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10章 多重人格者の未来は
神話〜新たなる1ページ
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神話となる物語がある
その物語は、実話を元にして作られるおとぎ話の類と似たものであるにも関わらず、それとは全く違うものとして扱われる。
神話は、神の技の如き所業を、崇拝する者たちのために作られるものである。それは政治的な理由か、それとも人々の思いによって産み出されたものなのか。
今回は、後者であった。
最初にアイテールの変化に気づいたのは、兵士達だった。触手が端から、急速に朽ちていく様を目撃したのだ。それはまるで、最初から触手は灰でできていたものかと錯覚してしまうほどの朽ちっぷりだった。アイテールの端から、アイテールのみ何百年も、何千年も経ったかのように朽ちていった。
しかしそれは外的要因によるものではない。アイテールは数千年如きでは朽ちるものではない。
「お...おい大丈夫なのかよ...」
「お、俺に聞くなよ...た、隊長、どうしますか?」
「王からの指示があるまで待機、様子を見るぞ」
兵士達の不安がる声が聞こえる、ガウェイン王は動かない、それがどのような合図かは知らないためだ。様子見を決め込むしかない。
既に絶え間なく聞こえていた弓の音や兵士の叫び声は失われている。その場に残るのは、兵士達の囁き声と、風の音だけだった。
兵士達の不安がる声が歓声に変わるのは、それからほんの僅か後のことであった。
触手の全てが灰となり宙に消えた後、アイテールの体が突如膨らみ始めた。
その膨らみは、アイテールの体の全体に比べればほくろ程度の大きさだった。それが段々と巨大化し、やがてアイテールの体の直径と同じ大きさ程度のものとなった。
この直後、戦場に轟音が響いた。
それはアイテールが体の上に膨らませていた何かが破裂した音だった、そこから漏れ出たものは血だったのか、それとも他の何かだったのか。しかしそこから出た白い光は噴水のように上に打ち上がり、あたりを眩く照らした。
その光は、戦場にいるもの達だけでなく、世界中にいた王都を救援するべく向かっていたウォルテシア国、オワリの国の面々や、近隣の国や、異種族にまで目撃されることになる。
誰もがその音と、光に目を奪われた。
家に閉じこもっていた子供はその光景から目を離せなかった。
王都から逃げていた民衆は、それを見て絶句した。それが世界の終わりなのか、それとも始まりなのか。
それはその場にいた面々にしかわからなかった。
噴水のような光は、雲を突き抜ける勢いで空へ上がり、その霧は世界中へと拡散を始める。
その光の奔流は数刻ほど続いて、消えた。
だがその光景は、その後数名の著名な画家により絵にされることになる。著名な詩人により詩にされることになる。
人と神の戦いは、公式な戦いにおいてはここで終わることになった。しかし、非公式に真の神がこの世界に慧眼し、2人の男と対峙してるのを知っていた人間は僅かしかいなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
............
荒野に一欠片の肉片が落ちている。あの破裂の時、吹き飛ばされてしまったものである。
既に大元の体全体は完全に萎びた木のように朽ち切ってしまった。そして、残された小さな肉片である彼も、そのうち生命を終えるだろう。
今彼が残っているのは、奇跡か、悪戯によって残っている一片だった。
そんな彼の後ろにある岩に腰掛けて、1人書物を読む人間がいた。
その姿は、オリジナルのアイテールに類似しているものの、その体は液晶画面に映し出されている映像のように儚げで、ノイズがかかっているかのように今にも消え入りそうになっていた。
彼は仰向けに寝ながら本を読んでいたが、やがてそれをもつまらないと言うかのように本を投げ捨てた。
つまらん、最後に読んで見たいと思ったが、何千回と読み直したのだ、内容は一字一句覚えている。
てか、これは今思えばこれ、ただの日記じゃないか、馬鹿馬鹿しい。
ふと、そんな私に影を指す人間がいた。
その人間は、40代くらいの壮年な立ち振る舞いから、それなりに高貴な人物とわかるが、その立ち振る舞いとは別に実に間の抜けた顔をしていたので、見ているこっちも気が引けそうだった。
