戦乱の世は終結せり〜天下人の弟は楽隠居希望!?〜

くろこん

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越後動乱編

(上杉の)戦い

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「怒っておいででしたな。」

 「うむ、怒っていたな。だが人が死ぬよりマシだ、そうであろう?」

 「ご隠居様がそう望まれるのでしたら、私から何か言うことはございませぬ。」

 側に控えていた光秀が、危うそうにこちらを見ている。私の策は控えめに見ても良い策だと思う。だが、現代感覚で相手が千代だからってのもあるんだよな...その辺り理解して無いとこの策は厳しいと言わざるを得ないだろう。

 刻は来た。

 戦が、始まる。

 そんな止めようも無い現実を前に、私は軍配を片手に目の前に広がる霧を視る。

 うん、戦の様子なんっにも分からん。

 そろそろ始まると思うんだが...
 
 私に任された軍の先陣は鬼小島弥太郎殿、影家殿もそれに追従している。

 行かなくていいって言ったんだけどね、影家殿は。

 「弥太郎殿が心配なのでしょう。」

 「矢張りそうか。危ういか?」

 私の言葉に光秀は頷く、あまり人を貶すことが少ない光秀が渋面を創る。よっぽどだな。

 「能力はあり申す、一兵卒として共に戦うならこれ程頼もしい存在もおりますまい。」

 無論、左近殿を除いてですがと光秀は付け加える。

 ちなみに当の本人左近だが陣中にも関わらず昼寝をしている、まぁ仕事はしっかりする奴だ。私の身の安全は保障されているだろう。

 陣地事態もかなり後ろで、万に1つも敵が来る可能性は無いしな。

 「しかし、一軍を任せられる将と言うと微妙なところです。直情的な面が目立つかと。」

 ふむ、そうかぁ。

 「まぁ、じたばたしても仕方がない。もう戦は始まるのだ。」

 「流石ご隠居様、まもなく敵とかち合いますぞ。」

 光秀、なんでわかるの?

 こんな深い霧でどうやって軍勢の様子わかるんだよ、黒い影しか見えない上に所々しかわからんぞ?

 「ご隠居様、もし差し支え無ければ軍がぶつかるのをどうやって見定めたか教えて頂けますか?」

 幸村、それ私に聞く?

 聞けと言ったばかりでなんなんだけどね、いや。

 「光秀、わかるように説明を頼む。」

 「畏まりました。幸村殿、説明をさせて頂きます。」

 「お願いします!」

 困った時の光秀だ、頼むぞ!

 「良き返事かと、軍勢は霧の大地中央付近で激突します。相手の陣地は不明瞭な為我が陣営は慎重に出方を伺わざるを得ませぬ、ここまではおわかりか?」

 「はい、先程お教え頂きました。」

 「敵も味方も慎重に動く、しかし戦とは苛烈なもの。戦とは目で見るものではありませぬ、音で探るものなのです。」

 「し、しかし私には何も聞こえませぬ!」

 「ならば幸村殿、地面に耳をついてご覧なさい。」

 「地面ですか?」

 光秀に言われるがまま、幸村は地面に耳を下ろす。

 「何か聞こえませんか?」

 私もちょっとやりたい。

 「人の足音が聞こえます、それも沢山。」

 「地面が揺れる音、人が忙しなく動き戦っているということですな。元来人の声というものは余程の者でも無い限り、そこまで遠くまで届きませぬ。故に将は戦場の様子を音で見分けるのです。私の予想では我が陣営の弥太郎殿と敵方が、謙信殿の陣営からは直江景綱殿が戦っていると思われますが?」

 「私も同意見だ。」

 私に足音なんてものは聞こえないけどね。

 戦国ゲームじゃあるまいし、戦場を俯瞰して見る眼など私は持ち合わせていない。

 謙信殿の軍がどんな感じで動いているかなどわかりもしないし、それは向こうも同じだろう。

 定期的に来る伝令が、弥太郎殿や影家殿らの安否を探る唯一の手段である。

 私にとってはね。

 「光秀十兵衛殿、感謝致します!」

 「いえいえ、これはご隠居様に教えて頂いたことなのです。貴方に伝えられて良かった。」

 幸村の笑顔につられて、光秀の顔にも笑みが灯る。

「そう持ち上げるな、光秀。お前自身が気付いたことだ。」 

 いや、マジだからね?

 なんであんなんで気付いたのかなって思うよ、私適当なことしか言って無いもの。

 「慶次、陣外の様子はどうだ?」

 「見回って来ましたが、奇襲はどうやら無さそうです。どうやら敵兵は上杉と真っ向から戦うようですね。」

  敵将には杉浦玄任という坊主がいる、上杉勢の猛攻を千代の装備有りとは言え何度も退けて来た有将だ。

 このクソ坊主さえいなければ私が駆り出されるようなことも無かっただろう、絶許。

 パァンーー

 「銃声...上杉のものではありませぬな、敵方ですか。」

 どこからか、銃声が聞こえた。

 「光秀、既に伝えたと思うが敵兵の火縄鉄砲の飛距離、威力は今までのものを遥かに上回る。」

 「はい、私自身俄かには信じがたいことですが。敵軍を一方的に屠る火縄...見てみたい者ですな。ご隠居様の策が当たると思いますか?」

 「思う、そうなったら弥太郎殿には引いてもらうしか無くなるだろう。実際そう指示も出した。」

 戦はまだ始まったばかりだ、戦の大将としての素質の中で最も大事なのはとにかく人を死なせないことにあると私は思っている。

 そもそも私の率いる軍は謙信殿のよりも数は少ないのだ、少しぐらいサボっても許されるだろう。

 ヒットアンドアウェイの精神だ、ほどほどに戦っておけば上杉謙信がなんとかしてくれるだろう。軍神だし...

 なんか難しいこと考えてたら肩凝って来たな。











 あの時そう思って、首を捻ったのは実力か?

 そう言われれば、私は迷わず『NO』と答えるだろう。

 私が首を捻った次の瞬間、私の頭があった場所に空気が走った。

 、比喩では無い。文字通りあの時私は、超高速で通り過ぎる何かを横目に見たのだ。

 そしてその何かは、私の頭があった場所を通り抜けて後ろの陣地にたまたまあった椅子を粉砕した。

 「な、何が!?」

 「どこから撃たれた!」

 「馬鹿な!この距離だぞ、左近殿!」

 「おうよ。ご隠居様、少し下がるぞ!」

 遅れたように、いつもの面々が動き始める。

 焦るような面々を前に、私は何故かひどく冷静だった。

 「やぁろう...シャイタック超遠距離型狙撃銃なんて作りやがって。」

 これは、予想以上に不味いぞ?
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