多重人格者の異世界転移〜あれっお前魔王じゃね?!〜

くろこん

文字の大きさ
23 / 150
王都にて、王子と多重人格者

時代を担う王達の休日?

しおりを挟む
これでいいのだろうか、いつも私は迷っていた。

母から貴方は王の息子だと、そう言い聞かされていた時も迷っていた。学校で首席を取り、流石は王の息子だと言われた時から、ずっと迷っていたのだ。師匠に剣を教えて頂けると聞いた時もずっと悩んでいた。何故私なのだろう。

私は、何も、持っていなかった。

だから努力した、勉学も、剣も、自分の力で努力して手に入れたものだ。だがそれだけでいいのだろうか。

彼......第1王子、ベリアスは自分の執務室でそう悩んでいた。側には暇なのかと言うばかりに、この国の騎士団長であるルーカンと、その息子のアロンが護衛としている。この国最高峰の騎士と、我が国にたった1人...おっと、先程その2人目の神器使いと話をしたばかりだったな、ともかく神器使いがいる。間違いなく私がこの国で一番安全だろう、まぁ、父上も弟もそうではあるのだがな。

あの神器使いは、劇薬だ、素性もよくわからぬので、側に置いておくのも危険だと言うのが騎士団の面々の意見ではあった。アストルフは信用できるとは言っていたが、会ってまだ3ヶ月ほどだと言う、信用しきれないところもあるだろう、いつもより歯切れが悪い。話をしてみて、少しでも彼の人となりをつかもうと努力しているのだが、どうにも彼がつかめない。私が人付き合いがあまり得意ではないせいでもあるのだがな。

学校時代ですら、話相手と言えば帝国の姫君ぐらいのものか、他のものは私を恐れて近寄っても来なかった。人がやって来ない孤高な王。回りからの期待に後押しされて、今のように王を目指すと言ったものの、果たして私にそれが勤まるのだろうか。

そう思うと、ベリアスはため息が出るのを抑えられず、ルーカンとアロンを心配させるのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

王子は孤独である、しかしまた王というものも孤高でなくてはならない。ベリアス王子の横で彼の仕事を見守るアロンは、そう思っていた。

アロンが王子と初めて会ったのは、ヘリン将軍に連れて来られて王城に行った日である、同い年の剣の相手が見つからなかったので呼ばれたのである。王子は既に剣の才能を発揮しており、全く勝てず、神器を思わず使おうとしてしまいヘリン様に止められてしまったということもあった、恥ずべきことだ。

子供の頃より剣にかけては神童と言われ、10を超える歳になるとその辺の騎士には負けないくらい強くなった。神器なしでである。それが負けてしまった。自分の高い鼻っ柱は叩き折られた。しかし、勝ってもベリアスは驕らず、勉学でも、剣でも、何で勝っても嬉しそうな顔をすることはほとんどなく、いつも物憂げな表情をするのみであった。

皆、王子を恐れている。魔法局も、貴族たちも、騎士団でさえ、王子の本心を見抜いているものは少ない。付き合いこそあまりないが、この方こそ次代の王でいい、アロンはそう確信していた。アロンは見守る、自分が次の王と信じて疑わないその男を。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『.........では、今日はこの辺りで失礼しよう、皆の者報告ご苦労であった。また明日も頼むぞ!』

そう言うと、第2王子、ライト王子は自分の執務室に入って行く、中に入ると、既に自分の親友であるウルフィアスが紅茶を飲んでいた。

すると、隣で私と貴族の相手をしていた妻のエマが怒り始めた。

『ちょっと、ウル!それ私が大事にしていた紅茶!わざわざお爺様に頼んで地元から持ってきてもらったのに!先に飲むなんて!』

『おっと、これはこれは失礼しましたエマ様、では私が新しく入れさせて頂きましょうか?』

おどけた様子でウルフィアスは言う、こいつはいつもそんな感じだ。室内には私と私の妻、エマとウルフィアスしかいない、1日の仕事が終わったのだし、いつものように寛いでおくか。そう思うとライトは上着を脱ぎ、自分の椅子にどっかりと座った。イスと同じくらいの高さにある机に足をかける。エマからはいつも行儀が悪いと怒られるのだが、まぁこのぐらいは勘弁してほしい。父上からの仕事がやっと終わったばかりなのだから、ウルフィアスは私の側に紅茶を置いて言う。