「君...何をしている?ここは危険だ、いつ化け物が動き出すかも知らん、私は王国軍後方支援を任されていたパン将軍というものだ。君の身の安全は私の部隊が保障しよう、すぐに避難するように」
「私か?必要ない、もうすぐ消える身であるからな。」
そう、彼はもう数刻も待たずに消える。
絶対に迎えなければならない死という感情にじたばたしないのも、創り物とはいえアイテールである特徴だと言えよう。こんなものは、私自身が他の生命に散々与えたものにすぎない。
「なぁ、そこな男よ。この戦いで、人は神を超えたと言えるのだろうかな?所詮人間とは脆弱な存在だ。共通の敵がいなければ無益な争いまでする。そのような存在が、神を超えたのだと本当に言えるのだろうか?」
無意味な質問だ、これに答えはない。私は神でもなんでもないのだ。
しかしこれで人間は成長することが証明された、人は争い、負の感情を横に抱えながらも成長していくだろう。
パン将軍は、そんな危篤な質問を投げかけた少年に怪訝な顔をしつつも、こう答えた。
「神を超えた...か。私はな、神と人は、師匠と弟子のような関係だと思っている。神は人を成長させるために試練を与え、心を鬼にして来ることだってある。そんな時に、我々は「こんなにできるようになりました」と神に報告しなければならない。我々の強さを証明しなくてはならない。」
パン将軍が息を整えて言い直す
「試練は人を強くする、古の英雄も、試練を乗り越えて強くなった。助けてくれる神もあれば、襲って来る神もいる。神を超えるなど...我々はただ神の下で育つのみなんじゃあないかな。まぁこんな天災、数千年に一度で十分だな!我が身の不幸を呪おう。わっぷぷ!なんだ、風が強いな、あの光の柱のあと、もしかしたら異常気象が発生してるかもしれんな、早く部隊に戻ろう。おい、少年!............」
少年?
将軍の声が夕焼けの空に響く。
遠くより、「将軍~」と部下が走って来る声が聞こえる。
側に落ちていたのはあの化け物の肉片と、まるで新書のような、自分の知らない文字で書かれた本だった。
パンはそれを拾い、土埃を手で払う。
その本の表紙には、「英雄記」とそうだけ綴られていた。
作者の名前は書いておらず、作者の名前があるべき場所には、あまりに難解な文字と文字が繋ぎ合わさったかのような文字が綴られている。
昔の文字で綴られたその不思議な本は、夕焼けに反射するように
紅く光った。
その物語は、実話を元にして作られるおとぎ話の類と似たものであるにも関わらず、それとは全く違うものとして扱われる。
神話は、神の技の如き所業を、崇拝する者たちのために作られるものである。それは政治的な理由か、それとも人々の思いによって産み出されたものなのか。
今回は、後者であった。
最初にアイテールの変化に気づいたのは、兵士達だった。触手が端から、急速に朽ちていく様を目撃したのだ。それはまるで、最初から触手は灰でできていたものかと錯覚してしまうほどの朽ちっぷりだった。アイテールの端から、アイテールのみ何百年も、何千年も経ったかのように朽ちていった。
しかしそれは外的要因によるものではない。アイテールは数千年如きでは朽ちるものではない。
「お...おい大丈夫なのかよ...」
「お、俺に聞くなよ...た、隊長、どうしますか?」
「王からの指示があるまで待機、様子を見るぞ」
兵士達の不安がる声が聞こえる、ガウェイン王は動かない、それがどのような合図かは知らないためだ。様子見を決め込むしかない。
既に絶え間なく聞こえていた弓の音や兵士の叫び声は失われている。その場に残るのは、兵士達の囁き声と、風の音だけだった。
兵士達の不安がる声が歓声に変わるのは、それからほんの僅か後のことであった。
触手の全てが灰となり宙に消えた後、アイテールの体が突如膨らみ始めた。
その膨らみは、アイテールの体の全体に比べればほくろ程度の大きさだった。それが段々と巨大化し、やがてアイテールの体の直径と同じ大きさ程度のものとなった。
この直後、戦場に轟音が響いた。
それはアイテールが体の上に膨らませていた何かが破裂した音だった、そこから漏れ出たものは血だったのか、それとも他の何かだったのか。しかしそこから出た白い光は噴水のように上に打ち上がり、あたりを眩く照らした。
その光は、戦場にいるもの達だけでなく、世界中にいた王都を救援するべく向かっていたウォルテシア国、オワリの国の面々や、近隣の国や、異種族にまで目撃されることになる。
誰もがその音と、光に目を奪われた。
家に閉じこもっていた子供はその光景から目を離せなかった。
