多重人格者の異世界転移〜あれっお前魔王じゃね?!〜

くろこん

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デビュー戦は撤退戦

援軍が来るまで持ちこたえましょう

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帝国の内部にいたガーゴイル達の軍勢は、ベリアス軍の活躍により撤退していった。ベリアスは皇帝に会い、他の軍の予定、動向の調整を行う。

王国軍は、およそ2週間ほどで全軍が到着するらしい。本来ならばどれだけ急いでも1ヶ月ほどはかかってしまう王国から帝都への道だが、最新の魔導技術と、行軍時に一番行軍が遅くなる理由である糧食をあらかじめ兵士たちに持たせて、身軽で行軍していると言うのが大きいであろう。ともかく2週間、最低でも2軍が到着するまでの1週間、帝都を守りきることが現状の帝国、王国軍のやるべきことである。

ベリアス、皇帝軍は正門を守ることに専念していた。

北門、西門などの別門もあるのだが、そこは魔王軍が来ていたいため、防衛を回してはいない。

増援まで、残り1週間
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔王は、帝国前で、部下のペリモーンズから、帝都を襲撃した報告を受けていた。

『王国軍の援軍が到着するまでに、帝都を落とす』

魔王は、配下達にそう言った。
既に魔王空軍の活躍により、帝都は半壊、城門も落ちるのは時間の問題であった。しかし、王国軍の恐るべき速さでの進軍による援軍と、帝国軍にいた冒険者達の抵抗のため、若干予定が狂ってしまった。城門は神器使いが守り、普通の軍で攻め落とすのは難しくなってしまっている。おまけにペリモーンズからの報告によると、神器と、それと同等の魔力を持った槍を扱う男が現れたと報告を受け、魔王は唸った。

それでもなお、彼は勝利を確信している。否、どうでもいいと言ってもいい。彼の目的は神器の回収であり、人間の国を制圧することではないのだから。

現状、全て上手く行っている、そう....仮に王国軍、帝国軍の全軍とぶつかっても倒せる戦略は立てられてはいるのだ。この世界で、あの森で、50数年生きて、戦い続けてきたのだ。今更このようなところで躓くわけにもいかない。

『それにしても...王国軍、半壊滅まで追い込まれた帝国軍、東の国、山民族。海洋国家。見事に足並みが揃いませんな~人間の国ってのは。このまま各個撃破してしまえば人間なんかあっという間に滅ばせるんじゃないですか?』

そう言うのは魔王幹部で一番年若い7位のダークエルフ、ビネルである。

『ワレラモニダヨウナモノ、ワレラモホンノビャグネンホドマエバネバココニイルモノラドコロシアッテオッタワ』

そう言ってウォーカー達古くからいたもの達は笑い出す。そう、ほんの100年前ぐらいまで魔族領でも殺伐とした、血みどろの殺し合いがあったのだ。しかし異種族同士をほんの50数年で纏め上げた。我らが魔王がである。

そんな主人が率いる魔王軍、たかが一種族すらまとめられない人間に負ける気など、魔王軍幹部の中でする気があるものは誰もいなかった。

『全軍、到着完了しました。いつでも親愛なる魔王様のために力を振るいますよ』

『ペリモーンズ、報告感謝する、では明日より城門攻略を開始する、各々配置につき、魔王様からのご指示を待て。行くぞ、我らで人間に虐げられている獣人、及びエルフ族を解放するのだ!』

ウルフィアスの言葉で魔王軍幹部は解散した。しかしここで第2位である龍神、アルフィィオスと、第8位の鬼人アスカモーに呼び止められた。

『シン、良いのか、これで』

そうアルフィィオスに聞かれた、最後の確認である。この2人は我の大体の事情を話せるほどのメンバーで、アスカモーに関しては自分が魔の森を征服する前からの仲である。

この2人は我の事情を知っている、故に不安なのだ、我が躊躇していないだらうか、と。人だった頃の自分を殺して化け物のために尽くそうとしている。それでいいのかと
 
そう言えば、我をシンと呼んでくれるものはもうほとんど死んでしまったし、元の世界に戻ってももう我の友人は70代だ、何人生きているのだろうな、と魔王は思う。

川崎真也としての人生よりも、この世界で魔王として生きてきた年月の方が既に長くなってしまったせいか、そう呼ばれることに懐かしさすら覚えていた。

『勿論だ、我に迷いなどない。人間を討つ。』

そう行って我は歩き始めた。

明日が決戦だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『報告!門前の魔王軍全身してきます!』

来たか...!!

