戦乱の世は終結せり〜天下人の弟は楽隠居希望!?〜

くろこん

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越後動乱編

狙い定めた一撃

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『シャイタック』

 別名M200と呼ばれる兵器は通常、弾道計算コンピューターや風速計などが内蔵されているものである。

 その射程距離は2000mとされており、近代戦における殆どの戦場のうち殆どを占めることに成功した。

 ちなみに今M200だが、弾道コンピューターや風速計といった類の物は当然付けてない。

 故にスコープによる目視を基本としなければならないが、そこは破壊のスペシャリスト。

 操作こそ難しく武器商人としての命題である量産性を放棄する結果にはなったものの、コンピューターなどが無くともその最高の射程距離を維持していた。

 一方杉浦玄任、この武器で大将を撃ち漏らすという失態を犯してしまった。

 しかもこの男それを失態と見ていないので質が悪い。

 本来ならばこの武器は警戒されていなければほぼ確実に人を1人殺せる銃だ、故に戦場など警戒された場所では無く平時の暗殺。これこそがこの時代における最も有効的な使用方法と言えよう。

 戦場で使ってしまえば敵に警戒されてしまうのが明らかだからだ、最も警戒するだけで有効な策が取れる訳では無いのだが。

 驚いたことにこの男杉浦玄任、この銃をただ『火縄より当たりやすく』『威力も高い銃』としか見なして無いのだ。凄まじい武器性能の無駄遣いと言えよう。

  「ん~外した?いや、躱したか。化け物め。」

 (危ねぇぇぇぇぇナイス桃ちゃん!!)

 千代は、そんな様子の玄任を見て小さくガッツポーズする。

 戦が始まってしまった、まぁ自分が止められなかったからなのだがそれは仕方がない。

 一揆勢が頭を下げない以上、上杉方から和睦の願いなど出せる筈も無いのだ。千代は輝宗にただただ謝罪しつつも自分が何もできないことを歯痒く思っていた。

  「1発は外したがもう1発は確実に脳天を捉えた、使用感としては申し分無く!うむうむ、これも御仏のお導き也!」

 「輝宗はどうしましたか?」

 「どうやら引いたようですな、射線から外れてしまいました。千代殿の言う通り初手で今川輝宗を狙ったのは間違いだったようです。」

 「謙信を狙えば良かったんじゃない?」

 「本陣を探したのですが居なかったもので...」

 玄任が悩むように頭をポリポリと掻く、霧の中でも見やすいようにM200にはスコープがついてるしそもそも狙撃位置である本陣は霧が薄い。

 勿論狙って本陣を設営しているのだが、それでも謙信がどこにも見当たらないというのは少し変な話だ。

 「まぁ、良いでしょう。軍神と言えども我が開発した最強の陣を破れる筈も無し!」

  構成は私、貴方は軍の編成を決めただけでしょう?

 そう言いたくなるがぐっと堪え、私は似合わない苦笑いをした。

 上杉が負ける、それも完膚なきまでにだ。

 敵の陣容はこちらには忍びがいない為わからないが、それでもこの陣は破れない。

 一般市民、女子供までも強力な兵士に変える...

 

 「玄任。貴方にそれM200を渡したこと、後悔していますわ。」

 「そうですな、ですがこの中で一番コレの扱いが得手なのもまた事実。最高の将が最高の射手というのは考えものですな。」

 勘違いすんなよてめぇ。

 強いのはその銃だ、テメーじゃねぇ。

 まるで新しい玩具を手に入れた子供のようにM200を振り回すコイツは、腕が良いのは事実だ。2発目で狙った箇所に命中させる精度は確かに優れていると言えよう。

 だが天才では無い、優秀と言うだけだ。

 一揆勢は確かに百姓が中心であり、厳しい訓練を経ていない為に細かい動きや指示が通りづらい為に戦になれば玄任の仕事が無いという側面もある。

 だが、それでも将としての責務を放棄して良い訳では無い。

 まぁ、コイツを止める手段が無いのも確かではあるのだが。

 「では、私は次の標的を探すとしますか。」

 「程々にね、玄任。」

 「えぇ、私があまり討ち取り過ぎては家臣の分が無くなりますからな!ふむ、随分と目立つ兜をしている奴がいますねぇ...」


 ◇◇◇◇


 なんっで!

 私が!

 こんなことをせねばならないのだ!

 鬼小島弥太郎は、将である。

 将であると言うことは、華美な鎧兜で戦さを彩るのが自然だ。

 だが今の弥太郎の姿は足軽のような姿で、足軽と同じように戦列を歩いていた。

 代わりに、弥太郎が居なければ居ない場所には案山子が置いてあり、馬もそれを大人しく乗せている。

 最悪、今川輝宗の軍下に入った鬼小島弥太郎の心境ははその一言に尽きる。

 物語に出てくるような御方、若き頃からその才覚を発揮した男。

 私もその話を聞いて憧れなかった訳では無い。

 しかし、彼の目の前に現れたあの男はあまりにありふれた普通の武人だった。

 しかしそれすれも錯覚であることは弥太郎本人も理解はしていた。

 その構えには一分の隙も見当たらず、戦が始まる前から見せたその手練手管は彼が敬愛する上杉謙信をも感服させる程の腕前だ。

 自分の下らない嫉妬心で彼を卑下しているだけなのだとわかっているからこそ、彼は自分自身の未熟さに嫌気が指しているのだ。

 「久しぶりだ、こんなことをするのも...初陣を思い出すな。」

 そして、この方がここにいるという事実も私の未熟さを表しているようで弥太郎は不快だった。

無論、柿崎影家も弥太郎と同じく足軽のような姿だ。華美な鎧姿は無い。

 「影家様にも初陣があったとは、驚きですな。」

 「戯け、私とて初陣はある。長尾為景様、我が始めての主。その方に仕えていた頃の話よ。」

 長尾為景とは、要するに上杉謙信の父である。

「雨が降っていたな。父に止められたが、私は無断で足軽の1人として戦列に加わった。雨だから将の命令も何も聞こえない、我武者羅に敵に向かって突撃したよ。」

 「して、戦果は?」

 「兜首を1つ。」

 「大手柄ではありませぬか!」

 影家様の初陣、聞くのは初めてだったし同僚の誰もが知らないと言う真実。

 影家様は初陣にて既に一流であったのだ。

 「戻って父に散々叱られた、大殿長尾為景からもだな。」

 「馬鹿な!」

 予想外の結果に弥太郎は驚く、初陣で兜首を獲った。普通なら大手柄だ、英雄であると言うならともかく何故責めを負わねばならない。

 「意味が理解できたのは数年経ってからだ、全く愚かよな。」

 クックックと笑う影家を前に、弥太郎はただ困惑するばかりだ。

 その様子を見て、影家は自分の意図か伝わって無いことに苦笑する。

 まぁ仕方があるまいな、簡単なことなのだが...伝えるのがこんなに難しいとは。

 「影家様、敵の陣らしきものを発見しました。」

 「様子はどうであった?」

  「大きな堀があり、その向こうには柵が設置されているとか。」

 「堀はどの程度の大きさか?」

 「幅は2尺3寸ほど、深さはわかりませぬが...」

  使者の言葉に、影家と弥太郎は思わず首を捻った。

 柵と堀は馬対策だろう、その2つがあれば馬を殆ど無効化できると言っても良い。

 だが、それだけだ。

 「一度引き、輝宗様に様子を伺った方が良いか?」

 「影家様!一戦もせず引くなど名が廃ります!」

 「うむ...弥太郎、隊を率いて前に出るぞ。敵には鉄砲がある、油断するな。」

 「はっ」
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