王都から逃げていた民衆は、それを見て絶句した。それが世界の終わりなのか、それとも始まりなのか。
それはその場にいた面々にしかわからなかった。
噴水のような光は、雲を突き抜ける勢いで空へ上がり、その霧は世界中へと拡散を始める。
その光の奔流は数刻ほど続いて、消えた。
だがその光景は、その後数名の著名な画家により絵にされることになる。著名な詩人により詩にされることになる。
人と神の戦いは、公式な戦いにおいてはここで終わることになった。しかし、非公式に真の神がこの世界に慧眼し、2人の男と対峙してるのを知っていた人間は僅かしかいなかった。
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荒野に一欠片の肉片が落ちている。あの破裂の時、吹き飛ばされてしまったものである。
既に大元の体全体は完全に萎びた木のように朽ち切ってしまった。そして、残された小さな肉片である彼も、そのうち生命を終えるだろう。
今彼が残っているのは、奇跡か、悪戯によって残っている一片だった。
そんな彼の後ろにある岩に腰掛けて、1人書物を読む人間がいた。
その姿は、オリジナルのアイテールに類似しているものの、その体は液晶画面に映し出されている映像のように儚げで、ノイズがかかっているかのように今にも消え入りそうになっていた。
彼は仰向けに寝ながら本を読んでいたが、やがてそれをもつまらないと言うかのように本を投げ捨てた。
つまらん、最後に読んで見たいと思ったが、何千回と読み直したのだ、内容は一字一句覚えている。
てか、これは今思えばこれ、ただの日記じゃないか、馬鹿馬鹿しい。
ふと、そんな私に影を指す人間がいた。
その人間は、40代くらいの壮年な立ち振る舞いから、それなりに高貴な人物とわかるが、その立ち振る舞いとは別に実に間の抜けた顔をしていたので、見ているこっちも気が引けそうだった。
「君...何をしている?ここは危険だ、いつ化け物が動き出すかも知らん、私は王国軍後方支援を任されていたパン将軍というものだ。君の身の安全は私の部隊が保障しよう、すぐに避難するように」
「私か?必要ない、もうすぐ消える身であるからな。」
そう、彼はもう数刻も待たずに消える。
絶対に迎えなければならない死という感情にじたばたしないのも、創り物とはいえアイテールである特徴だと言えよう。こんなものは、私自身が他の生命に散々与えたものにすぎない。
「なぁ、そこな男よ。この戦いで、人は神を超えたと言えるのだろうかな?所詮人間とは脆弱な存在だ。共通の敵がいなければ無益な争いまでする。そのような存在が、神を超えたのだと本当に言えるのだろうか?」
無意味な質問だ、これに答えはない。私は神でもなんでもないのだ。
しかしこれで人間は成長することが証明された、人は争い、負の感情を横に抱えながらも成長していくだろう。
パン将軍は、そんな危篤な質問を投げかけた少年に怪訝な顔をしつつも、こう答えた。
「神を超えた...か。私はな、神と人は、師匠と弟子のような関係だと思っている。神は人を成長させるために試練を与え、心を鬼にして来ることだってある。そんな時に、我々は「こんなにできるようになりました」と神に報告しなければならない。我々の強さを証明しなくてはならない。」
パン将軍が息を整えて言い直す
「試練は人を強くする、古の英雄も、試練を乗り越えて強くなった。助けてくれる神もあれば、襲って来る神もいる。神を超えるなど...我々はただ神の下で育つのみなんじゃあないかな。まぁこんな天災、数千年に一度で十分だな!我が身の不幸を呪おう。わっぷぷ!なんだ、風が強いな、あの光の柱のあと、もしかしたら異常気象が発生してるかもしれんな、早く部隊に戻ろう。おい、少年!............」
少年?
将軍の声が夕焼けの空に響く。
遠くより、「将軍~」と部下が走って来る声が聞こえる。
側に落ちていたのはあの化け物の肉片と、まるで新書のような、自分の知らない文字で書かれた本だった。
パンはそれを拾い、土埃を手で払う。
その本の表紙には、「英雄記」とそうだけ綴られていた。
作者の名前は書いておらず、作者の名前があるべき場所には、あまりに難解な文字と文字が繋ぎ合わさったかのような文字が綴られている。
昔の文字で綴られたその不思議な本は、夕焼けに反射するように
紅く光った。
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