多重人格者の異世界転移〜あれっお前魔王じゃね?!〜

くろこん

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9章神と人

最後の問い〜ゲティヴィア〜

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幾度目の激突だろう。

マリンとベディヴィア、2つの竜巻の激突に耐えられなかったのは...

マリンの馬だった。2人の激突は、マリンの馬の足を、全身を確実に痛めつけていた。

馬は2人の激突の直前、前倒しに倒れる。足の骨を折ったようだ。

マリンは勢いのまま、前へと投げ出される。その先には、ベディヴィアが伸ばした槍先があった。

「終わりです」

「..................!!」

そこに1人、馬で割って入ってきた男がいた。

ジャンだ

すぐに細剣は抜刀済み、槍先に向けて突きを放つ。その突きは槍を抑えるには至らない。しかし、突きを遅くし、軌道を変えるには十分だった

マリンはジャンが作った隙に乗じて槍をかわす。そしてそのままジャンの馬に飛び乗った

「あぶねぇ~あんなのに突かれたら一貫の終わりだな、平気か?」
「..............................(コクコク)」
「よし、じゃあ頼む。あまり時間もないしな」

実際その通りであった。オワリノ国の武士団は以前押されたまま、ジュダル達冒険者も各々いい戦いをしているが、オワリノ国の武士団達が引き受けている分の天使達と戦えるほどの余力はない。

指導者を倒さなければ、時間がかかり不利になるのはこちらだった。

新たに、ジャンとベディヴィアは向かい合う

「......選手交代ですか?何度やっても結果は同じ、馬が疲弊して、私の勝ちです」
「どうかな?この馬はちょっと特別でな...?ってそんなことは関係ないんだ。こいよ、片をつけようぜ」
「......その自信が崩れる時が楽しみです、一瞬で決めるという意見も同意見です。様々な場所で一斉に人種を殲滅する、我が主、アイテールさまの御望みは正にそれなのですから」
「やっぱりアイツ絡みか!それならもう遠慮もいらんな、レディとはいえぶっ飛ばしてやる」

馬がかける、ベディヴィアは翼を大きく広げ、低空飛行でこちらに近づいてくる。

そこにジャンの肩を踏み越え大きく跳躍、ベディヴィアの首を刈り取ろうとするマリンが突っ込んできた。

「予想通りっ、どきなさい。貴方の主人を目の前で殺してあげます!」

マリンの刀をいとも容易くベディヴィアは受け止める

「貴方と互角だったのは、貴方の馬との技術が合わさってようやく互角だったまでのこと!そうでなければ貴方が私に勝てる可能性など無いのです!」

そう言い放ち、マリンを槍で思い切り横殴りにした。

槍先が当たっていようがいまいが関係ない、ベディヴィアの剛力はこの世界でもトップクラスに位置する。それを直撃することになったマリンは槍をもろにくらい、吹き飛ばされた。

恐らく骨が何本か折れているだろう、しかし彼女の口は...笑っていた。

そこには確かに、ベディヴィアが、目の前で殺すと宣言した男がそこにいた。

ジャンは馬の上に立っていた、馬から落ちないジャンも相当だが、トップスピードで駆けながらもほとんど揺れない馬も相当である。

ジャンは細剣を肩より後ろに構えた。左手をまるで盾のように構える。

『付与魔法』

ジャンの待つ魔法である、その魔法は使用者の意思により様々な物質に影響を与えたり、強化したりする。物質ごとの変化はそのものやジャンの命じたものによって様々。

発動範囲はジャンが触れているもののみ

ジャンの持つレイピアは鞘のみはそのままで、刀身はどんどんと大きくなってゆく。

その刀身は、人1人をすっぽりと覆えるほどに大きくなっていた。

勿論、付与魔法でそのものの形質や影響を与えても、重さは変わらない。

馬はスピードを緩めない、加速に加速を重ねた突進力と、巨大なる刀身。

そして、彼が師より教わった技

『ア・トラベア(ただ貫く)』

この技が、ベディヴィアに迫る

彼女が見たものは...巨大な鉄の刃だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふ~~~~~あ魔力尽きた.....もう一歩も動けねぇ、てか、もう無理じゃ、助けて~マリ~ン、と思ったら、アレか、マリンも骨折れてんのか、助けにゃな」

体を引きずらせるようにしてマリンの元へ向かおうと、そうしようとしたジャンを、1つの声が呼び止めた

それは、ベディヴィアだった

万物を貫く

アルフィィオスの翼を貫いた彼の刺突を、なんと彼女は右腕で受け止めていた。しかし全身は崩れるようにボロボロ。意識があるのが奇跡なほどだ。

ベディヴィアは泣いていた、彼女の心は、悲しい後悔に満ちている。それはブルーノ、ブレオベリスも同じことである。伝記で書かれている3人の華々しい姿からは想像もできないほど、3人の姿は醜い。

ブレオベリスの性格の歪み
ブルーノは元々ハーフだったが、姿は当時よりもはるかに酷い
ベディヴィアは...自分の半身が存在しなかった

「どうすれば...一体どうすれば良かったの?」

伝記によれば、3人の死因は病死と発表されている。偉大なる3人の英雄の死に、国民は悲しんだ

しかしそれは...病死ではなかった。

賢王は、自分より力のあるブルーノを恐れ、毒殺した、法の番人は、その計画を知り、法によってではなく、独断で王を断罪した。戦士は、自らの快楽のままに人を殺し、それを諌めた法の番人を殺し、そして王の仕掛けた毒が周り死んだ。

3人は死に、そして蘇り、そして新しい王に仕えた。だが、あの時と気持ちは変わらない。悪政を強いる領主に支配されていたあの頃と、何も変わらなかった。

「...あんた達のことはよく知ってる。うちにどうでもいいことでもすぐ調べちまう学者がいるからな。けどよ、自分のなりたいことをやって、人がついてきて、やっと自分たちのやりたいようにできる、民のための政治だ。何が不満なんだ?一体。人のためになんて言っておいて、結局自分達のエゴじゃねえか、お陰でお前達が下らない争いで死んだ後、ノワール王国の周辺にあった土地は、魔物によって全滅、人は全員移民した、お前達が滅ぼしたんだ、自分たちの故郷を」

そう言うと、ジャンはふぅと息を吸った

「自分勝手なんだよ、王様なんて、権力者なんて、だからキレーなんだ、下らない。これが英雄か、ガキが目をキラキラさせて読んでる絵本の正体かよ。夢の国を作ろうとした3人の革命者なんて嘘っぱちか。」

そう言うと、ジャンは立ち上がりちらりとベディヴィアの方を見る

するとベディヴィアは笑っていた

「ええ...そうね、下らなかった。そう、英雄の夢物語なんて、本当ね、全部嘘」
「......あぁ、伝説なんて所詮こんなもんだったってこった。見てろ!俺が今度は英雄になってやる!」

そう言うと、ジャンは座りながら腕をパンっと叩く。






夢は尽きない、後悔も残っている。

私がずっと探し求めていた疑問もついぞ答えられなかった。

だけど、最後に救いはあった。

最後に彼女は、英雄になると豪語した海賊姿の青年の姿を見ながら、瞳を閉じた。





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