『ライトもどーぞ、エマの故郷のお茶だってさ、あまり詳しくない私でも良いものだと言うことはわかるよ!』

『ちょっと!何も知らないのに貴重なお茶をガバガバ飲んでたの!許さないわよ!』

この日常もいつも通りである。3人は学園からの腐れ縁だ。私達は幼年学校の時に出会った。魔力持ちの第2王子、辺境伯の娘、魔法の才能に期待されている中級貴族の息子。すぐに意気投合した。魔法に関しての研究をしている私とウルフィアスを、エマによく世話を焼いてもらったものだ。勉強も好きではなかったし、どうやら私には歳上の兄がいるようだと知らされていたので、私は王ではなく研究者になろうと研究に没頭。自分の魔法『治癒魔法』を、流行病の1つへの対抗策として治療法を確立させ、国民を救った。また新しい魔法局の案である魔道ゴーレムの初期版を作ったのも私とウルフィアスだ。でかいゴールムが動いた時は、学校にいた生徒全員で喜んだものだ。

しかし学校を卒業した後から、貴族達からの俺への擦り寄りは加熱した。まぁ兄上が下級貴族の息子で、不満もあるのだろうと言うのもあながちではなかった。母上も、私を時期王にと強く推していたし、母方の貴族からの叱咤激励も相当なものになった。私は学園生活の頃が懐かしかった。今はただひたすらに貴族達の相手をし、味方は増えていき、継承戦は有利になっていくものの、心は休まらなかった。

唯一の救いは、このおちゃらけた男が以外にも出世しており、王子の前に出ても何も咎められないほどになったと言うことか。ウルフィアスも苦労しているだろうが、こうして3日に1度は顔を見せに来る。

兄上には1人の人間としてならとても敵わないが、別にそれでも王になれると思っている。王が最も優れているものでなければならない道理はない。武では私にはウルフィアスが、知なら妻のエマがいる。味方は多いのだ、この継承戦も無事終わるだろう。

安心したら眠くなってきたな。

ライト王子は急な眠気に襲われて、ベッドにも入らずに、目を閉じた。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『おやおや、寝てしまったようだね、このだらしがない男が貴族のリーダーライト王子とは!仕方がない、ベッドまで送ったあげるよ』

そう言うとライトは呪文を唱え始めて、ライトは消えた、多分今頃自分の寝室で寝ているだろう。

ねぇ、そうエマは言う、ウルフィアスがなんでございましょうかとおどけて執事のごとく礼を見せた。

ライトには随分と苦労させているわね、とポツリと言ってしまった。元々私があの人を頑張らせてしまっているのに。あの人は学園では自由な人だった。研究や体を動かすのがとにかく大好きだったあの人は、よく私とウルフィアスと一緒に学校を抜け出して、ダンジョンや怪奇現象が噂されている屋敷に遊びに行ったわ。ダンジョンでは死にかけたわ!ライトがへんなスイッチを押しまくるせいで、ダンジョンにあった罠が全部起動してしまったんですもの!!

彼にプロポーズされた時にも言ってしまったわね

『私はこの国の王の妻になると決めています。貴方であってもそれは変わりません。』

『じゃあ、僕が君を世界の王の妻にしよう』

そう言った。多分彼は義理で動いている。本当は自分の大好きな魔法の研究がしたいのに、今ではそのことも一言も言わないで、あーやって疲れて寝るまで働くのをやめない。私への義理、母への義理、自分を慕ってくれている貴族達への義理。努力して自分に会いに来てくれたウルフィアスへの義理。それが彼を縛っている。

『良いんじゃないかな?アイツがやりたいようにやらせてあげようよ。いいんじゃない?僕かエマがいればアイツはアイツらしくいれる場所があるんだから。』

そう言いながらもウルフィアスは笑った。

『てか君の方が過激だよね?!僕の部下に勝手に命令して、アルノ領で反乱起こさせて貴族潰そうとするとかさ!とんでもないよね!逆に!まぁもう部下は謹慎させてるけど』

あら、そんなことしたかしら、フフッだってあの人が頑張ってるんだもの。私も少しは色々やらないとね。ちょっと脅そうとしただけなのよ、まぁあの神器使いさんに止められちゃったけど。

あの神器使いさんは自由そうね、なんの縛りもなく、どこにでも行けて。

いつか、ライトにもあんな自由をあげたい。

そう思いながら、紅茶を飲みつつエマは笑った



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...