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魔王と多重人格者、相対ス
たった2つの小さな矜持
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何もない荒野に1人、王は佇んでいた。
自慢の愛馬は既に息絶えており、王...魔王自身も満身創痍といったところだろう。
触手が蔓延る中、魔王はまた一撃、この全体も見えない化け物の厚い皮膚に拳を叩き込んだ。
代わりにと言わんばかりに肌色の触手が伸びてきて魔王を襲う、この触手、体に害をなした生物を自動的に襲うシステムとなっているようで拳をいれるたびに襲いかかってくる。
だが、触手を無視し、王はこの怪物に攻撃を加え続ける。
泥臭い戦い方だ。鎧を見にまとい、人間を蹂躙し、破壊の権化と化していた先ほどの戦争とは違う。鎧は全て取れ、地べたに這いずり回りながらも触手をかわし、体に一撃を与え、体中にある目を潰して回っていた。
体中にある数千個、数万個あまりある目を1つずつ潰して行っている。いや一撃で1つしか潰せないのだ。この眼球、弓も槍も通さないほどの硬さを誇り、魔王クラスの一撃でしか潰せない。
既に数十分間この攻防は続けられていた。
やがて肉が盛り上がるような形で、1つの小さな顔が出てきた。左陣でグリーンとエルザが見た、あの全方位にある口と歯がこちらを睨む、目全体が、こちらを舐めるように見ていた。
『あぁ、素晴らしいあれこそが私の最高傑作!欲しい欲しい、あぁ妹たちを連れてくるべきでした擬似とは言え神器に近い威力の砲撃、久しぶりのデータが欲しくて直撃してしまいました。対抗策を練らねば、あぁ一番損傷がある場所を確認しようと来ましたが「魔王」ですか、それを名乗るものはたくさんいましたが、過去のどの個体よりも魔力が弱いのですね。弱ってますか?まぁサンプルで角くらいは持ち帰らせて頂きましょう』
そう言うと触手が全体から伸びてくる。
せっかく顔を引きずり出せたのだ。何かしらのダメージを与えぬままで終われるかと、そう意気込んでいたのだが、こちらには決定打がない。覚悟を決め、拳を構えようと意気込むと、触手が全て、何か鋭利なもので切断されたかのように転がった
『よう......やっと顔に会えたぜ、随分変わったな.......また改造したか?「アイテール...!!」』
そう言いながら降りてきた男は
戦線から離脱して行方不明になっていた男
ムサシだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『よう!お前が魔王か、覚えているか?一番最初に弓を打った男だ。』
ひらひらと手を振りながらムサシは魔王の隣に立つ、完全に初対面であったが...挨拶は既に済ませているようだ。
『忘れる訳があるまい。鎧の隙間を寸分の狂いもなく狙った精確さ、そして極め付けはあの殺気、グリーンではなく、お前を見ていたわ、一体何をしている?奴はもう去ったぞ。』
『いや~ちょっとこれに用事があってね、パンドラの箱に閉じ込められて数百年たってるけど、こいつにはちょっとばかし恨みがあるんだ』
『ほう、目的は一緒か』
『そうそう、ちょっと一撃入れる技があるんだけど、1人じゃきつそうなんだ...手伝ってくれない?』
そう言うとムサシは肉の間から出てきた全方位にむき出しになっている口を指差して言う。
『一撃?足りんな...この肉の塊に我が軍の兵もそれなりにやられた。それに少々我にも因縁のある相手でな...生き地獄に合わせてやらねば気が済まぬよ』
『......そうか、なら少しだけ時間を稼いでくれ、すぐ済む』
そう言うと、ムサシは何も言わなくなり、構えの姿勢になった。剣術は元の世界でも素人だった魔王でも理解した。美しく、無駄のない姿勢、脱力しきった体制に、力が篭り始めていることを、魔王は何も言わずに悟り、化け物へと向き直った、時間稼ぎを始めるために。
寸断問わず肌色の触手が飛んできた。華麗な動きでかわしつつ、ムサシに当たりそうなもののみを除去していく。
時間を稼ぎ始めてから数分、少しずつムサシの体に魔力が高まっていくのを感じた、既に魔王の持つ魔力などとうに超えている。
ムサシの体制がだんだんと低くなっていく、薄く、薄くなっていた目が、一気に見開いた極限まで低くなった姿勢から抜刀し、居合に近い形で剣を振り抜く。
星一閃
ーーーーこれは「パンドラの箱」の中でムサシ本人が練習してきた技、「万物不壊、永久に理りの続く場所」の特性を持つパンドラの箱の壁を唯一破壊した技。
彼がこれを使ってパンドラの箱自体を何故破壊しなかったのかはーこれからわかることである
居合で振り抜いた剣筋から星のような光が差し、一直線に化け物の顔へと飛んでいく
何かを察した魔王は、拳で触手を全て吹き飛ばした。何も弊害がなくなった飛ぶ剣筋は、一直線に怪物の顔を一文字に切り裂いていった。
化け物から悲鳴があがる。
『すごい威力だ、一撃とか言う話はブラフか』