アロンは武者震い収まらないその体を鼓舞し、正門へと陣取っていた。

『全体、弓を構えろ!ギリギリまで引き付けるんだ!ここで帝都を守るぞ!』
そうアロンが命令した瞬間、正門にいた兵士達が弓を構え始める、正門を守護しているメンバーは帝国の、魔王軍の猛攻を耐えた者たち、冒険者たちと、王国騎士団メンバーである。アロンは魔王軍が接近してくるのを待って一斉に矢を放つつもりでいた。

『.........なっ伏せろ!!』

このアロンの言葉に反応できたのは、数名の歴戦の戦士と、アロンが反応した両脇にいたもののみだった。魔王軍から唐突に降って来た矢に、大勢の弓兵たちが射抜かれていく。いずれもいっし乱れずに頭を貫かれている。

『正確さだけなら私の神器と同等...これがダークエルフの力か...』

アロンの見立て通り、正門から遠く離れた森から、ダークエルフ達が弓を打ち込んでいた。

『あれ~~何人かやり損ねたな、まぁ弓兵が出てこないように警戒しといて、みんな!』

そうダークエルフに指示を出しているのはビネルだ。

『サテ、ワレラモタテトナロウ、ゼングンススメ!!』

機械族のウォーカーが指示を出すと、正門の高さに届きそうなほどの機械族が正門へと接近を始める。機械族は全てが巨大な盾を有しており、その巨躯は巨人族と並ぶ、それは歩みこそ遅いものの、着実に門へと近づいていた。

ダークエルフの弓が邪魔で、門にいる弓兵達は矢を射ることができない。仕方なくアロンは自分の持つ神器を起動させる。

彼の持つ神器ーー魔弓「トリスタン』
そこから穿たれる弓は、アロンの弓の腕前良し悪しに関わらず、アロンの見渡す全ての範囲に弓を届かせることができ、一度アロンがロックしたものはどこまで逃げてもそのものを追い、必ずアロンが穿ったものを当てるという、追尾機能付きの狩人なら誰もが欲しがる一品だ。

しかしこの神器、かなりの気分屋で弓の属性、能力まで変化するという超変わり者な武器で、何事にも動じない、気分屋からは程遠いいアロンに何故適合したのかは、誰にもわからない。

『今日は...いいだろう丁度熱かったところだ。』

そう言うとアロンは弓を引きしぼり、機械族に向けて放つ。

弓は機械族に当たった途端に機械族を凍りつかせ、1つの氷塊にしてしまった。その後もアロンは機械族を全て凍りつかせ、進軍を完全に停止させた。

『あとはあそこか、邪魔だな。』

そう言うと、アロンは遠くの森にいるダークエルフ達にも弓を打つ。

『ハッ!全然当たってねーじゃねーか!何が神器だ!』

ビネルはそう言って強がってみせた。事実、木が少し凍ったりしたぐらいでは、ダークエルフの弓は止まらないだろう。

『あぁ...すまんまた「変わってしまった」ようだ、今度は爆発か?すごいな』

アロンが放った弓がダークエルフ達の近くに落ちた瞬間、激しい轟音と共に彼らののいた森は、キノコ雲をあげて爆発し、地面にクレーターを残すのみとなった。

『馬鹿が...神器の力を舐めすぎだ、これは神を殺すための武器だ、生半可な威力な訳がなかろう。』

そう魔王は苦々しく呟く、
あれが王国騎士団の神器使いか、流石に凄まじき力だな。5位のウォーカーが凍らされ、7位のビネルは生死不明である。帝都までの戦いは、あくまで「一体となった種族達が協力し、人間を倒す」というのがメインの話である。残りの援軍が迫って来ている以上、これはそろそろ出張らねばいかんだろう。

「我が行く、アルフィィオス、アスカモー、ウーフィル。行くぞ』

『久しぶりだな』
『行きますかぁ!』
『承知しました、王よ』

3体の幹部を引き連れ魔王が出陣する。

本番はここからだ。
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