの声は冷静だが、その奥には怒りがあった。
「……でさ、サウナリアって町では、まず何をすんの?」
ジブリールの問いに、サンダルフォンがわずかに笑って応じる。
「身分証じゃよ。冒険者ギルドで発行できる。旅人としての証明がないと、これから先の街じゃ厄介なことになる」
「旅人証……なんか、冒険者っぽくなっくな、俺たち」
「まあ、あれだけ戦えば、それっぽくもなるわよね」
そんな冗談めいた会話をしながら、舗装の甘い街道を歩き続ける。昼過ぎ、森が開けた場所で、前方に何か動く影を見つけた。
「あれ……誰かいる?」
警戒心を強めたサリエルが剣の柄に手をやるが、相手もすぐにこちらに気づき、手を上げてきた。
「おーい、そこの三人! 旅人かい?」
現れたのは、鉄の鎧をまとった大柄の男だった。脇には細身の男、長杖を携えた年配の男、そして紅い髪の女性――四人がいる。
「……冒険者か?」
「そう見えるな」とサンダルフォンが呟く。
「やあ、こんな道で出会うのも何かの縁だね」
鎧の男――プリアプスと名乗る彼は、見た目に反してやわらかな口調で話す。
「俺たちはサウナリアに向かってるんだ。少し遅れて合流する予定の仕事があってね。君たちもそっちかい?」
「同じくサウナリアだ」
とサリエルが答える。
「珍しい組み合わせだな。こんな若い子が冒険者ってのは、まあ、最近は増えてきたけどさ」
「君もたいがい若そうに見えるけど?」
とジブリール。
「おや、嬉しいね。でももう28さ。ガタも来る年頃さ。ははは」
「……こっちはザバーニア。呪文の構成なら一級品だが、酒のことになると駄目な男だよ」
「ほっとけ、プリアプス。俺は自分の嗜好に忠実なだけだ」
ザバーニアと呼ばれた魔術師は37歳ほど。言葉遣いは理知的だが、その手にはワインの小瓶があった。
「で、あたしはミカイール。回復術士って名乗ってるけど、別に大したことないから期待しないで。怪我しても自己責任ね」
紅髪の女性は26歳ほど。言い方はぶっきらぼうだが、ジブリールにはなぜか親しみを感じさせた。
最後に口を開いたのは、弓を背負った細身の青年だった。
「リドワンと申します。サウナリアの射撃試験で最高記録を持っています。……あ、近づきすぎないで。汚れるので」
「うわ……なんか急に態度変わったな」
とサリエルがぼやいたが、リドワンは肩をすくめるだけだった。
「まあ、クセはあるが腕は確かだ」
とプリアプスが笑う。
「一緒に行くかい? サウナリアまでは、あと一日半くらいある」
ジブリールがサリエルを見ると、彼はわずかにうなずいた。
「変な奴らだけど、悪人じゃなさそうだしな。構わねえよ」
こうして、六人の旅は始まった。火の村から抜けた三人と、別の目的を持った四人。
まだ何も知らない。それぞれの背負っているものも、向かう先の運命も。
ただ、サウナリアという名前の町へ向かって――
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