『いや、俺もどのくらい威力出るかわからなかったんだよね、これ打つの二度目だし、刀こうなっちゃったし』
そう言って自分の愛刀をひらひらと見せる。
ムサシの持っていた刀身は、ボロボロになって朽ちた。
万物不壊の理を超えた一撃ーー
これをパンドラの箱で極め、ついに見つけた時はムサシ自身も驚いた。ついにパンドラの箱の理を超えた力を手に入れた、としかし代償は大きかった。自分の刀の2振りのうち、1つが朽ちてしまったのだ。
耐えられないのだ、理を超える力というものは、そう甘くはない
『それでは、今のはもう撃てないということか?』
『いや?「刀」がなくても...これは撃てる。だけど時間が結構かかかるのよね。また時間稼ぎ頼める?』
そう言うと、答えを聞かずにムサシは構えの格好へと戻った。.........奴は刀を持っていない
その意味するところを、魔王は即座に理解するが...考える余地はなかった。
『擬似神器...いや恐らく神器の一撃をも超える攻撃とは?!あの男の魔力がどんどんと高まっている...興味深い!面白い!捕まえて研究してホルマリン漬けにして標本にしてバラバラにしましょう、見た目も美しい...欲しい欲しい欲しい欲しい!!』
触手が寸断なく延び、ムサシへと襲いかかる、彼はそれに対してピクリとも反応しない。魔王が...止めると...知っていたから
格闘術で触手を吹き飛ばしていく
『あらあら?先程の男と戦っていた時よりも、戦闘力があがっている...強くなってる?早くなってる?頑丈になってる?どうして、どうして?やはり貴重な魔王クラスのサンプル、欲しがるべきか、いやいや...』
『ハハッ確かに、うん、やはり我は「殺すために戦う」のではなく「生きるために戦う」の方が性にあってるらしいな』
『生存本能!確かに、貴方の進化前の反応は「ゴブリン」でしたね、ゴキブリ以上の生存本能。しかし今貴方は死に瀕している。本心は逃げたくてたまらないんじゃないですか?どんな生物もそれには抗えませんからね』
それに魔王は答えない、ムサシを、庇いながらの戦い、避けれたものが避けられず。既に触手に幾度もなく貫かれ、身体中から血を流して戦っていた。
話す余裕もないほどに
自分には決定打がない、それは彼にもわかっていた。勝てないこともわかっていた。しかしそこに奴が来た、奴に対しての決定打たり得る男が。ならば守るしかあるまい。見ず知らずのこの男を、希望を、命懸けで。
逃げる...撤退する、うん、昔はよくやった。勝てない相手に、一度撤退して策を練る。毒を作り、弓を作り、罠を作り、相手に相対し、そして勝つ、必ず勝つ。
だが今は、違う、敵などというものではない。ただ後ろにいる者たちを守る。それだけである。
一本の太い触手が直撃し、空中で戦闘をしていた魔王は墜落し始める。
しまった、防御を空けてしまった
全方位からムサシに対して触手が迫る
途端、ムサシの体が光始めた。
自慢の愛馬は既に息絶えており、王...魔王自身も満身創痍といったところだろう。
触手が蔓延る中、魔王はまた一撃、この全体も見えない化け物の厚い皮膚に拳を叩き込んだ。
代わりにと言わんばかりに肌色の触手が伸びてきて魔王を襲う、この触手、体に害をなした生物を自動的に襲うシステムとなっているようで拳をいれるたびに襲いかかってくる。
だが、触手を無視し、王はこの怪物に攻撃を加え続ける。
泥臭い戦い方だ。鎧を見にまとい、人間を蹂躙し、破壊の権化と化していた先ほどの戦争とは違う。鎧は全て取れ、地べたに這いずり回りながらも触手をかわし、体に一撃を与え、体中にある目を潰して回っていた。
体中にある数千個、数万個あまりある目を1つずつ潰して行っている。いや一撃で1つしか潰せないのだ。この眼球、弓も槍も通さないほどの硬さを誇り、魔王クラスの一撃でしか潰せない。
既に数十分間この攻防は続けられていた。
やがて肉が盛り上がるような形で、1つの小さな顔が出てきた。左陣でグリーンとエルザが見た、あの全方位にある口と歯がこちらを睨む、目全体が、こちらを舐めるように見ていた。
『あぁ、素晴らしいあれこそが私の最高傑作!欲しい欲しい、あぁ妹たちを連れてくるべきでした擬似とは言え神器に近い威力の砲撃、久しぶりのデータが欲しくて直撃してしまいました。対抗策を練らねば、あぁ一番損傷がある場所を確認しようと来ましたが「魔王」ですか、それを名乗るものはたくさんいましたが、過去のどの個体よりも魔力が弱いのですね。弱ってますか?まぁサンプルで角くらいは持ち帰らせて頂きましょう』
そう言うと触手が全体から伸びてくる。
せっかく顔を引きずり出せたのだ。何かしらのダメージを与えぬままで終われるかと、そう意気込んでいたのだが、こちらには決定打がない。覚悟を決め、拳を構えようと意気込むと、触手が全て、何か鋭利なもので切断されたかのように転がった
『よう......やっと顔に会えたぜ、随分変わったな.......また改造したか?「アイテール...!!」』
そう言いながら降りてきた男は
