戦乱の世は終結せり〜天下人の弟は楽隠居希望!?〜

くろこん

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閑話・甲斐編

明智光秀の戦い

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 「ヒッヒッヒ...身なりの良い男はここで寝てるんですかい?兄貴」

 「あぁ、しかし油断するなよ。相手は今川の武士と言う、こちらの動きを察知している可能性もある」

 「兄貴、それにしてもなんで部屋の襖が空いてるんでやすかね?」

 私が開けたからである、そもそも刀を抜いたのだから気づけというか気付いてくれ。流石に落ち込むが、そればかりでもいられない。相手は自分を殺しに来ているのだ、それも間違い無く。

 「俺の合図と共に一斉に寝室に飛び込め、奴は布団で眠りこけている筈だ。静かに殺せ、装備品は高く売れる筈だから壊すなよ?」

 そう言うと、盗賊の頭領らしき男は手で子分に合図を送る。

 その間私は暇なので、1番後ろに控えていた下っ端を切り殺した。

 音は無い、相手も何がなんだか理解できぬまま死んだだろう、村正はそれ程に斬れ味が良かった。癖になりそうだ、思わず派手に斬りたくなってしまう、ご隠居様も同じような悩みを抱えていたのだろうか?

 そんな気がする、あのお方は殺意は暴虐といったものからは程遠いお方だが、そんな暴力的な面をこの刀に封じていた可能性はある。

 勢い余って地面をも斬ってしまいそうなこの刀を光秀はそう評していた。

 3人目を殺した辺りで、頭領が突入の指令を手でかける。統率の取れていないようなバタバタした音と共に盗賊たちは家の中に入って行く。私も一緒に入り、4人目を斬ってしまっていた。

 もう隠さなくていいや。

 「兄貴、布団ごとぶっ刺したが手応えがねぇ!」

 「うむ、これは?」

  頭領が布団をめくると、そこには誰もいない。ただし頭領の隣にいるのだが。5人目いきまーす。

 「あの村長、謀ったのか?いや彼奴にそんな度胸は無い筈だ」

  「兄貴」

 「どうやら逃げたようだ、収穫無しは不味いな、おい村長にゃ娘がいたよな?ソイツを拐うか」

 「兄貴、村長の娘にゃ手を出さねぇでしょう?」

 「おめぇはあんなもんを律儀に守るのか?」

 「な訳ありませんな」

 「兄貴」

 「うるせぇぞ!なんなんださっきから!」

 6人目を斬る、残りは3人だけか。喧嘩はしないでくれると助かるな。死出の船で喧嘩とか橋渡し役が困るだろう。それとも流石に気付いた?

 「ほ、他の奴らが」

 「あ?オイ、一緒に来た奴らはどーしたんだ」

 「お、俺にもわっかん無いっすよ!気付いたら誰も居なくて・・・・」

 「神隠しか?どーなってやがるんだ一体」

 7人目、あと2人です。これ気づかん奴だな、夜になると私は更に気付き難くなるらしい。嫁が私に気づかずに同じ布団に眠に来るなどしょっちゅうだ。少し泣きそうになって来た、あと2人だ。早く終わらせよう。


◇◇◇◇


 「本当に、なんてお詫びをしたら良いのやら」

 「貴方方の事情は理解できました」

  「父は悪く無いのです!父は」

 「良いんだ、今まであの賊どもに良いようにされて来たのは私の責任。打ち首になろうと悔いは無い」

 「そんな・・父上ぇ」

 「鈴、幸せになるのだぞ」

 「父上!」

 「鈴!」

 目の前で名主の親子が泣きながら抱き合っている、そんなのを見せられても困るのだ。この村は長いこと賊に脅されて商人たちをおびき寄せる餌として使われていたらしい。道理で名主の館だけ豪華な筈だよ、他の村人に比べて家として立派なのは旅人を泊まる為に不都合ありと見做されない為だ。

 賊の片棒を長年この村は担いでいたとも言える、当然領主にも知らせられない。そうなればこの村は激しい報復を受けることになっただろう。

 今回の件については完全に領主の不手際だ、と言いたいところなのだが案外そうでも無い。と言うのもこの甲斐国というのは元は武田の納めていた土地だ。住みづらいんだよここは、土地は豊かじゃ無いし土砂災害や川の氾濫が頻繁に起こる。

 昔漁った資料によれば人口はどんどん減っているそうだ、他の土地では人口が増えているにも関わらずだ。耐えきれず村を捨てたのだろう。

 国人衆の反発も酷い、国人衆とは全国にいる小さい大名のようなものだ。村長以上大名以下といったイメージの彼らの中でも元武田領地の国人衆らの反発は酷いものだったそうで。

 何をやっているのやら、これは報告せねばなるまいな。

 「ともかく、法を破ったのは事実です。村に何かしらの罰はあるでしょう」

 「はい」

 名主の親子は鎮痛の面持ちでその言葉を受け入れている、そんな顔されると自分が悪いことをしているような気分になる。もし自分にご隠居様ほどの権力があれば、2人を許しただろう。しかし私はご隠居様では無い、この村には辛い罰が待っているのだろう。

 だがそれを止める術は無い、賊に襲われて死んだ旅人や商人が浮かばれることは無いのだから。

 「ですが、賊に脅されて行っていたのもまた事実。そのことも加味して頂けるよう報告はさせて頂きましょう」

 今言えるのは、これだけだ。

 「彼らは、結局何者だったのでしょう?」

 「恐らく、武田の残党かと」

 「武田?」

 数年前滅んだ武田の一族を忘れているものは居ないだろう、上洛を果たした後に武田と今川は激しく対立した。

 武田が川中島以降、今川の治める地に野心を向けたからだ。亡き大殿今川義元様は激しくご立腹され大規模な攻勢に出た。ご隠居様はいつも通り留守番だ、一進一退の攻防が続いたが、とうとう武田は滅んだ。

 国人衆の裏切りが相次ぎ、息子である諏訪勝頼にも裏切られた最期だった。武田信玄たけだしんげんは失意の中で戦死し家臣は死ぬか逃げるかしたと言う。

 その際一部が今川の元に入ったのは言うまでも無いだろう。

 そんな武田の残党がまだこの地にいたとは・・・・

 あ

 「名主殿、武田の残党の中に名のある武将はおられますか?」

 「えぇ、武田四天王の御方までおられると聞きます。辺りの獣を狩り尽くしておりまして」

 「なら、向かいましょう。

 「は、はぁ?」

















 「村に向かった奴らはまだ戻らんのか?」

 「は、はい。まだです」

 「使えん奴らよ、使いも満足にできぬとは」

 「うむ、だがこのような暮らしももう終わりよ。諏訪勝頼様を当主に、我ら武田は再び再興するのだ」

 「うむ、ならば先日狩ったこの猪をだな・・・・」

 「報告します!」

 「なんだ、騒々しい」

 「か、隠れ家の前にある石門を蹴り破って男が入って来ました!」

 「「「はぁ!?」」」
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