戦線から離脱して行方不明になっていた男
ムサシだった。
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『よう!お前が魔王か、覚えているか?一番最初に弓を打った男だ。』
ひらひらと手を振りながらムサシは魔王の隣に立つ、完全に初対面であったが...挨拶は既に済ませているようだ。
『忘れる訳があるまい。鎧の隙間を寸分の狂いもなく狙った精確さ、そして極め付けはあの殺気、グリーンではなく、お前を見ていたわ、一体何をしている?奴はもう去ったぞ。』
『いや~ちょっとこれに用事があってね、パンドラの箱に閉じ込められて数百年たってるけど、こいつにはちょっとばかし恨みがあるんだ』
『ほう、目的は一緒か』
『そうそう、ちょっと一撃入れる技があるんだけど、1人じゃきつそうなんだ...手伝ってくれない?』
そう言うとムサシは肉の間から出てきた全方位にむき出しになっている口を指差して言う。
『一撃?足りんな...この肉の塊に我が軍の兵もそれなりにやられた。それに少々我にも因縁のある相手でな...生き地獄に合わせてやらねば気が済まぬよ』
『......そうか、なら少しだけ時間を稼いでくれ、すぐ済む』
そう言うと、ムサシは何も言わなくなり、構えの姿勢になった。剣術は元の世界でも素人だった魔王でも理解した。美しく、無駄のない姿勢、脱力しきった体制に、力が篭り始めていることを、魔王は何も言わずに悟り、化け物へと向き直った、時間稼ぎを始めるために。
寸断問わず肌色の触手が飛んできた。華麗な動きでかわしつつ、ムサシに当たりそうなもののみを除去していく。
時間を稼ぎ始めてから数分、少しずつムサシの体に魔力が高まっていくのを感じた、既に魔王の持つ魔力などとうに超えている。
ムサシの体制がだんだんと低くなっていく、薄く、薄くなっていた目が、一気に見開いた極限まで低くなった姿勢から抜刀し、居合に近い形で剣を振り抜く。
星一閃
ーーーーこれは「パンドラの箱」の中でムサシ本人が練習してきた技、「万物不壊、永久に理りの続く場所」の特性を持つパンドラの箱の壁を唯一破壊した技。
彼がこれを使ってパンドラの箱自体を何故破壊しなかったのかはーこれからわかることである
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何かを察した魔王は、拳で触手を全て吹き飛ばした。何も弊害がなくなった飛ぶ剣筋は、一直線に怪物の顔を一文字に切り裂いていった。
化け物から悲鳴があがる。
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『いや、俺もどのくらい威力出るかわからなかったんだよね、これ打つの二度目だし、刀こうなっちゃったし』
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ムサシの持っていた刀身は、ボロボロになって朽ちた。
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これをパンドラの箱で極め、ついに見つけた時はムサシ自身も驚いた。ついにパンドラの箱の理を超えた力を手に入れた、としかし代償は大きかった。自分の刀の2振りのうち、1つが朽ちてしまったのだ。
耐えられないのだ、理を超える力というものは、そう甘くはない
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そう言うと、答えを聞かずにムサシは構えの格好へと戻った。.........奴は刀を持っていない
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触手が寸断なく延び、ムサシへと襲いかかる、彼はそれに対してピクリとも反応しない。魔王が...止めると...知っていたから
格闘術で触手を吹き飛ばしていく
『あらあら?先程の男と戦っていた時よりも、戦闘力があがっている...強くなってる?早くなってる?頑丈になってる?どうして、どうして?やはり貴重な魔王クラスのサンプル、欲しがるべきか、いやいや...』
『ハハッ確かに、うん、やはり我は「殺すために戦う」のではなく「生きるために戦う」の方が性にあってるらしいな』
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話す余裕もないほどに
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逃げる...撤退する、うん、昔はよくやった。勝てない相手に、一度撤退して策を練る。毒を作り、弓を作り、罠を作り、相手に相対し、そして勝つ、必ず勝つ。
だが今は、違う、敵などというものではない。ただ後ろにいる者たちを守る。それだけである。
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